診療所通信
        Clinic News Paper
No.77
2005/12/1

/                 川上診療所
 もう12月になってしまいました。今年は寒くなるのが早くて、皆さんいかがお過ごしですか。先日、私は上野のプーシキン美術館展に行って参りました。展覧会に行くこと自体が久しぶりな上に、セザンヌやマティスの絵は目にも心にも明るく暖かで、本当に素敵でした。気持ちが豊かになると、いつもは嫌な雑踏も活気のある人並みに思えてきて、ついつい御徒町・アメ横・秋葉原と散策する気になって人間ウォッチング。日本はまだまだ大丈夫と感じましたね、あのパワー!。公園のあちこちで繰り広げられている大道芸は、東京ではヘブンアーティストという資格があるんだそうです(知らなかった)。自作の木琴を自転車に積んで、世界を廻って演奏しているという人の不思議な音楽に、思わず聴き惚れてしまったり、若いジャグラーの妙技に目を奪われたり、楽しいものをいっぱい見て文字通り万華鏡のような一日でした。だから皆さんにも、「来年、良い年でありますように」
パキスタン地震支援のためのユニセフ募金(10243円)は、先月送りました。ご協力に感謝いたします。

・第33回千葉乳腺疾患研究会・・・・12月17日(土)午後2時から、青葉の森公園芸術文化ホールで「第33回千葉乳腺疾患研究会」が開かれます。今回はテーマは、乳がん医療のケアということで、現場ではどうなっているんだろう、どうすれば良くなるんだろうということを中心に討論が行われます。特別講演として聖路加国際病院・看護部の金井久子さんが「外来化学療法におけるケアの実際」についてお話しされる予定です。他にも県内の病院からの発表が、がんセンターや大学病院や患者さんの会を含め13題あります。関心のある方はどうぞご参加下さい。この千葉乳腺疾患研究会は17年前に第1回目が開かれ、以来、千葉県内の乳腺医療を担う専門家たちによって続けられて来ました。名称はちょっと硬いのですが、中身は実際的でわかりやすく一般の方の参加も少なくありません。新聞やテレビなどのメディアとはまた違った角度から、現場医療を考えてみる良い機会として、いかがでしょうか。
問い合わせ:千葉乳腺疾患研究会事務局(ちば県民保健予防財団内)TEL043(246)8606

・増田先生のメッセージ・・・この季節、毎年私に届く林檎があります。送って下さるのは、今は亡き患者さんの80才を越えたご両親です。三年にわたる闘病期間に、医者と患者との枠を越えて親しくなった患者さんでした。まだ大人になりきれない私は、怒ることも悲しむことも喜ぶことも、すべてに全力投球、適当におさめるという術を知りませんでした。社会で働く厳しさ、頑張っても空回りすることもわけがわからず、忙しい中でギスギスした人間関係も加わり、なにか虚しく感じていたときでした。彼女に会いに行くと、いつも自分の用意できる中で一番のおやつを私に食べさせてくれました。当時は、ただ美味しいなあと食べていた私でした。彼女の最期の冬、蜜がたくさん入った林檎を出してもらい、時間がない彼女こそお腹いっぱい美味しい物を食べたらいいのに、私にいつも沢山くれる彼女の気持ちが苦しくて、美味しい美味しいと言うしかできませんでした。美味しいを繰り返す私のことを、彼女はご両親に話していたのでしょう。彼女のいない初めての冬、その林檎は届きました。蜜がいっぱいの切り口を見て、涙が溢れました。今年も届いた林檎達は、蜜がいっぱいの林檎のような心を残せる生き方をしてねと、彼女のメッセージを運んでくれています。
心優しい増田祐有子先生、これからも患者さんのためにがんばって下さい(院長)


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