管理人から
  「なぜいま、フォーラムを立ち上げるのか」
                            林千野


 大分前に日本で「KY」という言葉が流行った。ご承知の通り「空気が読めない」の隠語であるが、中国に留学経験がある筆者にとって、「空気を読む」ことが出来る日本人は世界的にも特異な存在であると思う。
 10代の終わりに中国で留学生活を開始した筆者が留学後先ず痛感したのは、中国人学生や他国の留学生と触れ合う際、日本式の「以心伝心」式コミュニケーションが全くと言っていいほど通じないという点だった。他国では「自己主張」ありきで、先ずは自分の主張をきちんと口に出して相手に伝えることに重きがおかれ、相手を慮ることが美徳とされる日本の文化環境で育ってきた筆者には暫く強烈な違和感がつきまとい、それが世界標準のコミュニケーションの基本であることに思い至るまで、軽いカルチャーショックに悩まされ続けた。今から振り返れば何とも微笑ましい思い出だが。
 外見や文化背景が異なる欧米人とのギャップは、日本人にとってまだ納得しやすい。しかし同じような外見を持ち、漢字や儒教などの文化を共有する中国人とのギャップは、却ってギャップ自体を認識しづらく、往々にして「日本の常識」をあてはめて考えてしまい、その結果、中国人に対して否定的な感情を抱いてしまう場合が多いのではないだろうか。
 長く中国人と接してきた筆者にとって、日本人と中国人の思考方法やコミュニケーションの取り方は、共通点よりもむしろ相違点のほうが多いように思う。
 日中双方が円滑なコミュニケーションをはかっていく為には、先ず日本人と中国人の考え方の相違点を認識すること、そしてどのような場面で双方のギャップが発生しやすいのかを把握し、ギャップが生まれる背景や理由を突き詰めて考えていくことが大切だと思う。そして、このような地道な努力を続けることで、日中の相互理解が深まっていくと考えている。
 本フォーラムでは、長く日中関係に携わってきた関係者の皆さんが、自らの体験に基づき、日中双方の考え方やコミュニケーションの取り方の相違点、そして円滑なコミュニケーションの為のヒント等について開示いただく。
 本フォーラムの開設を通じて日中双方の相互理解とコミュニケーションギャップの解消につながれば幸いである。

管理人紹介
林千野(はやし・ちの)1980年~1984年北京語言学院(現北京語言大学)留学。1985年日商岩井株式会社(現双日株式会社)入社、現在双日株式会社海外業務部海外業務課中国デスクリーダー。日中関係学会理事。