診療所通信
        Clinic News Paper
No.56
2004/3/2

/                 川上診療所
 美しい日本の情景が描かれた映画「たそがれ清兵衛」は、山形県の庄内地方で撮影されたと聞きました。この地に私の大先輩が医院を開いていて、時々診療のお手伝いに伺います。行けば必ず、私の方が癒されて帰って来る。そういう地に、友人が出来ました。彼はまだ20代の実に清々しい好青年ですが、300年続く老舗の跡取り。その彼からのメールを紹介しましょう。「僕の祖父は、僕が大学受験の時に癌で亡くなりました。胃潰瘍と言われていましたが、家に戻ってきた時に、一週間かけておひな様を飾り、毎日1人づつ友人を呼んで、差しで毎晩静かにお酒を飲んでいました。僕の隣の部屋でしたが、絶対に邪魔していけないのは解りました。おじいちゃんは、生涯本気で山に登ってたんです。だから僕も山は辞められないと思っています」。鶴岡のおひな様は、閑静でいて稟とした風情があります。りっぱな生き方をされたお爺様のDNAを引き継いで、この春、男の子が誕生したと、彼から嬉しい便りをもらいました。当然、我が事のように喜んでしまった私です。
鶴岡のおひな様は4月にさくらと一緒に飾るそうです。それにしても日本って良いところがありますね。

・マンモグラフィによる乳がん検診・・・平成15年度千葉市乳がん検診が終わりました。例年になく受診される方が多く、マンモグラフィによる新しい検診体制が理解され始めたように思います。多かったご質問を見てみますと、「エコーとマンモグラフィはどちらが良いか」。一般に40代までの方はエコーが適していて、50代以上の方はマンモグラフィに適しています。それぞれに特性があって、その優劣はありません。両方を調べるのがより正確なのは言うまでもありませんが。「検診間隔はどのくらいか」。やはり1年に1回が基準です。危険因子の強い方は年に2回が良いでしょう。そうでない方は、2年に1回でも良いかも知れません。危険因子とは、年齢、血縁乳がん、ホルモン剤服用、肥満などを考慮して判断します。「放射線の被曝は?」。マンモグラフィの線量は、自然界の放射線量とあまり変わらず人体への影響は無視できると考えられています。必要以上に検査をすることはお勧めできませんが、触診のみの検診ではやはり十分とは言えませんね。
アメリカ、イギリスなどでは乳がん検診を70%以上の人が受けます。日本では15%程度。是非もないですね。

・宮内先生の海外出張記・・・・先月、乳がんの国際会議出席のためチェコに行きました。昔の有名な体操選手とドボルザーク、スメタナなどの音楽家(この二人の楽曲は日本ではおなじみ)や独立前のチェコスロバキアの名前くらいしか予備知識はなく訪れたプラハの街ですが、ロココ調とかゴシック調とか年代による建築様式の違いはあるものの、街並みは見事に統一され、電柱や建物横のけばけばしい看板も一切なく、まさに中世東欧のイメージそのものでした。有名なカレル橋とプラハ城には多数の彫像がならび、10世紀近くもの間、修理に修理を重ねた石造りの建造物が、重厚な歴史と宗教を感じさせます。歴史の古さなら負けないのに、木造建築だし地震も多いのでそもそもそんなに古い建造物は日本には残ってない? もし残っていても、私達はその場所も知らないし興味も薄い。歴史や宗教を感じさせるものが、私達の日常の視野からずいぶん遠のいている事を感じながら、プラハの街の石畳を一人歩いてきました。 
冬嗄れた東欧の歴史的街並みと宮内先生、絵になりますねえ。




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