診療所通信
        Clinic News Paper
No.112
2008/11/1

/                 川上診療所
 以前、ある先輩の医師から「医者のストレスは2〜3日の温泉旅行じゃ解消しないね。それこそアフリカでライオンに追われるくらいの非日常的なやつじゃないと…。」と言われたことがあります。確かに医者のストレスは、年々増大してるんじゃないかと感じる今日この頃です。宮尾先生がカンボジアから帰ってきました。今回は短期間だったのですが、「世界の医療団」のフランス医師たちと共に地元の子供たちの治療に携わったそうです。来月はバングラデシュ、年明けからは再びタンザニアに行く予定だそうです。彼の話を聞いていると、僕のストレスも少なからず解消されるのですが…。先月お願いした「天晴くんを救う会」の募金は、目標金額の1億4000万円を達成したとのことです。ありがとうございました。天晴くんの心臓移植手術が無事成功することを心から祈るばかりです。一人の命を救うために多くの人の善意が確かに存在する、そのことが私のストレスを吹き飛ばしてくれます。
宮尾先生が不在の時のやりくりも、ストレスの種(?)ではありますが…。

野菜で食道がん予防・・・・厚労省から、野菜・果物摂取と食道がんとの関連が報告されました。食道がんのうち、扁平上皮がんは、飲酒・喫煙との関連が非常に強く、男性に多いのが特徴です。調査の結果(右表)、野菜・果物の高摂取グループでは、低摂取グループに比べて、食道がんのリスクがほぼ半減していました。とくに、キャベツ・大根・小松菜などの十字花科の野菜で関連がみられたそうです。また、喫煙と大量飲酒のハイリスクグループでも、野菜・果物をよく摂取しているグループは、相対危険度が、7.67から2.86に低下していたそうです。研究班は『食道がんの予防には、まず禁煙・禁酒、次に野菜・果物摂取が大切』と言っています。
なお女性は食道がんが少ないためか、報告はありませんでした。

増田先生のコラム・・・智恵子抄の中に、あどけない話という詩があります。作者高村光太郎と妻智恵子は一心同体のような二人でしたが、この詩では「智恵子は東京には空がないという…」しかし光太郎は「むかしなじみのきれいな空だ」と、彼女が何を言いたいかすらわからないでいます。私達は親しい相手ほど、全て理解しあえると思っていませんか?通じ合えないとき、期待していた分、強くガッカリしたり腹を立てたりしていませんか?夜が明けると太陽が昇ると思っている私達ですが、夜が明けても陽は昇らないかもしれないんです。昇らなければ灯をおこそう、自分の力で切り開いていくことを考えてみませんか?相手や状況の変わるのを待つことが全てではありません。太陽が昇らないかもしれないように、相手も状況も変わらないかもしれないんです。だから自分で灯をおこしましょう。おこした灯は、自分を暖め照らすだけではなく、周りも暖かく照らします。光太郎は狂った智恵子までも受け入れることで灯をおこし、結果として生まれた詩は、今も私達の心を暖めてくれます。そんな立派な灯でなくても、一人一人の小さな灯が集まれば大きな光になり、きっと自分も周りも優しく照らしてくれます。
先月に続き智恵子抄から。心が豊かになれば体も健康になる本を読んで下さいね。

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