アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎ってなに?

アトピーとは、ラテン語で「奇妙な」「とらえどころの無い」「その他の」などの意味をもちます。湿疹を分類しようとした際に、遺伝的素因とアレルギーが関わっているが、わけのわからない湿疹を「アトピー性皮膚炎」と名づけたのです。

アレルギー的な原因によるものと、そうでない原因によるものがあり、近年は非アレルギー的側面が重要視されているようです。
つまり、アトピー性皮膚炎の患者さんでは湿疹がある部分だけではなく、湿疹が無い部分でも皮膚角質層のセラミド含有量が少ない事が明らかとなり、その結果、水分保持能力が低下しているためにバリア機能が下がり、外部からの刺激ですぐに湿疹を生じやすくなると考えられています。
アトピー性皮膚炎では、細菌やウィルス感染症を合併しやすいことも、それを裏付けています。

定義としては、
『憎悪・寛解を繰り返す、痒みのある湿疹を主とする疾患であり、その多くがアトピー素因を持つ』 となっています。


どんな人に多いの?

乳児期から幼少時期にかけて発症する例が大多数で、二歳までに発症する例が80%以上を占めるといわれています。
わが国においては現在なお増加傾向にあり、発展途上国よりも先進国の方が発症率が高いという事実から文明病の一つとも言われています。
また、農村より都会に多いという傾向もあり、地方出身者が大都市圏に住み始めるとしばしばアトピー性皮膚炎を発症したり、症状が悪化するようなことも起きています。

他の皮膚疾患とどう違うの?

まず、痒みがあること、そして各年齢層に特徴的な湿疹が左右対称に発生し、慢性・反復性に経過する湿疹変化なので他の皮膚疾患とは鑑別することができます。アトピー性皮膚炎の子供さんのお母さんにはしばしば手湿疹の症状を見ることができ、これもアトピー素因を示しています。
小児では頬の部分に円形の白っぽい局面を生じることがあり、(俗にハタケと呼ばれますが)これはアトピー性皮膚炎の一症状と考えられています。


各年齢層の特徴↓
時期 湿疹の部位
乳児期 頭、顔に始まり、しばしば体幹、手足に下降する
幼少時期 首、手足の関節の裏
思春期・成人期 上半身(顔、首、胸、背)に湿疹が強い傾向

どうすれば治るの?

★原因と悪化因子を突き止めることとその対策
★保湿などのスキンケアによって異常な皮膚機能を補正する
★薬物療法(主に外用療法)
の三本柱で行って行く場合が多いです。
痒みを抑えて、掻き毟るのを防ぐ事も皮膚の状態を悪化させないためにも非常に重要で、抗アレルギー剤もしくは抗ヒスタミン剤による内服療法を併用することも多くあります。

ステロイドの塗り薬は怖いんじゃ・・・??

ステロイド外用剤の副作用が誇張され、いつの間にか怖いものであるという実体のない概念が植え込まれた事により、ステロイド外用薬をしようする必要がある患者さんも使うのをためらうようになっています。
しかし、適正な強さの塗り薬を必要な部位に塗ることで、全身的副作用が出現することはまずありません。勝手な判断で使用を中止してしまうことで治療の効果が無いばかりか、更に悪化することもありえますので医師の指示通りに使用していただくことが大切です。

スキンケアってどうするの?

皮膚を清潔に保つ
皮膚の保湿
その他
アトピー性皮膚炎の症状の悪化や再燃を防止するためにスキンケアは重要な役割を担う物あり、炎症部位においても、薬物療法の効果を高め、更なる悪化を避ける為に重要性は大きいです。ただ、スキンケアのみでは限界があるので、正しい薬物療法のバックアップ的存在としてスキンケアがあることを忘れてはなりません。

ストレスって関係あるの?

心理的ストレスはアトピー性皮膚炎の悪化因子であり、ストレスが免疫系に影響を与えて炎症反応を悪化させたり、神経系に影響を及ぼして痒みを増強させるといわれています。最近ではストレスが嗜癖として掻き毟る行動を引き起こし、アトピー性皮膚炎の悪化を招く事が注目されています。
子供の場合、学校や家庭内での対人関係からストレスを生じる事が多いようです。例えば兄弟姉妹がいて、親に甘えたい、親の注意を引きたいなどの気持ちから掻き毟る行動にでて、症状が悪化してしまうばあいがあります。この場合、むやみに「ひっかくな」としかる事はかえって逆効果です。子供のアトピー性皮膚炎を親が気にしすぎるのもよくありません。そのような雰囲気を子供は敏感に察知して、知らず知らずのうちに神経質になってくるものです。
おおらかに構えて、スキンシップと愛情のある言葉を子供にかけてあげるのが大切です。