子宮内膜症

(A) 子宮内膜症とはどんな病気ですか?

子宮は(1)子宮筋という筋肉から出来ている袋状の臓器ですが、その袋の内側は(2)子宮内膜という薄い膜で裏うちされています。

子宮内膜は本来、子宮の内側だけに存在し、妊娠する場所になります。しかし妊娠しない場合はこの内膜は剥がれて出血し、月経となります。しかし時にこの子宮内膜が子宮の内側だけではなく、他の臓器、例えば卵巣や卵管、あるいは腹腔内、直腸の表面などの異所に芽ばえその場所で増えてしまうのが子宮内膜症という病気です。

 
(1)卵巣の内側、表面

(2)子宮と直腸の間のダグラス窩と呼ばれる部分

(3)子宮の筋肉の間(これは特に腺筋症とよばれます)

(4)その他、子宮や直腸表面の腹膜など。


(B) 子宮内膜症はどうして発生するのですか?



はっきりした発生の原因はまだわかっていません。月経の時、内膜が剥がれて子宮から膣へ出ていきます。これが月経ですが、その時子宮内膜の一部が子宮から逆流して卵管を通り腹腔内にばらまかれ、内膜の一部がそこで発育する説が有力な説(子宮内膜逆流脱)の一つです。


(C) 子宮内膜症にはどのような症状がありますか?



1.月経痛(月経困難症)
子宮内膜症による月経痛(生理痛)の特徴は

・ 強い生理痛
・ 痛みが強いので鎮痛剤が必要である。
・ 市販の鎮痛剤を服用しても充分痛みがとれない。
・ 年々痛みが増強する(5年前よりも3年前、3年前よりも今年というように年々月経痛が増強する)。
・ 腹痛だけでなく、肛門や膣の奥の方も痛い。
・ 腹痛だけでなく、悪心や嘔吐を伴うこともあります。


2.生理痛以外にも時々腹痛がある。
特に排卵期(生理と生理の中間の頃)や生理前にも腹痛がある。


3.性交痛
子宮内膜症がダクラス窩にあるとしばしばセックスの時、膣の奥が痛むこと(性交痛)があります。

4.月経時に下痢をしやすい。
 
5.月経の血液量が多い(過多月経)
月経の血液にレバーのような凝血がまじるようだと過多月経と考えられますが、子宮内膜症にはしばしば過多月経を伴います。

6.不妊症
子宮内膜症があると全ての人が不妊症になるわけではありませんが、逆に不妊症の20%位が子宮内膜症が原因といわれています。



以上のように子宮内膜症にはいろいろな症状を伴います。しかし、症状の全てがでるわけではなく、そのいくつかが組み合わさっていることが多いのです。特にその中で症状項目1.2.3.5は重要な症状です。ですから、御自身にあてはまる症状がいくつか自覚できるようであれば子宮内膜症が疑われますので一度受診されることをおすすめします。

(D) 内膜症にはどのような治療方法がありますか?



1.内膜症の治療法

1)鎮痛剤
生理痛(月経痛)が強く日常生活に支障をきたす場合に用いられます。この場合、痛みが強くなる前に早めに服用することがコツです。通常、ボルタレン(内服,坐薬)ロキソニンなどが使われます。これら鎮痛剤は単に痛みを一時的に和らげるだけの効果しかありません。内膜症そのものを治療したり、内膜症の進行をくい止める効果はありません。


2)ホルモン療法
(1)ピル(Pill)
ピルとは何?:きちんと生理がくる女性は毎月きちんと排卵があると考ええてさしつかえありません。このような人では卵胞ホルモン(エストロゲン(E))と黄体ホルモン(プロゲステロン(P))という2種類の女性ホルモンが卵巣から分泌されます。このEとPのうち、特にP(黄体ホルモン)は生理痛の原因になります。ですから、生理痛を軽くする、あるいはなくすにはPが分泌されるのをおさえてしまう方法が有効です。つまり、排卵を一時的にストップする(排卵抑制)方法が効果的です。これにはピルを服用するのが最も簡単な方法です。ピルにはその内にEとPを含んでいるため、それを服用すると、服用している間は排卵がストップします。しかし、月経様の出血(生理)は定期的にあります。子宮内膜症の生理痛はこのピルで痛みを軽くすることが可能です。あるいは全く月経痛がなくなってしまう人も多いのです。ですからピルがきく場合はピルを毎月繰り返し服用できます。もしピルだけで生理痛が完全になくならなければ鎮痛剤を併用することももちろん可能です。
もう一つピルでの利点があります。内膜症をそのまま放置しておくと毎月卵巣から分泌されるEとPにより年々に進行していく可能性のある病気です。逆にピルにより内膜症の進行をくい止めたり、進行する速度を遅らせたりすることが可能です。


ピルのメリット
・副作用が少ない~ない
・長期間服用が可能
・内膜症による生理痛のかなりの部分が軽減できる
・内膜症の進行にブレーキをかけられる可能性がある
・月経の前のいろいろな不快な症状(月経前症候群PMS)も軽減する
・月経の量を少なくできる
・避妊法として最も効果的な方法である


ピルのデメリット
・1ヶ月間のうち3あるいは4週間服用する必要がある
・避妊効果があり、妊娠を希望している人では使えない
・スモーカーなどは不向き

(2)ホルモン療法 Gn-RHアナログ剤
GnRHアナログ製剤(Gn-RHaと略)とは、排卵をおこすよう指令を出す脳の中のホルモン中枢に一時的にブレーキをかけ、排卵をストップさせます。その結果、卵巣からのEやPの分泌がかなり低下し、内膜症を一時的に萎縮させることも可能です。通常このGn-RHa剤を6ヶ月間投与すると内膜症が小さくなる効果が期待できます。また治療の間は月経がありません。


Gn-RHaのメリット
・月経そのものをストップするため月経痛を止める効果が速やかである
・内膜症を一時的ではあるが縮小できる


Gn-RHaのデメリット
・副作用が多少ある(のぼせや発汗などの更年期に似た症状)
・長期的に使用できない(最長6ヶ月間)


3)手術療法
薬では治療困難な内膜症の場合(かなり進行した内膜症やピルやGn-RHaでは改善しない内膜症、あるいは妊娠を希望する内膜症の方)は、手術療法が効果的ですし、最も根本的な治療法ではあります。最近ではお腹を切開しなくても腹腔鏡といって内視鏡をみながら処置する方法が可能になってきました。この方法でお腹の中の内膜症を取り除き、あるいは癒着をはがしたり、小さな内膜症ならレーザーで焼きとばす(蒸散)などの処置が可能です。しかし、内視鏡といえども3~4日の入院が必要ですし、手術の時と同様、全身麻酔のもとで行ないます。また医療者(医師)もある程度の技術の習熟が必要ですから、内膜症がある人の全ての人に腹腔鏡を行なうわけではありません。


腹腔鏡治療が必要な内膜
・内膜症がかなり進行していて薬物療法(鎮痛剤、ホルモン療法)では充分治療できない人
・内膜症が不妊症の原因となっている人
・チョコレートのう腫(卵巣にできた内膜症が腫れて大きくなっている状態)が破裂する可能性がある人