診療所通信
        Clinic News Paper
No.35
2002/6/3

/                 川上診療所
  10代の若い人たちは、病院にあまり縁がないかも知れません。最近わたしは、ある女子高校の課題学習で、「がん」をテーマに選んだという若い人たちに接する機会がありました。彼女たちの発表は「初めての乳がん〜高校2年生の保健授業で」というものです。彼女たちはこう言いました「がんはただ治りにくい恐ろしい病気というイメージしかありませんでしたが、意外にも乳がんが私たち今の高校生にとって重要な健康問題であることがわかりました」と。さらに「私たちが感じたことは、医療現場からの予防に関する最新情報を知る機会や手段が少ない、あるいはほとんどないに等しいのが現状}とも発言しました。私たち医療者は、この若い人たちの問いに、正面から答える必要があります。今月開かれる千葉乳腺疾患研究会では、医師や看護婦だけでなく学校の先生や患者さんたち、みんなでこの問題を考えてみようと思っています。学術集会や研究会とは、そういうものです
研究会は6月22日に開かれます。彼女たちの生の発表もあります。誰でも参加できますよ。

・「診療手帖」は小さなカルテ・・・・みなさんは診療手帖をどのように使われていますか。この手帖には、診察の内容や検査の結果をそのまま記載しています。時間の関係もあって僅かな記述しか書けないのですが、回を重ねるごとに「カルテ」としての意味が深まってきます。「去年の今頃も、同じような症状が出ましたね」と言うように、手帖を見ながら診察をします。手帖にこんな事を書いて下さる患者さんもいらっしゃいます「毎日の生活は先月と変わりませんが、気候不順の日が多くありましたので、風邪を引かないように気をつけて過ごしました。先日、昭和12年の小学校卒業の同窓会が、町内民宿でありましたので、出席しまして、77歳になったのでいつまでも元気でと、乾杯して友達と楽しく過ごしました。私には命の洗濯の日和でした」。診察をする私としては、患者さんの健康状態がよーくわかる。実にうれしいことです。
「これからもお元気で、どうぞお大事におすごし下さい。」

・細胞検査士の荒川明子です・・・・ みなさん、細胞診検査ってご存じですか? ヒトの体の細胞がどういう形態をしているか、良性なのか悪性なのか、顕微鏡で調べます。がん細胞を探し出すことを目的に、細胞診は子宮がんや肺がんの検診でも活用されています。乳腺や甲状腺については、レントゲン、超音波検査で見つかった病変部に針を刺して細胞を採らなければなりません。そこで初めてしこりの実態がわかるのです。どんな性質の細胞で構成されているのか、またその時どんな反応を起こしているのか。ここで私が診る検体は、すべて患者さんが痛い思いをしながら得た細胞です。私はいつも細胞だけでなく、患者さんの顔も見ています。その時の体調も、しこりの形も・・・。私の望むそんな環境で、より精度の高い診断を目指して、これからも勉強を続けていこうと思っています。
荒川さんは「癌研」「県がんセンター」「大学病院」でトレーニングした逸材です。よろしくお願いいたします。




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