RWカラーシステム―YMC法による

色のつくり方と色のはかり方


■色のつくり方(混色法)

(1)透過色〔T〕のつくり方

純正な色質をもつ、たとえばカラー写真用等の透過光観賞用のイルミネーター(ライトボックス)を使用し、グレイスケール板を抜き去って比色窓を素透しにしてリングフィルター及び補助フィルタ一を比色窓に挿入する。高濃度の透過色をつくるにはスケール以外に高濃度のCCフィルター、LBフィルター等、その他の任意の透過色を併用する。

(2)反射色〔R〕のつくり方

演色性のよい照明光源を使用し、@:混色円盤上においてリングフィルターの組合せにより円盤上に混色をみる。A:比色窓中に白色面ベース〔WHITE〕を用いて混色する。B:グレイスケール板の無彩色を比色窓右側に移して無彩色上の色をつくる。その他、標準色票、標準色紙、任意の印刷物等の上にフィルターが重合するようにして混色すれば無数の反射色をつくることができる。

(3)原色の数

原色はイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)三種であり、各原色は光の三原色の、青紫(B)、緑(G)、赤(R)各光それぞれの吸収体であり、YはB光の、MはG光の、CはR光の吸収体である。
各原色はもっとも吸収量の小さい025からもっとも吸収量の大きい100までを、025単位で変化させることができる。リングフィルターは025、05、10、20、30と、10以降は10単位なので、補助フィルターを追加して中間値を得るようにすれば比色窓内において、各原色は025単位で100までに約40段階に変化させることができる。つまり各原色はそれぞれが40段階の目盛をもっているということである。

(4)純色をつくる〔原色二つの粗合せ〕

等しい数値の二原色の組合せにより、Y+M=R、Y+C=G、M+C=Bという光の三原色に相当する純色をつくることができる。(例:10Y+10M=10R、20Y+20C=20G、30M+30C=30B)そして、Y〜G、G〜C、C〜B、B〜M、M〜R、R〜Yの中問値を混色比2:1として組合せれば、YG、CG、CB、MB、MR、YRを得て12の主要色相をつくることができる。(例:YR=80Y+40M、60Y+30M、40Y+20M。CB=80C+40M、60C+30M、40C+20M等)(図2参照)いずれの場合も数値が大きくなるほど純色量は大きくなり、いわゆる色の彩度(飽和度、純度)が高くなる。図2の色環で中心部(0点)から離れるほど原色量も純色量も大きくなる。更に12色相の各中間の微妙な色相が得られることになり、つくれる色は各色の組合せで、40×40=1600色×3=4800色の純色が得られる。つくった色については混色比と原色量により、色環上のどのあたりの色であるかの大体の見当をつけることができよう。

(5)純色プラス無彩色の組合せ

〔三原色三つの組合せ〕

YMC三原色の二つの組合せをおこなうと、比色窓内においては10万色以上のぼう大な色をつくることができることになる。つまり、純色4800色に対して等しい数値のYMC(等YMC)量の変化が40段階に変化できるからである。等YMCは視覚的無彩色を示さないが、これを数値的無彩色として取扱うと、三色の組含せでは純色に対して何らかの等しい割合の無彩色が含まれていることになる。(例:60Y+40M+20Cの場合、無彩色量は20YMCであり、純色量はこれを差引いた残り、つまり40Y+20M(色相YR)である)。したがって、ある二色の組み合せになる純色に対して他の一つの原色を加えた場合は、加えた数値と等しいYMC量がその色の等YMC量となる。いうまでもなく、含まれる等YMC量が大きくなるほど明度は低くなる。厳密には(14)〜(19)を参照されたい。

(6)正確なフィルター色

透過色〔T〕----純正なイルミネーター上におき、比色窓の表面を覆う透明フィルムのつまみを持上げて除去する。フィルターに直接手をふれないように注意する。

反射色〔R〕----混色円盤上では三枚の透明フィルムが重合し明度と彩度が低下してみえる。そのため、白色面ペース片を比色窓に挿入して反射色とするとともに比色窓の透明フィルムを除去する。

(7)同一色相、同一彩度で明度だけを変える

色相はYMC三原色のなかの二色の組合せ方により変化するが、色相、彩度を変えないで明度だけを変えるには、無彩色量だけを変化させる。

透過色〔T〕反射色〔R〕
補助フィルターのなかの無彩色フィルターND10、20、40を単独もしくは組合せで用いる。組合せにより10、20、30、40、50、60、70の変化が可能。また等YMC量を加減する。ただ等YMCの場合は視覚的無彩色でないために、色相と彩度が若千変化する。
反射色の場合は、上記以外に、グレイスケール板を比色窓右側に位置させ、無彩色上でフィルターを重合させ、グレイスケール板を上下に移動させることにより多段階の明度変化が可能になる。

(8)同一色相、同一明度で彩度だけを変える

色相、明度を等しくして彩度だけを変える場合の考え方としては等原色量における変化をこころみる。この方法では原色の種類によって明度は異なるからいわゆるHV/C法と相違することになるが、色の大きさを変えないであざやかさだけを変えるという操作を数値的におこなうことができる。つまり、同じ原色量の範囲内で、純色量だけが大きくなる配分を考えればよい。例えば、60Yは純色であるが、パンフレット"原理と方法"8頁の表のように、この配分は、50Y+05M+05C、40Y+10M+10Cとなり、いずれも原色量が等しくなるような割合に操作してみることである。
HV/C法とは一致しないが、少くとも色の明るさとあざやかさの関係を数値的に把握することができよう。

(9)任意の物体色の減法混色

〔色のタシ算〕

ある色とある色を減法混色したときに、どのような混色結果が得られるかの予測を得るには、両者もしくは三者のYMC量を合計してみる。あるいはA色をはかったのちA色と等色したフィルターをB色の上に直接的に重ね合せることにより、視覚的にどのような混色結果が得られるかの近似的予測が可能になる。例えば、A色が20Y+10M、B色が20M+10Cの場合は、その合計値=20Y+30M+10Cがその近似値であることを示す。
そして、A色をはかったのち、A色の20Y+10MをB色に重ねてみれば、直接的にその予測を得ることができる。ただし使用フィルターの枚数の相違及ぴ、混色に使用する色材の種類と混色法によって相違が生じる。

