病院でもらった血液検査の報告書には英語の略語とカタカナの意味不明の単語がたくさん羅列していますね。お医者さんに聞きたいけれど、忙しそうにしているとなかなかきけない、でも検査値にHLなどの記号がついていれば気になりますね。検査値にまたはH と書かれている場合は基準とされている値よりも高いことを、またはL と書かれている場合には基準とされている値よりも低いことを意味しています。それでは英語の略語やカタカナの単語は何を意味するのか、検査ごとに簡単に説明していきます。

はじめにお読みください 
                         
検査データの解釈の仕方はいろいろあり、ここに書いてあることはほんの一部にすぎません。自己判断はしないで検査値に不安がある場合は必ず、医療機関で相談して下さい。

1. 肝検査  ・・・アルブミン・グロブリン・AST(GOT)・ALT(GPT)・ LDH・ALP・γ-GTP・コリンエステラーゼ・総ビリルビン・直接ビリルビン・間接ビリルビン
2. 糖尿病   ・・・血糖値・HbA1c  
3. 脂質検査  ・・・ コレステロール・中性脂肪(トリグリセリド)・HDLコレステロール・LDLコレステロール
4. 腎検査   ・・・クレアチニン・尿素窒素(BUN)
5. 膵臓検査  ・・・アミラーゼ・リパーゼ・白血球
6. 甲状腺検査 ・・・TSH・T3・T4・CK(CPK)


肝検査

キーワード: アルブミン・グロブリン・AST(GOT)・ALT(GPT)・
                 LDH・ALP・γ-GTP・コリンエステラーゼ
                 総ビリルビン・直接ビリルビン・間接ビリルビン

                 
肝検査の指標
  肝臓は体に必要なものを作り出し、いらなくなったものを分解したり、排泄されやすいかたちにかえたりと、一言でいえば人体の化学工場のような仕事をしています。
よく、検査項目中にみられる「アルブミン」や、「αグロブリン」などは血液中に必要な蛋白質として肝臓でつくられています。つまり肝臓の状態が悪いと、これらはつくられにくくなるため値は低くなります。
  また、肝臓の細胞が弱ったり、死んでしまったりすると、細胞の中にあった酵素が血液中にもれでてきます。酵素は他の臓器にもあるのですが、これらの中で特に肝臓に多い酵素が肝検査の指標として用いられます。AST(GOT)、ALT(GPT)、LDH、ALP、γ-GTP、コリンエステラーゼなどが、それにあたります。

なぜこんなにたくさんの検査をするの?
 
1つか2つの検査値だけで肝臓の障害がわかるのでは、と思われがちなのですが、そうではありません。それぞれの酵素で検査する目的がちがうのです。先にあげた酵素は大きく3つのグループに分けられます。1つは、肝細胞がダメージをうけたときに血中に漏れ出てくる酵素でAST(GOT)やALT(GPT)、LDHがこのグループにはいります。それからもう一つは、肝臓内の胆管の細胞に存在して胆管が塞がったときに逆流して血中に漏れ出るグループで、ALPや、γ-GTPがこれに属します。そして最後のグループが肝細胞で合成される酵素でコリンエステラーゼがこれにあたります。
 つまり、、、
    肝細胞が破壊されているときはAST(GOT)やALT(GPT)、LDHの値が上昇し
    胆管がふさがったときには、ALPやγ-GTPの値が上昇します。
    そして体に必要なものをつくる機能が弱まるとアルブミンやコリンエステラーゼの値が低下します。

ビリルビンって何?
  
