診療所通信
        Clinic News Paper
No.73
2005/7/29

/                 川上診療所
 8月はお盆休みもあって、どちらかというと外来は空いて、私としてはちょっと休憩できそうです。それでも様々な方が、診療所の外来に来られます。「テレビでこう言っていたので診てほしい」「新聞に○○病のことが出ていて心配になった」。テレビではどのように説明されたか知るよしもありませんが、一人一人の心配の種を取り除くのは、結構時間のかかる作業です。「どこが悪いか分からないけれど、不安なので来ました」という方もいらっしゃる。これはなかなかの難問です。具合が悪くないのにどうして病院に来るの?と言ってしまえば身も蓋もない。症状もないのに、さて皆さんが持つ不安の原因は何でしょう。医療情報?不安な世の中?それとも自分の人生?どうやら医療技術だけでは答えられそうもない場合ボクはどうするかと言うと、「その不安は分かるような気がします。何とかなると良いけどね」と深みのない言葉を口にしてしまいます。これは良くいえば共感ということなんですが、要するに幼なじみと話す口調になってしまうんですね。そこからコミュニケーションが始まると良いんですが、どうでしょう。
8月11日から15日まで休診とさせて頂きます。

・乳腺炎の治療法・・・・暑い季節に多くなる病気の一つに乳腺炎があります。特に授乳中の人はストレスが溜まったり、不眠で充分に休養がとれなかったりで、乳腺炎になりやすい状態ですね。授乳中の乳腺炎の治療は、とにかくマッサージをしっかりやることが第一です。母乳がうまく出ずに、詰まった状態、溜まった状態になると、皮膚が赤くなり、痛みや違和感が強まります。この段階でがんばってマッサージをやると治るのですが、悪化すると滞った母乳が膿に変わって乳腺炎になってしまいます。こうなると抗生物質などの治療が必要になります。陥没乳頭の方は、菌が入りやすいので、乳頭を清潔にすることを心がけましょう。授乳期と関係のない乳腺炎は、治療がすんなりとは行かず長引くケースが多くて、医者泣かせですね。体調やホルモン状態を見ながら辛抱強く治療しましょう。
このような「乳腺炎」と「乳腺症」は別のものですが、どちらも乳がんとは関係ありません。

・「楽だから、便利だから」・・・・アメリカでは、帝王切開を選択する妊婦さんが多い。なんと赤ちゃんの四人に一人が帝王切開で生まれてくるそうです。働く女性が出産予定を立てやすくするためであり、産科医も効率的に手術のスケジュールが組め、真夜中の陣痛などで呼び出されなくてすむというのです。ニューヨークでは、自然分娩させてくれる病院を探す方が難しいというからびっくりです。今の日本ではこのような選択的帝王切開は、ほとんど行われていませんが、将来はどうなっていくのでしょう?私は出産の経験がないので、陣痛の辛さや、仕事と出産との掛け持ち、何となくしか想像がつきません。そんな私の意見は理想論かもしれませんが、やはり、母から社会へと旅立つタイミングは、子供が決心する時が良いのではないかな?と思うのです。これから出産の世代の人達は、ファーストフードで待たずにハンバーガー、お湯をかけたら三分、喉が渇けば販売機、24時間のコンビニ、連絡は携帯電話、待つことが本当に少なく育っています。出産すらも、この日と決めてしまいたくなるのでしょうか?便利なように見えますが、本当に便利なのでしょうか?
今回の増田先生のコラムは珍しく辛口。効率や合理性がすべてではない、私も同感ですね。(院長)


診療所通信の目次に戻る