■色のはかり方(測色法)


(注)反射色の計算法には表面反射光及び多重反射光等の計算が省略されていることをお断りする。(☆印)

(10)透過色(T)の場合

イルミネーター上に、はかろうとする透過色をスケールの比色窓下左側半分に位置するようにして、リングフィルター及び捕助フィルターを併用して比色窓において左側にある測定色と右側のフィルター色とが視覚的に等しい色になるように調節する。スケールのフィルター群では等色しないときは任意のフィルター、拡散板等をベースに用いる。

(11)反射色(R)の場合

比色窓下に測定色を位置させ、比色窓右側半分に白色面ベース片〔WHITE〕を挿入したあと左側の測定色と同色になるようにリングフィルター及び補助フィルターを操作する。測定色が無彩色量を多く含むような暗色の場合は、NDフィルターもしくはグレイスケール板を用いる。グレイスケール部分が比色窓内右側にくるように挿入して等色をおこなえば、無彩色面上のYMC量を見出すことができる。

(12)視覚的YMC量(三原色比)の判定

等色の方法として、はじめにリングフィルターのみで近似値を得る。測定色が青紫系統の場合はM+Cフィルターを、緑系統の場合はY+C、また赤系統の場合はY+Mの組合せのなかで多少大幅に色を動かし、リングフィルターでは等色しなくなったとき、つまり10単位以下の等色には次に補助フィルターの05と025を使用し、025以上の差が生じないように等色させる。等色したとき、白色面上に使用したフィルターが測定色の視覚的なYMC量をあらわす。フィルターを別々に分解してみることにより、その色を構成する滅法三原色の混合比をつかむことができ、その色をつくろうとするとき、如何なるYMCの組合せによれば得られるかを見出すことができる。

(13)数値的YMC量の判定

数値的にYMC量を見出すには、濃度的な取扱いをおこなう。CCフィルターの数値は濃度的な数値であるとはいえ、その数値は正確な濃度を示してはいない。しかし概略的なとらえ方のためには便利である。ここではCC数値で示されたものをCC濃度と呼ぶとして、たとえば、10YはCC濃度が0.1、20Yは0.2、30Yは0.3のように、CC数値の前に小数点を付せばそのまま濃度をあらわすものとする。
しかし、CC濃度の取扱いでは例えば10Yのフィルターは透過濃度0.1であるから表1よりB光透過率が約0.794、つまり約79%としてB光を約20%吸収することになる。また、20Mは約0.2として透過濃度をとると、G光透過率約63%、吸収は約37%となる。したがって、10Y+20Mのフィルターの透過率はB光約79%、G光約63%ということになる。☆
そして、フィルターを白色面上に位置させて反射色としたとき、光はいったんフィルターを透過し自色面で反射して再びフィルターを透過して限に入る。そのため、濃度は約2倍となるため、10Y=20Y、20M=40Mとなる。そのためCC濃度の取扱いでは10Y+20Mの反射色の白色面上の反射率は白色面の反射率を100%としたとき、Y≒0.2、M≒0.4よりB光反射≒63%、G光反射≒40%となる。以上の方法は、きわめて大まかなとらえ方として手取り早くわかりやすいが、いわゆるフィルターの有害分光吸収に対する考慮がまったくなされないために、そのデーターは現実とはかなりかけはなれたものになる。
というのは、表9の各フィルターの分光透過率及び表3の平均濃度をみれぱわかるように、YフィルターはB光のみならずG光とR光をも若千吸収し、MフィルターはG光のみならず、B光、R光をもかなり吸収する。CフィルターはR光以外にB光、G光を相当強く吸収する。つまり原理把握のための理論とはかなり異なっているわけである。そこで、正確には各波長光ごとの透過率から割り出した各波長光ごとの濃度(分光濃度)を見出す必要がある。〔(17)参照〕
しかし、分光濃度はたとえ正確であっても計算が面倒で取扱いが複雑である。そこで、次のブロック法による平均濃度の取扱いをおこなうのが実際的かつ現実的な方法であるといえよう。

(14)ブロック法によるYMC平均
透過率、平均反射率の概算

各フィルターは400nmから700nmにわたって、10nm間隔で各波長光ごとの透過率が表示されている。(表-9参照)これを400〜490、500〜590、600〜690nm三つのブロックに分割してその平均値を取扱う。これが、ここでいうブロック法であり、各フィルターについてその平均透過率を見出したのが表2である。その平均透過率から平均透過濃度に換算したのが、表3である。
先の10Y+20Mの平均透過率はこのブロック法では次のようになる。
         10Y 20M
B光透過率=74.9×83.3≒62.4%
G光透過率=89.7×63.2≒56.7%
R光透過率=91.0×87、9≒80.0%
また、10Yと20Mを白色面(反射率90%)上に密着したときの平均反射率は、
B光反射率=(0.624)^2×0.9≒35.0%
G光反射率=(0.567)^2×0.9≒28.9%
R光反射率=(0.800)^2×0.9≒57.6%
となる。☆
これを表3の平均透過濃度で計算すると、平均透過濃度は、
    B     G     R
10Y=0.126  0.047  0.041
20M=0.079  0.199  0.056
であるからその合計値は
    0.205  0.246  0.097
となり、これを表1から透過率に換算してみると、
B光(0.205)≒63%、G光(0.246)≒56%、R光(0.097)≒80%といったように前値の近似値を得ることができる。




(15)ブロック法による平均濃度の判定


〔平均透過濃度〕透過色の場合------カラースケールの比色窓でつくった色、もしくは測定色と等色したフィルター色の平均透過濃度を見出すには、平均透過率からその逆数の常用対数値を計算すればよいが、表3に各フィルターのブロック透過濃度を示してあるので表3から容易に見出すことができる。たとえぱ、20Y+30M+40Cの平均透過濃度は、
    20Y  30M  40C
B→0.213+0.095+0.070=0.378(Y)
G→0.052+0.278+0.125=0.455(M)
R→0.041+0.063+0.357=0.461(C)

