Q14. 2022年頃から縮毛矯正は子宮がん発症リスクを高めると
     ニュースをみました。カラーリングやパーマなど、
     乳がん発症リスクがあがるのでしょうか?
 
A. 椎名先生
Sister Studyは米国の国立衛生研究所による乳がんの原因となる環境、遺伝子、経験を同定するための大規模なコホート研究であります。
2003−2009年までに登録された35−74歳の女性が対象となり、健康状況と経験に関する様々なアンケートに答えることになっています。
最近、ニュースとして報道されているのはこのSister Studyの結果が発表されたことによります。これらの論文を実際に読んでみました。

1)Sister Studyでは登録前の1年間にカラーリング、縮毛矯正、リラクサー、パーマの使用経験と頻度についてアンケートがなされました。
子宮がん発症について縮毛矯正は1.80倍のリスク上昇があり、さらに年4回を超える頻度で施行した場合は2.55倍のリスク上昇が認められました。カラーリングやパーマに関しては子宮がんの発症と関連はありませんでした。

2)乳がん発症について縮毛矯正は1.18倍のリスク上昇と報告されています。
さらに年4回を超える頻度で使用した場合、リスクは1.31倍に上昇しました。
他の人に行うことに関しても1.27倍のリスク上昇があったようです。
カラーリングの使用に関しても永久染毛剤でわずかながら1.09倍のリスク上昇がありました。

3)また10-13歳の思春期の使用頻度との関係を調べた別の論文では縮毛矯正とパーマは閉経前の乳がんの発症をそれぞれ2.11倍、1.55倍に増加させました。
しかし閉経後の乳がんの発症には関わりませんでした。

これらの論文からは乳がんのリスクは子宮がんほどではないこと、縮毛矯正はカラーリングやパーマよりリスクは高いことがわかりました。
しかし、論文をよく読むとこれらは個人で使用したものの検討であること、また年代が2003-2009年頃1)2)(思春期の検討に関して言えば1938-1987年頃となる3))の話であることを念頭に置く必要があります。

毛髪関連の化学製品にはホルムアルデヒドを放出するものやパラフェニレンジアミン、4-アミノビフェニルなどが含まれており、これらが発がんや内分泌攪乱に関わっているのではないかと言われています。現在では徐々にこれら化学物質の含有を制限する流れになっていますが、各国ごとに対応は異なっているようです。




発がんを心配する意味ではこれら化学製品の使用を避けるのが良いと思います。
しかし、食品や放射線など現代において全てのリスクから避けて生きていくのはなかなか難しい時代となっているのも事実です。また美容や外見、ファッションに対する思いは人それぞれであり、それを大事にするのも人間ならではと思います。
リスクを知った上で上手く生活に取り入れていくことが大事であると思います。
例えばこれら毛髪関連製品の場合は、個人使用ではなくサロンでプロに行ってもらうこと、頻度を減らすこと、思春期の頃には使用しないこと、より安全性を重視している製品を選択することでかなりリスクは減るのではないかと思います。

1)J Natl Cancer Inst114(12) 1636-1645 (2022)
2)Int J Cancer147 383-391(2020)
3)Int J Cancer148 2255-2263(2021)

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