『非情城市』をはじめ世界的に知られた台湾の侯孝賢(ホウシャウシェン)監督が小津安二郎生誕百年を記念した
映画『珈琲時光』の脚本・監督をつとめました。
ヒロイン役は、「もらい泣き」や「ハナミズキ」で人気の
一青窈(ひととよう)さん。
お相手に浅野忠信さんが神田の古本屋の二代目として登場します。
舞台は神田神保町。その古本屋として誠心堂書店が選ばれたのです。監督自身がひそかにいらして決めたそうです。
近所の喫茶店エリカ、てんぷら屋「いもや」も舞台になります。萩原聖人さんがここで天ぷらを揚げる職人役です。
監督には、なにか神田らしい独特の雰囲気を感じていただけたようです。
侯監督の手法は、わざとらしいセットを好まないそうで、店内もそのまま
の状態でカメラが回りました。
浅野忠信さんは、ちょうどその最中に2003年ベネチア国際映画祭の
コントロコレンテ部門で主演男優賞を受賞しましたが、
いつも息子がいる帳場に座り、そこへフリーライター役の一青さんが訪ねてくるシーンでした。
蓮實重彦先生がエキストラで本を買いにみえられたところも撮影しましたが、試写でみるかぎりそれはカットされてしまったようです。
かわりに、わがやの柴犬「ムートン」が、一青さんと浅野さんが話しているあいだ後ろをウロウロ。
ついに一青さんにチュッとされて幸運な役を「演じ」ました。
ちなみに雑誌「東京人」の2004年9月号に特集記事が出ますが、その撮影に一青さんがお見えになりました。
そのときにムートン君とも一年ぶりに対面。尻尾を振って大歓迎したのはいうまでもありません。
この映画の主題曲「一思案」(『一青想』(ひとおもい)所收、
コロンビアミュージックエンタテインメント発売)
もぜひ聞いてください。その歌詞(一青窈作詞・井上陽水作曲)に「柴犬を飼ったのは、生まれ変わりだと思い込みたい少女……」と
あるのは、ちょっと運命的です。
(2005年4月改訂)
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