〔平均反射獲濃度〕反射色の場合------白色面上にフィルターを密着したときの反射濃度は透過濃度の2倍をとる。たとえば上記20Y+30M+40Cを反射色としたときの反射濃度は、
B→0.756(Y濃度)、G→0.910(M濃度)、R→0.922(C濃度)
となる。しかしこれは白色面濃度を0としたときの数値である。白色面の反射率を90%として取扱う場合は、平均透過率の自乗に0.9を掛けた数値を濃度に変換することになるが、上記YMC濃度に白色面濃度として0.046を加算して近似値を得ることができよう。☆
表4は各YMCフィルターを9096の反射率をもつ白色面上に密着したときの平均反射濃度であり、表5はその場合の平均反射率の概算である。各表から各フィルターのブロック反射濃度、反射率を容易に見出すことができる。ただし、二色以上の紺合せになる場合は、ベース濃度を0としたときの反射濃度(表6)を使用して、各YMC濃度を加算したのち、ベース濃度を加える。約90%の反射率をもつ白色面の場合はベース濃度として0.046を加算すれぱ近似値が得られよう。☆


(16)合成されたフィルターの分光透過率、分光反射率の計算

つくった色、またはかった色のI、替された分光分布を得るには表9のYMCフィルターの分光透遇率をもとに計算をおこなう。
〔分光透過率〕透迫色(I)の場合------用いたフィルターの各渡長光ごとの透過率を互いに掛け合せれぱよい。これをグラフにプロットすれば合成色の分光比透過率曲線を得ることができる。20Y+20Cの二枚重ねによる合成色の分光達遇率は次のような計算を400〜700m戸にわたって計算すればよい。
波長  20Y+20C
400nm  0.582×0.839=0.4883≒48.8%
410    0.568×0.852=0.4839≒48.4%
420    0.559×0.865=0.4835≒48.4%
430    0.557×0.875=0.4873≒48.7%
440    0.563×0.877=0.4938≒49.4%
450    0.574×0.878=0.5040≒50.4%
〔分光反射宰〕反射色(R)の場合------白色面(90%)上にフィルターを密着して反射色としたときは、表面反射、内面乱反射等により透過率の場合ほど正確ではないとみなければならないが、90%の反射率をもつ白色面をベースとしたときの計算は、合成された(分光透過率)2×0.9により概算できる。☆
たとえば、この20Y+20Cの場合は、
波長
400nm----(0.4883)^2×0.9=0.2146≒21.5%
410  ----(0.4839)^2×0.9=0.2107≒21.1%
420  ----(0.4835)^2×0.9=0.2104≒21.0%
430  ----(0.4873)^2×0.9=0.2137≒21.4%
440  ----(0.4938)^2×0.9=0.2195≒22.0%
450  ----(0.5040)^2×0.9=0.2286≒22.9%
の計算を700nmにわたって計算すれぱよい。☆


(17)合成されたフィルターの分光
透過通度、分光反射渡度の計算

〔分光透過濃度〕透過色(T)の場合----

上記計算で得た各分光透過率の逆数の常用対数値を見出す。近似値は表1により見出すことができる。
ささの20Y+20Cの場合は、
      透過率 → 透過濃度
400mμ  0.4883 ≒ 0.311
410    0.4839 ≒ 0.315
420    0.4835 ≒ 0.315
430    0.4873 ≒ 0.312
440    0.4938 ≒ 0.306
450    0.5040 ≒ 0.297
以上の計算を700mμにわたっておこない、これをグラフにブロットすれば分光透過濃度曲線を得ることができる。

〔分光反射濃度〕反射色(R)の場合----白色面のベース濃度を0とした分光反射濃度は、分光透過濃度の2倍の数値をとればよい。さきの20Y+20Cの場合は、
   透過濃度x 2=反射濃度
400mμ  0.311x 2 = 0.622
410    0.315x 2 = 0.630
420    0.315x 2 = 0.630
430    0.312x 2 = 0.624
440    0.306x 2 = 0.612
450    0.297x 2 = 0.594  となる。
白色面の反射率を90%としてこれを加味するとすれぱ、白色面濃度を約0.046を与えれぱよい。☆
400mμ  0.622+0.046 = 0.668
410    0.630+0.046 = 0.676
420    0.630+0.046 = 0.676
430    0.624+0.046 = 0.670
440    0.612+0.046 = 0.658
450    0.594+0.046 = 0.640

(18)YMC量とRGB量の計算

CCフィルター数値をCC濃度として取扱う方法によっても、YMC量及びBGR量の見当ができるとはいえ、正確な数値を得るには先にのべたブロック法が望まれる。たとえば20Y+20Cの組合せフィルタ一による透過色のYMC量は各フィルタ一の平均透過濃度を加算した値がその透過色のYMC量となる。
    20Y   20C (平均透過濃度)
Y = 0.213+0.062 = 0.275
M = 0.052+0.088 = 0.140
C = 0.041+0.208 = 0.249

またBGR量は20Y+20Cの平均透過率であり、上記YMC量を透過率に換算してもよい。
        平均透過率
B=0.275→約53%
G=0.140→約72%
R=0.249→約56% となる。

または、表2から20Y、20Cの平均透過率を見出して両者をBGRごとにかけ合せる。
   20Yの平均透過率  20Cの平均透過率
B = 0.612    ×    0.868   =   0.531
G = 0.887    ×    0.817   =   0.725
R = 0.909    ×    0.620   =   0.563

〔反射色の場合〕----反射色の場合は同様に平均反射濃度が反射色のYMC量となるが、白色面のベース濃度を0としたときのYMCを反射濃度として取扱うべき場合と、ベース濃度を合めて取扱うべき場合が生じよう。
(a)ベース濃度を0とした場合は、使用フィルターの平均透過濃度の2倍の値をとる。20Y+20Cの場合は、
Y=0.275×2=0.550
M=0.140×2=0.280
C=0.249×2=0.498となる。☆
(b)ベース濃度を合めた場合のYMC量は90%の反射率をもつ白色面をベースとしたときは、上記YMC数値のそれぞれに0.046を加算する。
(c)白色面以外の無彩色ベースを用いたときは、そのペースとなる無彩色、有彩色ベースの平均反射濃度を加算する。

