診療所通信
        Clinic News Paper
No.66
2005/1/1

/                 川上診療所
 新年あけましておめでとうございます。皆さん、お変わりありませんか? 私はこの冬休みにいろんな人と会いました。親友の宮尾先生(軽井沢病院)とは、久しぶりに飲む約束をして、はるばる寒空の中出かけて行ったのですが、折しも入院中の患者さんの具合が安定せず、結局、約束は果たせませんでした。医者とは因果なものですね。でも彼は相変わらずいい男でした・・・。年末には受験を控えたある中学生が診療所に訪ねてきました。医学部を目指すとのことで、学校の先生に行って見てくるように言われたそうです。ボクを見て何か伝わると良いんですが・・。昨年亡くなられた私の先輩医師、その奥様は先生の意志を継ぎクリニックの再建にがんばっていらっしゃる。私たちにできることがあれば、この1月から診療の助力をしたいと思っています。年が改まって、やるべきこと、なすべきことが見えてきたようにも思います。心を引き締めてがんばりたいこの1月です。
おかげさまで年末は休養をとらせていただきました。悪いところはなかったみたいです・・。

加戸先生のクリスマス・・・・私にとって関わりの深い患者さんで、社会的には指導的立場でイキイキ活動していた人がいました。まさか自分が病気になるとは思わなかったと、発見が遅れたのでした。それでも前向きな姿勢で治療に専念している姿は、本当に感動させられました。しかし、繰り返された入院生活も最後かなあと思われるときが来ました。人並み以上に何でも出来ていた人が、一つ一つ出来なくなっていくのに、嘆くこともなく、できることを大切に喜びをこめてしているのです。吐き気で書けなくなった字を、書ける日に一行ずつ一字ずつ、クリスマスのカードに書いていました。最後の言葉、いったい当日までに何枚書けるのかな?それくらい少しずつ書いていました。その大切な一枚が、ある日私のところに届いているではないですか!毎日病院で会える私に、ありがとうと書いてありました。その一行の為に、大切な一枚を私に書いてくれたのです。
 私は、目標は高く、夢は大きく、少しずつでも前進しようとしないのは怠りや逃避なのではないかと、うまく前進できない自分にはいつも焦っていました。でも、彼女に自分のハードルを下げる勇気の大切さを教わりました。人は多くの場合、老いや衰え、心や体にキズや病を負ったとき、その自分を受け入れられずに過去の自分を追い求めてしまいます。その焦りが、かえって状態を悪化させていくこともあるのではないでしょうか?そんなとき、その自分ごと受け入れて愛せたら、自分のハードルを上手に下げることができたら、また私達は跳べるのではないでしょうか?出来ていたことが半分になったとしても、無理せず元気で笑顔でいれるって素晴らしいことだと思います。迷惑をかけたと落ち込むより、ありがとうと喜べることは素敵だと感じます。その心を、私はその彼女から贈られました。あれから五回目のクリスマスが来ました。私も色褪せることのない贈物をすることができたら…なんて思います。
みなさん、素敵な新年をお過し下さいね。加戸

年末にいただいた加戸先生からのメッセージ、少々長いのですがそのまま載せました。皆様からの投書・原稿もお待ちしております。この診療所はハウルの城のごとくガタピシのところがありますが、今年もがんばってまいりますので、よろしくお願いいたします。

診療所通信の目次に戻る