aoilogo2019年1月藍生主宰句
狐 火
黒田杏子


八十歳十一月の鉦叩
寒月皓然本郷徘徊二人
富有柿会津身不知次郎柿
ひひらぎの花母の句を憶ひ出す
関東の出番の葱に刃を入るる
九條葱美し関東の葱甘し
関東の待てば出番の葱甘し
  寂聴先生 十一月十四日
法臘四十五返り花あまた
そば掻きや若き日の父母讃へ合ひ
神無月ひと日ひと日を歓びて
狐火の列那須野ケ原の記憶
乾つ風熄む狐火の粛粛と
狐火の紅蓮たちまち大紅蓮
はるかより来る風音と狐火と
狐火や疎開難民児童群
狐火の列立ち止まる夢の奥
狐火や灯火管制解かれねど
狐火の朱と紅と眼に仕舞ふ
狐火の小川芋銭の筆なりけり
狐火の紅蓮終生まなうらに


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