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平成12年10月7日

お し ら せ

レプトスピラ症発生に関する情報


社団法人横浜市獣医師会


 
届け出伝染病 "レプトスピラ症" 発見される!

聞きなれない病名かも知れませんが、先頃レプトスピラ症という病気が横浜市(保土ヶ谷区)内において発見されました。この病気はヒトにも感染を起こす危険性を持っているためその発症を見つけた場合は家畜保健所に届け出なくてはいけないという届出伝染病(人畜共通伝染病)の指定を受けている伝染病です。

今回発病が確認されたのは1頭だけですが、予防注射を受けていない19頭の他の犬を調べてみたところ、何とそのうちの14頭までが "抗体陽性" ・・・つまり「病原菌に接触したことがある!」ということがわかりました。

レプトスピラ症というのはヒトでは "秋疫" とか "七日熱" あるいは "天竜熱" などの名前で呼ばれる風土病として知られており一部地域で散発的に発生が認められていたものですが、近年横浜近郊での犬における発生は報告されていませんでした。この度、市内において発症例と付近の犬に自然免疫抗体が認められたということは、「実は、そこに病気が在る!」ということが証明されたということになるわけです。

そこで、飼い主さんとその愛犬をレプトスピラ症から守るため、病気の説明と感染予防のための対応の仕方をご紹介します。

 
病気について

【原因菌】

レプトスピラ症(Leptospirosis)は、スピロへーター科・レプトスピラ属の細菌によって引き起こされる人畜共通伝染病です。

【感染動物】

感染は "犬" だけでなく、牛、馬、豚、山羊、羊などの家畜をはじめ(ネズミやコウモリ、キツネなどの)野生動物を含むすべてのほ乳類に感染すると考えられています。

【伝播】

まず、病気(病原体)が伝搬する理由は・・・この病気に罹っている動物が排泄している尿の中に病原菌(レプトスピラのスピロへーター)が含まれていることです。

つまり、菌の伝染はレプトスピラ症に罹っている動物の尿中に排泄された病原体を直接あるいは間接的に取り込むことによって成立します。つまり、尿で汚染された水や食物を摂取することで起こるということですが、ヒトの場合は土木作業や農作業中に接触した土や水から感染したということも起こっているようですし、「傷口からの侵入もある!」という報告もあります。

付け加えますが、発病者だけが病原菌を排出しているわけではありません。すでに病気に罹っているにもかかわらず自分は発病することなく病原体だけを体の外に排出するという(迷惑な)役割を担っているものもいるのです。

この病気を語る場合、媒介の主役は(犬ではなくて)ネズミであるということが言われています。この病原体はネズミに対しては症状を起こすような障害をもたらさずに増殖(不顕性感染)することが知られており、それらが尿中に排泄されることで広範囲に汚染が広がるということがわかっています。

一番困るのはこのように "症状がなくて病原体だけを排出している" 場合です。このようなものを "キャリアー(CARRIER)" といって "病原体を持って歩いて・・・排出して広げる奴" として扱うのですが、見た目が元気なだけにとてもやっかいな存在です。

もちろんこの病気を持って歩くのはネズミだけではありません。他のほ乳類の場合でもレプトスピラ症に罹ってしまった動物の尿中には病原体が大量に含まれているわけです。ですから、「ネズミは居ないから大丈夫!」というわけにはいきません。

今回の場合も犬がレプトスピラ症に罹っていてその尿の中に病原体が発見されています。

【発病】

潜伏期間は 1〜14日程度ですが、若い個体や十分な免疫を持たない(予防接種をしていない)個体では「重篤な感染を起こしやすい!」ということが言われています。

なお、猫の発病はまれなようですが、たとえ発病しても軽い症状で済むか、不顕性感染であることが多いようです。

【症状】

一般的な症状としては次のようなものがあります。

体温上昇
食欲不振
元気消失
おう吐
脱水症状
さらにそれに伴っていくつかの症状型が見られますが、おおむね
(主に犬の場合ですが)
粘膜の潰瘍形成(歯ぐきや舌などからの出血)
粘膜充血
ぶどう膜炎(眼球の炎症)
血色素尿(赤色のオシッコ)
黄疸
筋肉の脱力
腎機能不全
肝機能不全
などです。
ただし、犬の場合は肝不全や腎不全が重度に起こりやすくそれによって(他の家畜に比べて)死亡率が高いことが知られています。

【診断】

特殊な方法による顕微鏡検査で確認することができる場合もありますが、うまくいかないことも多く、確定診断のためには "抗体検査" をすることになります。少し時間が必要ですが、有力な情報を得ることができます。

【治療】

抗生物質の投与と体全体のバランスを維持するための支持療法を行います。

実際の治療に当たっては綿密な検査のもとに治療方針を決定しますが、(困ったことに)腎臓や肝臓のダメージの状態によっては一命に係わることもありますし、障害が生涯にわたって残ってしまうこともあります。

 
対策と予防

【日常の対策】

 飼い主さんはこの病気の情報に関して必要以上に神経質になってしまってはいけません。
 きちんとした管理と予防をすることで十分に対応できるということを先ず認識してください。
 レプトスピラ症は犬やヒトだけでなく家畜に被害をもたらすこともありますが、ここではとくに犬とヒトに関しての説明をします。

公園や広場などたくさん犬が集まるところへの出入りをなるべく控えましょう。
オシッコなど排泄物の始末をした場合は、きちんと(しっかりと)手を洗うようにしましょう。
口移しでものを食べさせたり、知らない犬に口や手を舐めさせることをやめましょう。
レプトスピラの菌は乾燥や熱に弱い(40℃ 30分で死滅します)ので、消毒をする場合は太陽光に当てたり乾燥させることでも有効です。また熱湯消毒や多くの消毒剤の使用も効果的です。
疫学的には野ネズミなどの媒介動物を駆除するなどの対応が重要です。
発病してしまった動物はかなり長期間に渡って原因菌を排泄し続けることがわかっていますので、きちんと隔離を行い検査を継続する必要があります。

【予防の実際】

直接的な予防法としてはワクチンが有効です。
すでにレプトスピラ症に対応しているワクチン(たとえば「7種混合ワクチン」などと言われているもの)を接種している場合、愛犬の体は「レプトスピラ症に対する対策が済んでいる。」と考えて差し支えありません。
もしも、「5種混合ワクチン」などレプトスピラ症に未対応のワクチンを接種している場合には追加接種等の対策が勧められます。
過去にレプトスピラ症に対応しているワクチン(たとえば「7種混合ワクチン」などと言われているもの)を接種している場合でも、過去1年以上間隔が開いてしまっている場合には追加接種をお勧めします。
「まったく予防注射というものを射ったことがない!」という場合はできるだけ早期にレプトスピラ症に対応しているワクチン(たとえば「7種混合ワクチン」などと言われているもの)の接種をお勧めします。
予防注射の説明、有効期限、費用など詳しい内容に関しましては、かかりつけの動物病院にご相談ください。
予防注射というものは「射った!」からといって "全ての動物に有効な免疫量を授与することができる" というわけではありません。その効果は対象になる動物の年齢や飼育環境や予防注射の接種間隔などの様々な条件によって左右されてしまうという・・・とても微妙な要因を含んでいるのです。したがって、「予防注射を射ってある!」からといって「その病気には罹らない!」という保証を得たものであるとは考えないでいただきたいのです。あくまでも予防注射は愛犬の伝染病に対する予防的(保険的)対応策であり、その効果は予期できないほどの濃厚感染や体調不良の状況によっても払拭できるほどの絶対的な抑止力ではないことを認識しておいていただきたいと思います。








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