(19)純色量と無彩色の分析と計算

CC数値の取扱いでは、たとえば10Y+20M+40Cの純色量は、等しい数値になるYMC量(等YMC量)が10YMCであるからこの10YMCを差引いた残りが純色量である。つまり10M+30Cである。概略的な取扱いではこのようなCC数値の取扱い方でよいと考えられる。また実際的な色の販扱いでも同様にCC数値で扱う方が現実に即している場合も多いと考えられる。というのは現実に用いられる色材はフィルターと同様な有害分光吸収を有するからであるが、厳密な色彩学的な取扱いではやはりブロック法によって分析すべきであろう。
ブロック法では10Y+20M+40Cの平均透過濃度は、
     10Y  20M  40C
Y = 0.126+0.079+0.070 ≒ 0.275
M = 0.047+0.199+0.125 ≒ 0.371
C = 0.041+0.056+0.357 ≒ 0.454
となり、この場合の等YMC量は0.275YMCとなる。これがその透過色に含まれる無彩色量であり、残りの、0.096M、0.179Cが純色量ということになる。
また、他の例として、二色系の組み合わせ、たとえぱ10Y+20Cの場合はCC数値では等YMC量のない純色ということになるが、ブロック法で分析し計算してみると、
   10Y  20C
Y=0.126+0.062=0.188
M=0.047+0.088=0.135
C=0.041+0.208=0.249  となり
かなりの等YMC(0.135)の無彩色が含まれていることがわかる。というよりも、もともとフィルター自体、すべてのフィルターが等YMC量を合んでいるということである。(表3参照)

(20)任意の二色の混色結果の予測

(a)等色により得たフィルターを比色窓にセットした状態で、加え合せる(混色すべき)他色の上に直接これを重ね合せてみる。つまり、A色のYMC量がたとえばCC数値で10Y+10Mであれば、この10Y+10MをB色の上に重ねてみれば、A色とB色を減法混色したときに大体何色になるかの予測がつくので、(b)よりもより実際的である。
(b)等色により得た任意の二色または三色のYMC量を合計する。たとえぱA色の測定数値が10Y+20M、B色の測定数値が40M+10Cの場合は、合成色(A+B)=10Y+60M+10Cとなる。
ただし厳密には20M+40Mと50M+10Mの組合せはCC数値は等しいが、フィルター枚数及びその組合せにより透過率、反射率、濃度が若千異なってくる。かりに両者の平均透過濃度の相違を試算してみると、20M+40Mの場合
Y=0.079+0.112=0.191
M=0.199+0.362=0.561
C=0.056+0.071=0.127

50M+10Mの場合
Y=0.125+0.064=0.189
M=0.435+0.122=0.557
C=0.079+0.047=0.126
のようにわずかであるが若干の相違が生しる。そこで厳密にYMC量を計算するとさは測定するときに実際に使用した各フィルターの平均透過率、または平均透過濃度をもとに計算してみる必要がある。

(21)任意の二色の加法混色結果の計算及び、減法と加法の比較

減法混色結果の予測は、視覚的には上記方法(20)により、ブロック法では(14、15)、分光的には(16、17)でのべた計算法によって二色及び三色の混色結果の計算がおこなえる。一方、加法混色は光としての混合であり、このスケールのシステムは減法混色であるため加法混色したときの結果は直接的に得ることはできないが計算によって予測を得ることができよう。回転円盤(マクスウェルの色回転盤)などで継時的に加法混色する場合は、(面積比×A色の分光反射率)+(面積比×B色の分光反射率)という公式をあてはめ近似値を得てみる。たとえぱA色=20Y、B色=20Cの加法混色(面積比%)の場合は、(20Yの分光反射率×0.5)+(20Cの分光反射率×0.5)の計算を400〜700nmにわたって計算すれば、加法混色したときの分光反射率を得ることができる。☆
これを表5のデータを用いてブロック法で計算してみると、
        20Y     20C     (加法混色)
B = (0.337×0.5)+(0.678×0.5) = 0.507
G = (0.708×0.5)+(0.601×0.5) = 0.655
R = (0.744×0.5)+(0.346×0.5) = 0.545
となり、B光反射≒51%、G光反射≒66%、R光反射≒55%ということになる。これを濃度におきかえると、Y≒0.295、M≒0.184、C≒0.264となる。(同色にみえるであろうブロック濃度)☆
参考のために20Y+20Cの反射色の反射率を計算して入ると、
    20Y  20C    (減法混色)
B=(0.612×0.868)^2×0.9 ≒ 25.3%
G=(0.887×0.817)^2×0.9 ≒ 47.3%
R=(0.909×0.620)^2×0.9 ≒ 28.6% これを濃度におきかえると、☆
Y≒0.597、M≒0.325、C≒0.544となるから加法混色では濃度は減法混色の1/2近くになることがわかる。また純色量を計算してみると、加法混色ではY=0.112、C=0.080となるが、減法混色ではY=0.272、C=0.219となり、したがって加法混色では減法混色に比して明るさ(濃度)も、あざやかさも約1/2になるという仮説をたてることができるであろうか。
図3は20Y+20Cの二枚重ね(減法)の場合の分光透過率(a)と加法混色した場合に得られる分光透過率曲線(b)である。☆
また図4は減法混色したとき(a)、及び加法混色したとき(b)の分光濃度の試算例。☆

(22)色の差(色差1)の見出し方

ある色とある色がどのように相違するかは、両色をそれぞれYMC量に分析してYMCごとにその大きさ(濃度)を比較してみればよい。
(a)等色によってA色及びB色のYMC量(CC農度)を得て、YMC量の大きい方から一方を差引いた残りが両色の色差量に相当する。
たとえば、A色=80Y+60M+40C
      B色=H60Y+60M+30C
色差量=20Y+10C
A色から20Y+10Cを差引けばB色、B色に20Y+10Cを加えればA色になる。
(注:この場合も80Y=60Y+20Y、40C=30C+l0Cとして等価であるとはいえ、50Y+30Yと50Y+10Y+20Yとでは、また40Cと30C+10Cとではフィルター枚数及びフィルターの透過率の相違により厳密な意味では完全な一致をみない。とくにフィルター枚数により差が大きくなる。)(b)比色窓中に明度の高い方を右にして、二色を左右に分割するように配置して一方にフィルターを重合させて等色させたとき、用いたフィルターが色差量をあらわす。A色に対してB色+20Yフィルターにより等色したとき、A色から20Yを差引けばB色になり、B色に20Yを加えればA色になる関係を見出すことができる。



