aoilogo2008年8月藍生主宰句
ほたる川
黒田杏子

 犬吠ゆる屋敷の裏のほたる川
 田の中の一軒灯る初蛍
 昼酒のほのかに残る初ぼたる
 ほたる火に雨戸をたてておばあさん
 卓袱台の老女にきたる夕蛍
 夕蛍ひとり暮しのひとり膳
 一燈の下媼座す蛍の夜
 くろばねの夏至のほたるの一軒家
 夕蛍ちちははのかほ兄のかほ
 蛍火や跼めば灯る一軒家
 くろばねの夏至の源氏のほたるの木
 竹やぶをほうたるの川とどまらず
 ほたる火や疎開児童も七十歳
 母のこゑなほわれを呼ぶほたる川
 くろばねに夏至のほたるをみて睡る


9月
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