診療所通信
        Clinic News Paper
No.64
2004/11/1

/                 川上診療所
 テレビの番組で、自分の通っていた小学校へ大人になった先輩が来て授業をする、というものがありますね。ご存じですか。私は時々、この番組を興味深く見ているのですが、それぞれの専門分野でがんばっている大人たちが、わかりやすく小学生に「授業」をする。このわかりやすく本質を語ると言うところが重要ですね。言葉や雰囲気で大人は煙にまけても、子供を相手に文字通り子供だましでは通用しないから、講師の力量までが見えてしまう・・・。以前、「千葉乳腺疾患研究会」で、地元の女子高校生たちが発表したことがありました。打ち合わせの段階で、この子たちは病気というものが分かっているのだろうかと内心、心配していたのですが、それはまったくの杞憂でした。並み居る専門家たちや患者さんを前に、若々しい感性の直球勝負で、わかりやすい発表をしてくれました。がんについての知識は子供には関係ない、というのは違います。大人も子供も、若者も高齢者も、もちろん男も女も、病気について差をつける必要はないでしょうね。
乳がん検診の指導は、学校で女子と男子と一緒にするのが良いと思うのですが・・・。

・ 牛乳とカルシウムで大腸がん減少・・・・ ハーバード大学のグループが、米国・カナダ・オランダ・スウェーデンで約53万人の男女を対象に行った研究の結果が発表されました(HP:東北大学、坪野先生)。報告によると牛乳を1日に250g以上飲む人は、1日に70g以下しか飲まない人に比べて、大腸がん(特に直腸がん)の発生率が15%ほど低かった。またカルシウムについても1日に700mg以上摂取する人は、1日量500mg以下の人に比べて、やはりリスクが約20%低くなっていたそうです。乳製品やカルシウムの摂取によって、大腸の粘膜上皮の増殖が抑えられること、また大腸ポリープの発生が低下することは、動物実験で証明されています。しかしこのような大規模な研究は世界的にも初めてで、もちろん日本にもありません。日本人は欧米諸国に比べてカルシウム摂取量が少ないため、今後の食生活の改善による恩恵は、むしろ日本人の方が大きいかも知れませんね。
ただしチーズやヨーグルトでは発生率の低下は認められなかったそうです。残念。

・研修医が学ぶこと・・・・川上診療所に来て、そろそろ10ヶ月がたちます。麻酔科医として働いていた私(加戸)には、外来での診療はほとんど経験がありませんでした。知らないことだらけの私でしたが、川上先生に所見を確認してもらいながら、マンモグラフィーやエコーを読影をしたり、診察したりできるようになってきました。先生、スタッフのみなさんのおかげです。そして患者さん達のおかげです。患者さんの話を聞くことで、私はたくさん成長させてもらえています。自分の感覚ではわからない気持ちを、患者さんの言葉から学びます。不安、痛み、副作用、皆さんの感じ方を聞くことで、その気持ちを理解できる自分に近づきたいと思っています。些細にみえる事であっても、どんどん話して教えてくださいね。外来を持つようになり、患者さんと関わる幸せを知りました。私は患者さんに安心をあげられる医者になって、みなさんに恩返しをしたいです。まだまだ道のりは長いですが・・・。
若い医師を育てること、大変重要なことだと思います。がんばって下さい。(院長)




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