(23)プロック法による色差量の計算

測色学的な取扱いとして色差量の判定にブロック法を用いて平均透過濃度または平均反射濃度の差を計算してみることもできよう。たとえば、等色に用いたフィルターが、A色=80Y+60M+40C、B色=60Y+60M+30Cの場合その平均透過濃度差を見出すには、まずA色とB色の平均透過濃度を計算してみる。

〔A色の平均透過濃度〕(表3使用)
    80Y  60M  40C
Y=0.752+0.189+0.070≒1.011
M=0.123+0.558+0.125≒0.806
C=0.084+0.125+0.357≒0.566

〔B色の平均透過濃度〕
    60Y  60M  30C
Y=0.583+0.189+0.065≒0.837
M=0.114+0.558+0.105≒0.777
C=0.084+0.125+0.284≒0.493

したがってその平均透過濃度差は、
 (A色)(B色)(色差量)
Y=1.011−0.837≒0.174
M=0.806−0.777≒0.029
C=0.566−0.493≒0.073となる。

また、同じCC数値となる一方は一枚、一方は二枚の組合せになるCCフィルター同士の色差量を求めてみよう。たとえば40Y(一枚)と20M二枚はCC数値ではいずれも40Yであるが、
  (40Y)    (20Y+20Y)
Y=0.371    0.213×2=0.426
M=0.0611   0.052×2=0.104
C=0.043    0.041×2=0.082 となり、
その色差量は、Y=0.426−0.371=0.055
          M=0.104−0.061=0.043
          C=0.082−0.043=0.039
このように、平均的に0.05近い差が生じることがわかる。しかし更に厳密には、フィルター裏面の光損失量やフィルター自体のベース濃度の考慮が必要になってくるであろう。

(24)補色の見出し方とプロック法による計算

補色(反対色、余色)は、ここでは、(a)フィルターの数値的補色、(b)視覚的捕色、(c)物理的補色に大別してとらえる。(a)フィルターのCC数値により概略的な補色を容易に見出すことができる。二色のYMCを加え合せたときに等YMCになるときの一方がその色の補色であるから、ある測定色との等色に用いたフィルターがもし20Y+10Mの場合は加えて20YMCになる数値、つまり10M+20Cがその補色に相当する。任意色のYMC数値がわかれぱ簡単にその補色を見出せる効果がある。

(b)フィルターの等YMC数値は必ずしも視覚的には無彩色を示さない。多少、赤味を帯びるので、一般的には、等価のYMに対して1.5倍内外のCを与えるとよい。また、カラースケールを用いて任意の色の補色を見出す実際的な方法としては、グレイスケール板のグレイスケールが比色窓の左側にくるように位置させ、任意色(反射色にかぎる)を比色窓の右側におき、フィルターを用いてグレイスケールの無彩色のいずれかと等色させたとき、そこに用いたフィルターがその任意色の視覚的補色に相当する。

(c)物理的には、任意色から透過または反射する光と任意色に吸収された光は互いに補色関係にある。したがってフィルター色はその分光曲線より、その補色を分光的に取扱うことができる。また任意色をフィルター色に代替(等色により)したときも同様である。

ブロック法を用いて補色を見出すには、加えて等濃度YMCになる数値がその色の補色に相当する。たとえば20Y+20Cの平均透過濃度はY≒0.275、M≒0.140、C≒0.249であるから、合計が0.275になるM≒0.135、C≒0.026がその物理的補色に相当する。しかし、これはあくまで計算上の補色であって現実には存在しない色である。というのは厳密にY濃度が0でMが0.135、Cが0.026の色材はない。フィルターでも完全にY濃度0というのはつくることができない。

しかし、結果的には、混色したときに等YMC濃度になる関係の色すべてを補色とすれぱ純色量がM=0.14、C=0.03になるたとえぱ、
YMC(平均透過濃度)
0.10  0.24  0.13
0.20  0.34  0.23
0.30  0.44  0.33
0.40  0.54  0.43
 …   …   …

のように等YMCを与えて原色量を大きくした色とすればよい。そのなかに合計値が等YMC値にきわめて近似する色がいくつも見出せる筈である。さきに、視覚的捕色を得る場合として、等価のYMに対して、1.5倍のCを与えるとよいと書いたが、この20Y+20Cの場合にも等YMCとして更に1.5倍のCを与えるとすれば、20Y+20Cの補色は、20M+10Cということになる。この20M+10Cの平均透過濃度を合計してみると、
     Y     M    C
20M=0.079  0.199  0.056
10C=0.054  0.063  0.120
-------------------------------
合計 0.133   0.262  0.176
となり、この純色量は0.129Mと0.043CつまりM≒0.13、C≒0.04としてかなりの近似値を得ていることになる。参考のためにあげておくと20Y+20M+20C+10Cの平均透過濃度の合計値は、
      Y     M    C
20Y   0.213  0.052  0.041
20M   0.079  0.199  0.056
20C   0.062  0.088  0.208
10C   0.054  0.063  0.120
----------------------
合計値=0.408  0.402  0.425
となり、Mの0.402に対して、Yが0.006またCが0.023だけ多いということになる。

(25)色の記録と色のあらわし方

〔透過色の場合〕-------透過色は透過色記号Tを用いて(使用ペースがあれば使用べース名)+(使用YMCフィルター数値)を使用する。
〔反射色の場合〕-------反射色は反射色記号Rを用いて(使用ペース)+(使用フィルター数値)を用いる。
例:白色面(明度9.5)+20Y+30C標準色標(XX/X)+20Y+30C等
なお、カラースケールのフィルター順序は白色面またはグレイスケール上に下部から、補助フィルターはND、C、MY、リングフィルターは、Y、M、Cの順序にある。カラースケールを備えていない相手に対して厳密に色を表示する場合はフィルターの重合順序をも伝達する必要があり、もちろん使用フィルターの製品名は明記しなければならない。

