睡眠
大脳はあらゆる情報を適切に分類、処理し、同時に認知したり記憶したりといった複雑な活動を休むことなく行っています。そのためエネルギーの消費量も膨大です。過大な負荷がかかれば簡単にオーバーヒートしてしまいます。そのような脳の疲労をとり、リフレッシュさせるものが睡眠です。もちろん睡眠はからだの休息でもあります。しかし、からだを動かした後の単なる肉体疲労は、横になるだけでもとれますが、脳の疲れからくる精神疲労は、睡眠なしには回復されないのです。
睡眠を引き起こすためには、2つのメカニズムが働いているといわれています。
○疲れたから眠る(恒常性維持機構)○
より深い睡眠中に、からだの疲労回復と修復機能に大きな役割を果たすホルモンが分泌されるといわれています。そのため、睡眠不足が続くと、恒常性維持機構が働き、より深い睡眠を取り戻すように睡眠の質や量を調節しているといわれています。
○夜だから眠る(体内時計機構)○
私たちの活動、休息、睡眠という基本的な行動や生理機能のレベルは、体内時計に支配されています。
体内時計の周期は25時間ですが、光・音・食事などの情報により、24時間周期となるよう調節されています。そのため、不規則な生活や海外旅行での時差などで、体内時計がうまく調節できず、睡眠リズムが乱れることがあります。
私たちの眠りは、2種類の睡眠で構成されています。
レム睡眠・・・からだの睡眠
浅い眠り(睡眠中の脳波は覚醒時と類似)
全身の筋緊張がゆるみ、力が全く入らない状態
夢をみる
ノンレム睡眠・・・脳の睡眠
深い眠り(途中で起こされると、寝ぼけることあり)
夢はほとんどみない
※ レム=REM(Rapid Eye Movement:急速眼球運動の略)
睡眠の周期はレム睡眠とノンレム睡眠の繰り返しです。まず、段階1〜4からなるノンレム睡眠があらわれ、それに続いてレム睡眠があらわれます。これが1セット約90分で4〜5回繰り返されますが、周期を重ねるにつれ、ノンレム睡眠の時間は短くなり、レム睡眠だけになります。そのため入眠後約4時間で脳の疲労回復はほぼ完了しているといわれています。
○規則正しい生活習慣○
・同じ時刻に毎日起床し、朝日を浴びて、体内時計をリセット
休日の朝に平日より2時間以上遅く床で過ごすと、睡眠のリズムが乱れる
・朝食は必ず摂取
朝食を摂ることで脳が刺激され、覚醒モードへスムーズに移行する
・昼寝をするなら、15時前の20〜30分
昼寝時間が長すぎると深い眠りに入ってしまい、起きたときにぼんやりしてしまう
15時以降の昼寝は、夜の睡眠の妨げになる
○寝室の環境○
・快適な室温は、夏は25度、冬は18度前後、湿度は50〜60%
エアコンに頼りすぎず、夏は除湿器、冬は加湿器を上手に活用してみましょう
○入浴○
・37〜39℃のぬるめのお風呂でリラックス
熱いお風呂は交感神経を刺激して、脳もからだも目覚めてしまうので注意
・入浴は就寝の1時間前までに
体温が下がりかけてきたときが眠りに入りやすい
○食事と飲み物○
・就寝前に、コーヒーなどカフェインを含むものの摂取や喫煙を控える
・就寝の2時間前には食事をしない
就寝直前の食事は、胃の消化活動のため、覚醒してしまう
・空腹すぎるのも、覚醒刺激になるので注意
ホットミルクは空腹感を和らげてくれ、また眠りにも入りやすくする
牛乳に含まれるトリプトファン(アミノ酸の1種)が体内に入るとセロトニンという睡眠物質に変わるため
・眠れないからといって、アルコールに頼らない
飲酒により寝つきはよくなるが、眠りは浅く、質のよい睡眠とならない
○適度な運動○
・適度な疲労が眠りを誘う
就寝直前の運動は脳を刺激し、寝つきを悪くするので注意
『眠れない』と一言でいっても、不眠にもいろいろなタイプがあります。主に下記の4つのタイプに分けられますが、いくつかのタイプが混在している場合もあります。
タイプ | 特徴 |
入眠障害 | 布団に入ってもなかなか寝付けない 不眠を訴える多くの人がこのタイプ |
中途覚醒 | 夜中に何度も目が覚め、再び寝付くことが難しい 眠りが浅く、ぐっすり熟睡した満足感がない |
早朝覚醒 | 朝早く目覚めてしまい、まだ眠りたいのに眠れなくなる 高齢者に多い |
熟眠困難 |
睡眠時間のわりには、朝起きたときにぐっすり眠った感じがしない |
不眠の治療として、薬物療法があります。睡眠薬には、超短時間、短時間、中間、長時間作用型と効き目が持続する時間によって、分類されます。これらを不眠のタイプによって医師が処方していきます。睡眠薬は怖いというイメージがあるかもしれませんが、医師の指示を守って服用すれば、副作用の心配もほとんどありません。
ただし、よく効くからといって、自分の薬を他人にあげたり、他人からもらって服用したりということは絶対にしないで下さい。