日本日中関係学会・中国中日関係史学会
国際シンポジウム

2011年6月24〜25日

日本日中関係学会(宮本雄二会長=前駐中国大使)はカウンターパートである中国中日関係史学会(武寅会長=中国社会科学院副院長)の王泰平団長(中日関係史学会副会長=外交部大使)ら8人の代表団を招き、6月24日に名古屋で、同25日に東京で国際シンポジウムを開催した。本部主催の東京シンポジウムでは「日中の戦略的な相互信頼と協力−東日本大震災をいかに乗り切りか」をテーマに、また東海日中関係学会主催の名古屋シンポジウムでは「これからの日中関係をどう築か−ピンポン外交を振り返って」をテーマに、日中関係の持続的発展に向けた熱心な報告と討議を行った。今回のシンポジウムは国際交流基金の「知的交流会議助成プログラム」から助成を受けて行われ、東京では150人、名古屋では120人が参加した。


(東京シンポジウム)

東京シンポジウムでは、小倉和夫国際交流基金理事長、武寅中国中日関係史学会会長(代読)のあいさつに続いて、



 宮本雄二会長、王泰平副会長がそれぞれ基調演説を行った。

「日中戦略的互恵関係を支えるもの―新しい共通の普遍的思想を求めて」と題した講演で宮本会長は、2008年5月に日中両国が打ち出した「戦略的互恵関係」で、日中関係に新たな地平線を開くことが可能になったと指摘。しかし、戦略的互恵関係を支え推し進めるには、人々を和諧と協調に導く世界観ないし理念が必要であると主張。力の強いものが弱いものをいたわり、利己的な行動を戒め、全体の利益のために奉仕する「王道の世界」、外交的に言えば「国が大きければ大きいほど、また国力があればあるほど、自己抑制をし、己の属する地域と世界の平和のために奉仕する」という儒教に基づく行動規範こそそうした理念であると力説した。


また王泰平副会長は「中日戦略的互恵関係のレベルアップのかぎはどこにあるのか」と題した講演で、中日関係にはチャンスとチャレンジとが同時に来ているが、チャンスの方がチャレンジよりはるかに大きいと指摘。戦略的互恵関係を推進する前提条件は「戦略的信頼関係」にあって、特に政治や安全保障での信頼を増進させることが必要と強調した。また、「共同発展」は戦略的互恵関係の中心となる内容であり、両国は負けるか勝つかの関係や、栄えるか滅びるかの関係ではなく、ともに繁栄の道を歩まねばならないと指摘。さらに「民間友好」は戦略的互恵関係の基礎であると述べ、多レベル、多ルート、多領域の交流拡大を訴えた。



 この基調講演の後、董永裁中日関係史学会副秘書長、五十嵐貞一日中関係学会理事からコメントが述べられた後、4者による討論及び会場からの質疑応答が行われた。





午後からは3部に分かれて報告と討議を行った。第1部の「東アジア協力」では、江原規由氏(日中関係学会理事・前上海万博日本館館長)が「アジアにおけるFTAと日中経済関係の今後−日中双方向の投資の時代」、劉江永氏(中日関係史学会常務理事・清華大学教授)が「国際システムの変化と東アジア共同体の未来」について報告した後、討論、質疑が行われた。



第2部の「日中環境・エネルギー協力」では、杉本勝則氏(日中関係学会理事・参議院法制局法制主幹)が「東日本大地震と日中環境協力−低炭素社会作りと汚染土壌対策に向けて」、張雲方氏(中日関係史学会副会長・元国務院発展研究中心局長)が「中日環境保護協力を強化し、人類の直面する挑戦にともに対応する」と題して報告した後、討論、質疑が行われた。



第3部の「日中文化交流」では、王敏氏(日中関係学会評議員・法政大学教授)が「中国における若者の意識変化と日中関係」、高海寛氏(中日関係史学会常務理事・国際友人研究会副秘書長)が「中日戦略的互恵関係中の文化関係の発展について」と題して報告した後、討論、質疑が行われた。

いずれの報告に対しても会場からは率直な質問が出され、討議の時間が不足するほどだった。





(名古屋シンポジウム)

名古屋シンポジウムでは、冒頭に6人のパネリストが発言。庵原孝文氏(東海日中関係学会理事・名古屋学院大学前客員教授)は「日中経済関係の重要性と新アジア主義」、李春利氏(愛知大学経済学部教授)は「ポンポン外交から蘇る多国間関係の理念」、清水美和氏(中日新聞報京本社論説主幹)は「大震災でわかった日中の友情と不信」、王泰平氏は「ピンポン外交回想 民間外交促進」、張雲方氏は「名古屋ピンポン外交の教え」、田培良氏(中国人民外交学会副秘書長)は「ピンポン外交から見た民間外交の役割」と題して、それぞれ見解を表明した。




続いて川村範行氏(東海中日関係学会理事・名古屋外国語大学教授)をコーディネーターにパネル討議を行い、ピンポン外交の再評価や安全保障を巡る日中双方の不信感などについて意見を戦わせた。

最後にコーディネーターが@日中双方はピンポン外交が果たした役割を再評価し、立役者の後藤ナ二先生の功績をノーベル平和賞に値すると高く評価Aピンポン外交から汲むべき点として、政府外交を動かすような民間交流の力を発揮していくことが重要との認識で一致B日本側は、日中両国には安全保障上の不信感があり、安全保障対話の枠組みや危機回避のメカニズムを作っていくことが急務と指摘。中国側は、日中関係を複雑化しているのはアメリカ要因で、アメリカが中国脅威論をあおっていると主張C日中国交正常化40周年を来年に控え、両国は原点に返りトラブルや問題を丁寧に説明し、お互いに理解して受け入れる寛容性が肝要―とのまとめを行った。