(26)色の許容範囲、許容誤差の指定

希望とする色を指定して、その色の許容範囲を指示するときは、次の条件を考慮しておく必要がある。
@照明条件・照明光の色質と明るさ、方向、観測法等により相違が生じるで一定の照明条件を設定する。
A標準的観測者、複数の色覚正常者による判定をおこなう。
Bフィルター以外の、たとえば反射色ベースを用いるときはその反射色ペースを明確に規定する。(標準色標等)
Cフィルターを透視したときと、フィルターを密着したときとでは2倍以上の相違が生じる。透視法(フィルターを眼にあてがう場合)は比較のないかぎり眼の順応作用のために判断を誤まるので密着による比色法が望ましい。
D単に白色面(明度9.5)上、または任意色上の50Yと同じ色というのではなく、ブラス、マイナスを明確にして、50Y±10Y(40Y〜60Y)、50Y±05Y(45Y〜55Y)のように許容範囲を指示する。
E更に厳密に指示を要する場合はフィルターの重合順序、使用CC数値、フィルター枚数等を細部にわたって指示する。

(27)CIE表色系におけるXYZ、Y、x、yの試算

つくった色の分光透過率、または分光反射率がわかれば、CIE表色系(JlS=色のXYZによる表示方法)により、つくった色のXYZ、更にx、yの色度座標、視感明度Y等の近似値を計算することができる。任意の測定色をフィルター色と等色したときは、フィルター色に代替された任意色のXYZ、Y、x、yを見出すことが可能になる。したがって、任意色自体のXYZではないが、任意色(測定色)と等色したフィルター色のXYZであり、x、y、Yであることを充分に考慮しなければならない。

〔透過色(T)の場合〕------まずCCフィルター自体のXYZを計算してみる。表7の三刺戟値計算表に20Yの分光透過率をあてはめて計算してみると、表8のように、
三刺激値は、X=0.8244
        Y=0.8816
        Z=0.7252 となる。
このうちYは、そのままルミナス透過率を示すことになるので、20YのCCフィルターのルミナス透過率は約88%ということになる。
また色度座標は、
x = X / ( X + Y + Z ) = 0.8244 / 2.4312 = 0.3391
y = Y / ( X + Y + Z ) = 0.8816 / 2.4312 = 0.3626
z = Z / ( X + Y + Z ) = 0.7252 / 2.4312 = 0.2982
( X + Y + Z )= 0.8244+0.8816+0.7252=2.4312
※(x+y+z=0.9999)
(注:EKパンフレットにはこのCC20YはYC=89.1%、またxc=0.336、yc=0.3597、と記載されている。同一の計算法で各種のフィルターのx、y、Yを計算してみたところ、パンフレットの表示とほぼ完全に一致するもの((CC20M))、下三桁まで一致するもの((10Y、05M、10M、40M、05C、10C等))であり、下二桁までならほぼ90%6にわたって表示と一致する)。

〔反射色(R)の場合〕------20Y+20Cを白色面に密着させたとき、白色面反射率を90%(0.9)として、(20Yの分光透過率x20Cの分光透過率)^2x0.9の値を、上記計算表の(5)にあてはめて同様な計算を400〜700nmにわたって計算してみると、三刺戟値は、
X=0.3539
Y=0.4381
Z=0.3098
(X+Y+Z)=1.1018

色度座標は、
x = 0.3539 / 1.1018 = 0.3212
y = 0.4381 / 1.1018 = 0.3976
z = 0.3098 / 1.1018 = 0.2811  となり

したがって、20Y+20Cを反射率90%の白面上に位置させたときのルミナス反射率はY≒43.8%、x=0.321、y=0.397となる。☆

なお、計算法についてはJl S8722、また実際的方法についてはJIS使い方シリーズ色の常識(川上元郎氏著書 日本規格協会発行等)を参照されたい。

(28)Y、x、yからのHV/eの換算

反射色の場合は、Y、x、yの数値から(色の三属性による表示方法=JIS)によって、その色の色相(H)、明度(V)、彩度(C)を得ることができる。換算法は、まず、その色のルミナス反射率Y%より、JIS8721の付表2にてV(明度)を求め、V値を決定する。次に同8721の付図からV値に相当する色度図を求めて、x、y値によりHとCを見出す。
さきの20Y+20Cを白色面上に密着したときの反射色のYは43.8%であるから、付表2よりV=7.05となるので、明度7の付図に、x=0.321、y=0.397の交叉する点を見出すと、色相(H)は7.5GY、また彩度(C)は4を見出すことができるので、この計算法によれば、20Y+20Cの白色面上の反射色のHV/Cは、7.5GY、7.05/4ということになる。☆

(注)上記の反射色の計算法にはフィルターの表面反射光及び多重反射光の加算が省略されているためもあり実測値とは合致しない。単純な表面反射光の加算を試みてみると、色度図上での変動が少ないため、以上の計算法でもHおよびCはかなりの近似値が得られると考えられるが、Y%したがって明度Vは実際より低い数値となる。そのためそれぞれの条件に応じて計算法を補正する必要が生じる。


■カラー写真・印刷における応用

(29)カラー写真のカラーバランスの判定と色補正法

色質のよい照明条件において、比色窓においたフィルターの透視または密着によりカラーバランスの検討、判定をおこなう。カラー写真画像は、YMC三つの色画像が重合することによりすべての色を合成しているが、完全なカラーバランスを得たカラー写真は稀にしかないと考えるべきであり、何らかのYMC画像の変換を必要とされるものである。それには、スケールの右側に種々のフィルターのみを挿入して、これを眼にあてがって透視するか、または直接、密着させることにより色判定をおこなうことができる。もし、Y+Mのフィルターを用いて良好にみえるときは、その画像はC画像が過度に発色し、YとM画像の発色が不足していることを示す。しかし、反射色原稿、つまりカラープリントの場合は、密着させたときは、透視した場合の色の二倍の強さにみえることに注意が必要である。また、フィルターを眼に密着して透視したときは、眼がフィルター色に順応するために、比色窓の左側を素透しにして、フィルターをかけたときとかけないときを交互に比較しながら検討する必要がある。またなるべく、色見本等を使用し、両者の比較のもとに判定するのが望ましい。
撮影ずみの透明陽画(カラートランスパレンシィ、カラースライド)の場合は、フィルターを透して良好にみえるフィルターの組合せが、再撮影に用いるべきCCフィルターの基準値を示すことになる。

