がんと食生活2

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緑茶はがんに効く?

緑茶ががん抑制に効果?という話をご記憶でしょうか?
この類の話はある日いっせいに新聞などで報道されたあとはさっぱり話を聞かない状態になりがちですが、緑茶の抽出成分(GTE)を使った実験はその後も日米で進められているようです。
日本では現在埼玉県立がんセンター研究所が県職員にGTEの錠剤を飲んで貰う、などの実験を行っていて、増殖因子や促進因子ががん細胞に入り込むのを防ぐとされる緑茶の渋み成分カテキン類の効果を測っているようです。アメリカでは二年前から臨床実験が始まり、現在は偽の薬を含まないホンモノの錠剤のみを飲む第一段階で、今年から偽薬を含んだ第二段階の実験に入り、数年かけて続けていくとのことです。
最初に緑茶の効果が報告されたのは80年代の初めだそうですから、実に20年近くもの間さまざまな実験を繰り返していて、なおかつまだはっきり結果が出ないということは驚くほどの気の長さと言えますが、こうした抑制効果などの実験というのはそもそもはっきり結果を示すことが難しいものなので、それも仕方ないのでしょうか。この物質や食物・飲み物には発ガン性がある、という負の効果はある意味「わかりやすい」と言えますが、人間が食習慣の中で自然に摂取しているものの多い少ないが発ガンに影響を与える、というのはいかにもわかりにくいですよね。
そのため実験では、

  • 対象者を2グループに分け、調べたい栄養素を摂る摂らない以外の条件を出来る限り同じにして、栄養素を摂らないグループには偽薬を使う(無作為化比較試験)
  • 対象者を多数、かつ長期間にわたって調べる(コホート研究)

などの方針が取られますが、条件を同じにすることが難しかったり、他の栄養素の影響などを考慮しなければならなかったりして、リトマス試験紙のようにはっきり結果でわかることはありません。いろんな方向、方針で何種類もの実験を繰り返して、結果を積み重ねて、ようやく効果があるのかどうか、が分かってくるという具合なので、どうしても時間がかかる、というわけです。
「○○にがん抑制効果!」などとセンセーショナルに報じられても、その後消えてしまったり、まったく逆の話が出てきたりしますが、それはなぜかと言うと、抑制効果!と報告した論文の中で用いる実験結果が短期間の実験によるものだったり、実験方法の種類が少なかったりして、すぐ別の結果を発表したり、実験の不備を指摘されてしまうことなどがあるからです。
この緑茶成分の効果についてはかなり期待が持てそうな気配ですが、アメリカでの第二段階の実験結果が出てくるのも数年後ですので、はっきりとした結果が出るまでにはまだまだ時間がかかりそうですね。

参考:◆緑茶でがん予防 本当に効く?〜日米で検証進む/食生活とがんに多様な関係(朝日新聞'99/09/30)

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