寂聴先生米寿
書き抜いてこの世を踊り尽くさんと
飛魚と離島をめざすさみしさよ
鮮らしき両眼飛魚の飛沫
寂庵といふ草の庭鉄線花
奥山の新樹となりて我を待つ

飛魚や家出もどきの荷をつくり

新樹にも奥の闇あり来いといふ

初夏といふ爪先に触るるもの

とびうをの光を糧として飛べり

ぼうふりの命の水を捨てにけり

飛魚の焼かれて鰭を失くしけり

鉄線花濃し六角に獄舎跡

耳塞ぐ耳のくらやみ新樹風

日々に増ゆややの言の葉柚子の花

汐干狩けむりのやうに人がゐる

夕風に葉のくつろげる新樹かな

白粥や日差せば余花のまた散りて

老鶯となりそこねたる一羽かな

薔薇の香に合鍵ひとつ貰ひけり

天空仰ぐ飛魚のとばぬ間に

窯出しの狸先ず浴ぶ新樹光

苔の花をとこを待たず風を待つ

白牡丹この世の外のこと知らず

焚く護摩の炎激しく鉄線花

今阪　雅子

井崎ユキ子

畳谷　智代

滝川　直広

清水　憲一

安土八重野

曲子　治子

河辺　克美

橋本　榮冶

植田　珠實

滝川　直広

橋本　榮冶

伏見　玲香

太田　智子

今阪　雅子

永井　雪狼

河辺　克美

畳谷　智代

大出　勝重