(30)CC法カラープリントの色補工法 (ネガ・ボジ法の場合)

〔従来の方法〕(a)-----テストプリント上にフィルターを密着するようにして適正な色にみえた場合は、重ねたフィルター数値の二倍(10なら20Y)をランプハウスから差引くか、またはその補色フィルタ一(20Yの場合は20M+20C)をランプハウスに加える。
〔従来の方法〕(b)-----フィルターを透視するようにしてテストプリントを観察してノーマルなカラーバランスが得られたとき、同色同濃度のフィルターをランプハウスから差引くか、または補色フィルタ一を加える。
〔RWカラーシステムの応用〕(c)テストプリント以外に希望とする色の色見本を用意し、その色見本とテストプリントの色差量を見出して、再プリントにおいて加えるべき、または減じるべきCPフィルターの選択をおこなう。
(色見本+フィルターによる等色)
比色窓左側l%にテストプリント、右側%に色見本をベースとして用いてフィルターにより等色したときに、用いたフィルターの分量だけ色見本に比してテストプリントが過度に発色していることになる。したがって、用いたフィルターの約二倍のCP数値のフィルターをランプハウスに加えることにより、色見本に近似した発色を期待することができる。
(テストプリント+フィルターによる等色)
上記方法とは反対に、比色窓左側に色見本を、右側にテストプリント部分を位置させて等色したときは、用いたフィルターに相当する色が色見本に対して不足するわけであるから、色補正には用いたフィルターに相当する二倍のフィルターをランプハウスから差引くか、またはその補色フィルターを加えればよい。たとえばテストプリントに20Mを用いて色見本と近似値が得られたときは、ランプハウスから40Mを差引くか、または40Y+40Cを加えれぱよい。 ただし、カラーペーパー、カラープリントフィルム等の種類、更に露光量により誤差が生じるが、(a)+(b)に加えてこの(c)の方法を併用すれば、従来よりフィルター選択は容易におこなえるであろう。また色見本に関しては、テストプリントの部分が無彩色の場合はその補正が容易になる筈である。したがって、標準反射板等を画面内に写し込んである場合はその無彩色部分の段階焼をつくるのが望ましい。また人物の場合、肌色が重要となるが、この方法では色見本として、ファッション雑誌、週刊誌、ポスター、カレンダー等の各種印刷物から希望とする具体的な肌色見本を作成しておけばよいであろう。しかし、面積比や配色によって効果はかなり異なってくることに留意した

(31)大型カラー写真画像のYMC 色濃度の視覚判定

濃度の測定には通常、濃度計が用いられるが、RWカラースケールにより概略的な色濃度の判定をおこなうには、すでにのべた原理と方法〔カラートランスパレンシイ→(10)、カラープリント→(11)〕を応用して、CC濃度、ブロック濃度(平均濃度薄、分光濃度による取扱いの可能性を有している。
一般に感光材料の取扱いにおいて色濃度を求める場合は、ベース濃度を0とする場合が多いようである。そこで、そのような取扱いをおこなう場合は、ベースとしては各感光材料の現像ずみの末感光部分をフィルターベースとして使用し、これと判定すべき画像部分と等色させるのが実際的であろう。つまり、スケールの比色窓の左側に測定色部分をおき、右側にそのベースを位置させてフィルターを用いて等色させる。
等色したときの使用フィルターから任意の部分の色がどのようなYMC濃度の組合せによりでぎているかを分色的に知ることができる。

(32)ダイトランスファープロセスに対する応用

ダイトランスファー法ではYMCの各色画像を如何なる濃度、如何なる割合につくればよいかその見当がなかなかむずかしいが、このシステムでは上記したように色見本のある部分がどのようなYMC量にあるかを見出せるので、等色した各フィルターの分色濃度を数値的、視覚的に知ることにより仕上げるべき三つの色濃度の見当をつけることができる。
転染すべきダイトランスファー・ぺ一パー上で等色したフィルターが05Y、10M、40Cであれぱ版は、Y版は05Y、M版は10M、C版は40Cの各フィルターと等色する転染像をつくればよい。それにはBGR別に同一部分についての段階焼をつくりYMC別に転染して適当な濃度(05Y、10M、40C)が得られるようなBGR露光量を見出せばよい。同様に、希望とする色をつくるときも同様な方法を応用すればよい。従来よりはるかに容易に近似値が見出せる筈であるが、これはダイトラに限らず三色分解露光方式のカラーペーバープリント、その他の三色分解作業にも応用でさる筈である。

(33)印刷インキ、染料、顔料、絵具、 その他の色材の混色結果の予測

色材の種類と性質により、その混色結果はこのCCフィルターによる重合法とは必ずしも一致しないが、近似値を見出し、予測を得ることはできよう。いま、白色画上で20Yと同色になるインキ(A)と、20Cになるインキ(B)の混色比1:1の場合は、スケールによる20Y+20C、また、混色比を変えたとき、たとえばA色に対してB色0.5の場合は20Y+10Cに近似するということになる。しかし、いずれも果してどの程度の近似値が得られるかは推測の域を出ないことをお断りしたい。材料により厳密にいえぱかなりの相違が生じるものと考えるぺきであろう。しかし、材料と混色法に応した何らかの補正系数を見出すことは可能になるのではなかと考えられる。

(34)印刷インキのかけ合せ(ダブルトーン)の見当と予測

あるインキとあるインキを刷り重ねたときの発色効果はインキの直接的なまぜ合せ練り合せとは異なり、とくにインキの透明度等により厳密にはかなりの相違が生しるであろうが、透明度の高いインキの場合はこのフィルターの重合法と近似する、大まかな予測は可能となる。インキの色見本の支持体をペースとしてインキ色と等色するフィルターをA色とB色にわたって見出して両者を加算した値をスケールにセットする。A色が60Y、B色が40Mの場合はその合計60Y十40Mに近似しよう。トリプルトーンについても同様であるが、大体の見当には役立つ筈である。

(35)着色紙と透明インキの組合せによる発色効果の予測

透明インキの場合は印刷すぺき紙の種類、とくに紙の色によって微妙に、また大きく発色効果が異ってくるが、上記方法と同様に、インキの色見本の支持体をペースとしてインキ色のみのYMC値を見出して、その見出したフィルターをそのまま、印刷すべき着色紙の上に重ねてみたとき、どのような発色効果が得られるか、その見当をつけることができよう。更にダブルトーンの見当には他の一色のYMC量を見出してこれに加算したフィルター値により着色紙上でダブルトーンとなる部分の発色効果の大体の予測がつくであろう。

