診療所通信
        Clinic News Paper
No.110
2008/9/1

/                 川上診療所
 今年の夏は、皆さんいかがでしたか。僕は先月号にも書きましたように和歌山の友人の所に行って来ました。幸い彼は大丈夫なようで、深い緑の山と海の幸を二人で堪能することができました。宮尾先生はこの夏に富士登山に行ったそうです。夏でも指先がかじかむ山頂でのご来光は美しかった!とのこと。橋本先生はソウルに行ったのですが、講演など仕事中心だったのでのんびりできなかったようです。そんなこんなで僕はこの夏いろんな人と会いましたが、休み明け早々、県がんセンターの看護師Tさんが訪ねてきました。医療の集中や過疎を避けるため、各地域での医療連携が必要です。自分たちは実行可能なプランを考えていきます・・・と真摯に語ります。若々しく理想に燃える意志が、今の私が属している古い医療体制を変えて行く。かつて自分にもそういう時代があったなと複雑な気持ちで話を聞きました。当然その夜は、私たちの望む医療は何だったのか、旧友と杯を酌み交わすことになりました。
ペシャワール会で活躍された伊藤さんのご冥福を心からお祈りいたします。

 (男 性)
ベータ・カロテン濃度
( )内は各群の平均濃度
オッズ比
低 い( 3.3μg/dl)
2番目( 8.4μg/dl) 0.8
3番目(15.7μg/dl) 0.4
高 い(28.5μg/dl) 0.5

ベータカロチンと胃がん・・・厚労省からの研究報告です。右の表は血中ベータ・カロテン濃度を段階分し、低い群の胃がん罹患リスクを1とした場合の、各群のリスクを示したものです。男性ではベータ・カロテン濃度が高い群は、低い群に比べてリスクが半分です。研究班は「ベータ・カロテンが不足している場合は胃がんリスクが高くなる」と言っています。しかし「十分な量を摂取している場合には、それ以上を摂取しても胃がん予防は期待できない」とも言及しています。

増田先生のコラム・・・ある子供を亡くした母親が、お釈迦様に子供を生き返らせてほしいと頼みに行きました。お釈迦様は『過去に一人も死人を出してない家の芥子種を探しなさい』と母親に言います。母親は泣きながら一件一件、死人のない家はないかと探します、そして悲しみのない家などないと気付き、子供の死を受け入れていきます。この話で思い出す女性がいます。50歳の進行癌の患者様です。彼女の家族は、広島に住む高齢のご両親でした。進行癌の再発のリスクなどをお話をしようとしたところ『両親は高齢で、私より先に逝く可能性もあります。これからの日々、離れて生活する私のことを心配して過ごさせたくありません。再発して入退院が繰り返されれば言葉にしなくても自然と覚悟をしていくはずですから』と事実を伝えないよう頼まれました。私はこんな優しい嘘があることを知りました。3年後、ご両親様に見守られた最期は穏やかでした。あるとき普通に親しくしていた同僚に『やな奴だって思ってたけど誤解だった。ごめん!』と突然言われ、同僚は謝ってスッキリしていましたが、私は複雑、教えてくれなくてもよかったのにと思いました。嘘をつくときは、つき通す強さも必要ですよね。
医者のウソとは…、増田先生のコラムはいつも女性らしく繊細ですね(院長)

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