診療所通信
        Clinic News Paper
No.100
2007/11/1

/                 川上診療所
 この通信も100号になりました。振り返ってみれば、開院したてのころから「等身大の医療をめざす」みたいな素朴なことを、稚拙にもここには書いて来たような気がします…。私の友人の佐貫先生は「神経解剖に基づいた乳房手術の局所麻酔法 」という研究発表をしました。その論文は最先端の医療とはちょっと違うけれど、全身麻酔の設備がないところでも、乳がんの手術ができるようにと考えた志の高い研究だと私は思います。彼は若いころ(今も充分若いですが)熱帯医学を勉強していたので、世界の大半の医療が、今の日本の医療とずいぶん違うということを知っているのでしょう。私の親友・宮尾陽一先生がこの12月にアフリカ(タンザニア)に行くことになりました。「雨期でマラリアも多いし、一人で何ができるか不安だよ」と言いつつも、いわゆる不安とは程遠い笑顔で語ります。
さて、私はこの日本でこれからどういう医療をしていったら良いのか自問します。そしてその答えは、やっぱりいつものように、普通の医療を続けていくことなのだ、と今日も同じ思いに至る次第です。
今月、ボクは54歳になりました。というか、なってしまいました…。

がん死亡率・・・・右の表は平成18年の主な部位別にみた女性のがん死亡数および死亡率です(人口10万対)。胃、大腸、肺は、総じて死亡数が多いです。それに比べて子宮、卵巣はあまり多くないようです。乳房と肝臓と膵臓は、数字の上でほぼ同数ですが、患者数は乳がんの方が多いので、治癒する患者さんの数も乳がんの方が多いと言えます。一般に治癒率の高いがんほど検診が有効と考えられます。


祐有子先生のコラム・・・・すっかり秋らしい毎日になりましたが、皆さん、いかがお過ごしでしょうか。今回は、10月で3歳になった姪の話をしたいと思います。初めて彼女が言葉を覚えたころ「きれー」「美味ちい」「可愛い」、何を見ても褒め言葉でした。一緒にいると子供の純真な姿に癒されたものでした。ところが、近頃は知恵がついてきて「いらない」「いや」などと否定的な言葉が多くなってきました。これはこれで純真な発言なのでしょうが、どうも面白くない気分です。言葉というものは、簡単に人を不快にできることに気付かされます。聖書に「人の体から出る物に汚い物はなく、人の口から出る物が一番汚い」とあります。また日本でも「沈黙は金、雄弁は銀」などと言われています。昔々の時代から、人間は同じようなことをしているようです。でも、言葉を使わず沈黙を守るより、もっと良い方法があるのではないでしょうか? 人を不快にも、また喜ばせることもできる言葉、他のどんな動物にもない人間の特権です。ついつい簡単に口にしてしまっていた言葉ですが、もっと大切にして生きていきたいなと思いました。
ちょっぴり2歳のころの姪が懐かしいです。(増田祐有子)

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