(36)印刷物の校正と色指定

印刷物とくにカラー写真印刷における全体色調の検討は反射原稿であるカラープリントと同様な方法によって検討が可能になる。すでにのべたように、フィルター部(比色窓)を眼にじかにあてがったとき、眼はそのフィルター色に順応してくるので、素透しにした比色窓の左側とフィルター部(比色窓内右側)とを交互に比較しながら判定する必要がある。色見本と刷り上りの比較には比色窓中に左右を分割するように両者を配置して色の差を見出すのがよいであろう。厳密な色指定では(26)でのべた色の計容範囲を具体的に細部にわたって指示すべきである。

(37)厳密に色をはかる場合の注意事項

照明光源の色質------物体の色はその物体を照明する光源(照明光)の分光エネルギー分布によって物体から透過、または反射する光の分光分布が異なってくる。照明光の色温度が低くなり色質が赤味を帯びると物体の色は赤っぽくなり、色温度が高くなると青紫味を帯びることになる。しかし眼には光の明るさに対してと同様な自動調節作用が色に対しても働く。これは色順応作用と呼ばれる。したがって、日常生活では色順応作用のために色質が異なっても色が変ったようには感じられない場合が多いが、照明光の分光エネルギー分布が異なると、あきらかに色が異ってみえる場合がある。そのため厳密な色の取扱いをおこなう場合には照明光に対して何らかの案件を設定する必要が生じるが、JISではCIEで制定した標準光源を用いるよう指示されている。C光源は色温度約6700Kの光で、2800Kの白熱電球にはラッテン80B+80C、写真用電球(3200K)には80A+82BのLB(色温度変換)フィルターを用いて得られるが、人工光源では蛍光灯のうち、真天然昼光色が約6700Kの色温度をもっている。また真天然白色蛍光灯は色温度約4500Kとされ、演色性もよいのでこの両者は昼光下の比色作業に適した照明光源と呼べるのではないかと考えられる。
昼光用カラーフィルムの撮影光源の指定色温度は約5500K(EK社製品)あたりであり、またカラー写真検討用のイルミネーター(カラービューアー)は印刷学会では約5000Kを標準としており、結局、色温度は5000K〜6700Kの範囲内にあることは最低の必要条件であろう。ただし、明るさに重点をおいた演色性のよくない一般の蛍光灯はすすめられない。

光の方向及び観察する方向と表面反射光の防止-----反射色をつくりはかるときは、表面が光沢のある反射色となるために、表面反射光の防止にはスケールカバーを利用する。


図5において、光の方向と観察方向が(1)の場合は、カラースケールのカパーを立てておこし、カパーが丁度、魚のパックスクリーンになるように調節する。また(2)及び(3)の場合は、天井や顔面の反射肪止のためにカパーを図のように用いて、カパーの透視窓を利用して観察する。
また、フィルター色は反射色としたときは、光沢を有するため、比色する両者が均等な光沢色とする必要上、カラースケールには比色窓板下に透明フィルムが着脱可能になっている。反射色ではこの透明フィルムを用いて比色、等色させるのが望まれる。しかし、フィルター色の厳密な色をみるときには、つまみを持上げて除去するのがよい。

比色するどきの背貫色-----比色、等色はそのときの背景色によっても効果が異なるともいわれる。そのためこのカラースケールでは、スケールの比色板は黒であるが、背景色を段階的に変化可能な比色用マスクを用意している。比色する両者に近似もしくはやや低明度の比色用マスクを使用してみる。また、厳密には両者の左右の位置関係を変えて判定してみる。

反射色ベース-----スケールに用いている反射色ベース(白色面(WHITE)=V9.5)、グレイスケール等は早期の変退色はないと考えられるが、厳密な測色には、標華白色面、副標準白色面、透過色に関しては標準拡散板等、物理特性の明確なペースを使用していただきたい。

■スケールの取扱いと保存及びフィルター等の原器の交換について

フィルター等のはげしい回転や移動はキズの原因になるので避けて下さい。また、保存には高温、多温の場所を避け、乾燥した状態で保存して下さい。5年目ごとに、フィルター、グレイスケールの実費交換をおこなうので、5年目ごとにカラースケール本体を御送付下さい。その場合の実費(材料費、加工費等)についてはその都度御相談下さい。

あとがき(計算法及び計算値,用語等について)
このシステムでは視覚的な物体色の取扱と同時に,数値的な取扱が可能であるが,ここにあげた計算法の多くはとらえがたいさまざまな色の問題を容易に理解し把握できるようにするための便法として提案するものであり、種々の計算法及びとくにCIE表色系における反射色の計算法及びY,xyからのHX/Cの換算値等はあくまで参考例,参考数値であること。またフィルターのデータ及び計算値にはフィルターのゼラチン自体の濃度は含まれていない。
・二枚以上のフィルターを組合せたとき、反射面が多くなるために生じる光損失量、及びフィルターを反射色べ−スに密着して反射色としたときの表面反射、内面乱反射・散乱等・べ−スの表面特性、及びフィルターの重合順序による特性変化等は計算上考慮されていない。
・原色量はフィルター枚数により異なる。原理的にはたとえば20Yは15Yより原色量は大きいが、実際には二枚重ねによる15Y(10Y+05Y)の方が大きくなり明度が低下する。
 以上の理由から,原理と実際面では相違が生じ,計算値はフィルター枚数が多くなるほど誤差が大きくなる。とくに多数のフィルターを組合せたときの反射色は実測値とはかなり相違する筈であり,いずれにせよ,あらゆる数値はあくまで参考数値として取扱っていただきたい。なお,主要色についてのY、xyの実測値を得るとともに,計算法についてはそれぞれの条件に応じた補正法を検討し乍CIE法及びHV/C法との換算値を求めてゆく所存である。
 また、用語に関しては慎重な選択をおこなったとはいえ、必ずしも従来の定義や語意に相当しない用語が含まれていることをおことわりする。

RWホームページにもどる