日中関係学会は4月4日、「第2回宮本賞」最優秀賞、優秀賞受賞者による発表会を東京神田の学士会館で開催した。最優秀賞に輝いた江暉さん(東京大学学際情報学府Ⅲ博士課程)、優秀賞を受賞した周会さん(青島大学日本語学部3年)の2人が、受賞論文の内容を中心に記念講演した。周会さんはこの発表会のために日中関係学会の招きで、わざわざ青島から来日した。会合には約50人が参加し、講演後には4人の日中の大学生も加わって、活発な質疑応答が行われた。優秀賞を受賞した佐々木亜矢さん(愛知大学現代中国語学部卒業)と長谷川玲奈さん(麗澤大学外国語学部4年)は都合が悪く参加できなかった。(受賞論文の詳細はニューズレター54号に掲載予定)

 

 ▽低い日本の好感度

 江暉さんの受賞論文のテーマは「中国人の『外国認識』の現状図 8ヶ国イメージ比較を通じて日本の位置づけに焦点を当てて」。清朝末期以来、激動の時代を経験してきた中国が、世界第2位の経済大国となった現在、自国や他国をどのように定義しているのか。現代の中国人が描いている国際社会の縮図を明らかにしたいとの問題意識から出発し、特にその縮図における日本の位置づけを探りたいとの考えから研究に着手した。

 研究方法としては、中国の一般民衆が直感的に認識している外国像を浮き彫りにするため、2012年5-6月にかけて、大連、瀋陽、鎮江、南京、南昌、広州、重慶、西安、張家口、北京の各地でアンケート調査を実施し、約2000人から回答を得た。アンケートでは米国、日本、韓国、北朝鮮、インド、ロシア、フィリピン、ベトナムの8ヶ国を選び、それぞれの国に対するイメージを質問した。特に8ヶ国に対する「中国人の評価」「好感度」「相対的位置づけ」の3段階で比較した。

 「8ヶ国に対する評価」では、(1)先進国ではロシアに対する評価が一貫してポジティブで、堅実な実力者のイメージがある(2)米国はおおむねポジティブな評価で、特に「先進的」「豊か」「自由開放」などの項目で他国を凌駕し、「王者」米国のイメージがある(3)日本と韓国は「信頼できる―できない」「男女平等―不平等」「平和的―好戦的」の項目でネガティブに評価されている(4)日本は先進国の中では「信頼できる」「国際貢献」で最下位、また「好戦的」「男女不平等」という中国人が抱いているステレオタイプの「日本イメージ」がうかがわれる(5)発展途上国(インド、フィリピン、ベトナム、北朝鮮)に対する評価はどの項目もネガティブだった。

 「好感度」に関しては、好感度がもっとも高かったのはロシア、次いで米国、韓国、北朝鮮、インド、日本、ベトナム、フィリピンの順。日中関係悪化の影響を受け、日本は6位だった。日本の好感度が低いのは、上記の評価を加味して考えると「心理的脅威感」も影響しているとみられる。

 8ヶ国に対する「相対的位置づけ」では、「模範度」「親密志向」「関係の良し悪し」「警戒度」について尋ね、その結果、(1)米国と日本に対しては見習うべき模範としながらも、警戒感から親密な関係構築には躊躇がうかがわれた(2)北朝鮮には模範的作用は求めていないが、心理的親近感に基づく親密志向が強かった(3)中国との関係が良好であると認識されているのはロシア、北朝鮮、韓国の3ヶ国のみ―となった。また特に日本に関して、中国の大学生は強い警戒心を示しながらも、親密志向と日本への模範意識、好感度も高かった。

 こうした調査結果から江暉さんは結論として、「中国の一般国民は現在の相手国との関係に対する評価に基づいて、相手国を認識する傾向がある」と分析、ロシアや北朝鮮には堅実なパートナー的認識をしているのに対して、米国や日本への認識は脆弱な両国関係に大きく左右される傾向があると指摘した。

 

 ▽両国民の直接交流の強化を

 周会さんの受賞論文のテーマは「冬来たりなば春遠からじ -中日関係への体験談-」。2012年の反日デモを切り口に、どうすれば両国の誤解を解消し、友好を進めることができるかを、自分自身が体験した日本との文化交流や日常接触のあった日本人との交流を手掛かりに考察した内容。

「大学に入る前の私は、日本に対して、複雑な感情が混じっていた。日本をいくつかのキーワードで表現すると、アニメ漫画、美しい富士山を背景に満開した桜、発達している工業技術、家電製品と自動車、伝統的な京都、現代的な東京、着物を着ている奥ゆかしい姿とアジアファッションの最前線など。もう一方で、軍刀、戦争、ファシズム国家、侵略、虐殺などの言葉も思い浮かべた」という周会さんは、2012年9月に尖閣問題がきっかけで起きた反日デモ行進に大きなショックを受けた。日本に対する親近感が強い青島市で、日系企業に対する放火や激しい破壊が行われたからだ。「現場の状況は目も当てられないほどひどい状態だった」という周会さんは、日本文化の体験や日本料理店でのアルバイト体験を基に、両国間の平和な関係を築くためにはどうしたらいいかを考える。そして結論として、以下の5点を指摘した。

第一に、暴力に訴えず、平和的に国民同士の相互理解を妨げる宿痾を直す。

第二に、相手と友達になる前に、相手のことをよく知り、理解すべきだ。

第三に、人的交流を重視して国民同士の直接交流を強化し、国民の交流から国家の交流へ進める。

第四に、文化交流を中断してはいけない。そして、文化交流を通して経済交流と政治交流を回復させる。

第五に、若者を重視すべきだ。若者たちは国際状況に新鮮なパワーを注ぐ源泉だ。

 

 ▽誤解を生む根本を探る

質疑応答では、「世論調査の調査対象はどのようにして選んだのか」「在日の中国人を対象にこうした調査をやったら、どんな結果がでると思うか」「中国の大学では日本について、どのような紹介をしているのか」など、多くの質問が出された。

 最後に宮本雄二会長が「日中関係学会青年部発足の第一弾という形でやっていただいた。3年前、北京で会った大臣級の人物は『何で日本と中国にはこんなに問題ばかり起こるのだ。外交部は起きた問題に対応することばかりしかしていないじゃないか。問題を根本から解決することをどうしてやらないのか』と外交部を批判していたが、この発言は江暉さんの研究につながるものです。こうした研究こそが、どうして日中にはそんな誤解が生じるのか、誤解を生む問題は中国でどうして発生するのかといった、根本的な問題の追究につながるからです。そうしたものを追究し、元の問題がなくなれば関係悪化という現象もなくなるでしょう。こうした世論調査は重要だとしみじみ思いました。ぜひ継続してやった方がいいと思います。周会さんもわざわざ訪日して、われわれの活動に花を添えてくれて、心から感謝します。帰国したら、中国の人にもいろいろ日本のことを語って上げて下さい。われわれも青年部の活動を全力で応援するので、頑張ってください」とあいさつした。(了)