診療所通信
        Clinic News Paper
No.84
2006/7/1

/                 川上診療所
 以前、この欄にメダカのことを書きました。子供が小学校からもらってきたメダカのつがいが増えて25匹になったと。あれから1年が過ぎてどうなったかと言いますと、またまた産卵期を迎え、従って水槽も増やす必要が生じ、今は3個になりました。メダカに熱中、というわけではないのですが、熱帯魚屋さんの前を通りかかると、いろいろな綺麗な魚たちに足を止め、まるで水族館のように時間が過ぎてしまうこともあります。こういう小さなものからも、自分の知らなかった別の世界が発見できて、世の中って面白いものですね。 わが診療所は、この夏で開院8年目を迎えました。開院当初は、スタッフ7名ほどの小さな診療所でしたが、今は(器は大きくなっていないのに)スタッフ30人ほどになってしまいました。中身は相変わらずメダカの学校のようにザワザワしていて、まあ良く言えば、家族的なのかも知れません。古くなってきた壁や天井などを、自分たちの手で塗り替えたり張り替えたり出来たらいいなあ、そんな診療所にしていければと思っています。
これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。(スタッフ一同)

・マンモグラフィと触診・・・・マンモグラフィによる乳がん検診の受診者数は、千葉県が今年も全国で第一位だったと先月号に書きました(平成16年度厚生労働省統計)。また、乳がんの発見率では、マンモグラフィが触診より有効である(マンモグラフィ:0,24%、視触診:0,15%)という結果にも触れました。今回はより詳細に年齢別の結果を追加しておきましょう。先に結論を言いますと「高齢なほどマンモグラフィは有効」です。触診では40才代から70才以上、どの年代でも乳がんの発見率は、ほぼ0.15%であるのに対し、マンモグラフィでは、40才代が0.21%、50才代が0.23%、60才代が0.26%、70才以上が0.30%と、年齢が高くなるにつれて発見率も高くなっていきます。これは高齢な人の方が乳腺の量が少ないために、がんが映し出されやすいからだと考えられます。どうやら、「70才を過ぎたから私は検査はもういい」ではなさそうですね。
30代前後の若年者には、エコーのよる乳がん検診が実施できるようになると良いのですが。

・増田先生のコラム・・・・インドの話です。大そう高価な宝石を持っている人の家に、強盗が入り「その宝石をよこせ」と言いました。その人は「ああ、いいよ」と言って渡しました。ところが、しばらくすると同じ強盗が戻って来て「これを返す」。「それなら、かわりに欲しいものがあるか?」。「高価な宝石をやってしまっても、ちっとも惜しがらないお前の心が欲しい」と言った、という話です。私達の生活は、恵まれているが故に生じる悩みが多いことに気付きます。財産や地位がなければ失う心配もないし、普段服を着ていれば、汚さないようにと神経を使う必要もありません。家族がいる楽しさの反面、縛られ苦しむこともあります。自分の意を通すと喜びもありますが、これで本当に良かったのか、ワガママではなかったかと不安もまたあります。では、持たない者であれば幸せを得るのは容易なのでしょうか? ある修道者が「財産も地位も捨てて来たはずなのに、教会のいつも座る自分の席に他人が座っているのが気になる。日常の小さな小さなことが捨て切れないものなのです。」と書いていました。高価な宝石ではなくとも、失いたくない物や状態を持てる幸せを忘れてしまうことなく、執着を少しでも減らせたらと思います。
増田先生は、私(院長)のことをチョイわるおやじと言います。どういうことなのでしょうかねえ。
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