ビリルビンは赤血球の分解された成分からつくられます。赤血球は壊れるとその一部がビリルビンになり、肝臓を通る最中に排泄されやすい型に変えられるのですが、肝臓を経る前のビリルビンを間接ビリルビン、肝臓で形の変えられたものを直接ビリルビンとよんでいます。そして、直接ビリルビンと間接ビリルビンの合計したものを総ビリルビンといいます。
つまり、、、
    肝細胞が破壊されていると、間接ビリルビンは肝臓で型を変えることができず排泄されないので、血液中の間接ビリルビンは増えてゆきます。
    また、胆管が塞がる病気では肝臓で排泄されやすい形に変えられた直接ビリルビンが胆管を流れ出てゆくことができずに血液中に増えてゆきます。
 このように、増加しているビリルビンの型を調べることによって、どこに障害があるのかが推定できるのです。直接ビリルビンでも間接ビリルビンでも血中に増えれば、白眼部分や肌の色が黄色くなる「黄疸」という症状があらわれます。

     


γ-GTPはアルコール摂取で上昇する酵素。

 γ-GTPは胆管にある酵素ですが、アルコールやある種の薬剤によって、さらに酵素がつくられるという特徴があります。ですから、胆道の閉塞によっても上昇しますが、お酒をのんでも上昇します。この酵素は通常の2倍〜4倍程度の上昇では2週間程度の禁酒をすると約半分くらいに下がります。しかし、アルコール性の肝炎や、脂肪肝になっていると2〜3ヶ月禁酒しないと正常範囲には戻りません。
健康診断でγ-GTPだけが1〜2倍程度上昇の場合は禁酒、あるいは週に1〜2日の休肝日を、そして2〜4倍以上の上昇では医師に相談に行くようにしてください。
また、他の酵素の値も上昇しているようであれば、より詳細な検査が必要です


                                                                  


糖尿病の検査                            

 キーワード:血糖値・HbA1c  


糖尿病はどのように診断されているのか?
 血糖値は食事の影響を受けやすいのですが、糖尿病の基準としては、ふだんの血糖値が200mg/dl以上、空腹時血糖値が126mg/dl以上であれば糖尿病と診断されます。

糖尿病の検査の1つであるHbA1c(糖化ヘモグロビン)って何?
 血糖値が高くなると、赤血球の成分であるヘモグロビンとブドウ糖という糖分がくっついて糖化ヘモグロビンになります。血糖値は食事の影響を受けやすく、日内の変動が激しい指標なのですが、HbA1c(糖化ヘモグロビン)は赤血球が糖化されてから壊れるまでの、だいたい1〜2ヶ月前の平均血糖値を反映する指標になります。
つまり、HbA1c(糖化ヘモグロビン)では食事での高血糖の影響がないわけなのです。

糖尿病と高脂血症の関わり
 血糖値が上がると、体は糖分を細胞に取り込んで消費しようとしたり、肝臓や組織にたくわえさせたりするインスリンというホルモンを膵臓から出すことで血糖値が上昇するのを抑えようとします。また、このインスリンというホルモンは糖代謝だけでなく、脂質の代謝においても重要な役目を果たしています。このため、糖尿病によってインスリンが欠乏すると、血液中の中性脂肪やコレステロールが高くなり、高脂血症になりやすくなります。
 


脂質検査        

  キーワード:コレステロール・中性脂肪(トリグリセリド)
                 HDLコレステロール・LDLコレステロール

コレステロールと心疾患の関係は疫学調査で実証されている
 コレステロールと虚血性心疾患、心筋梗塞がその代表ですが、この発生率との関係が下図のようになることが調査されています。つまり、コレステロール値が 200〜220mg/dlより高値になると、虚血性心疾患の発生率が高くなり、相対危険率はコレステロール値 300mg/dlでは約 3倍もの高率になります。


コレステロールと中性脂肪(トリグリセリド)
 コレステロールも、中性脂肪(トリグリセリド)も体内にある脂肪の一種であり、LDLや、HDLといわれる運搬体によって肝臓から体の必要な部分へ血液中を流れていきます。いわば、LDLやHDLは船、コレステロールや中性脂肪(トリグリセリド)は積荷みたいな関係にあります。(後述するLDLコレステロールやHDLコレステロールはLDLやHDLに含まれているコレステロールのことをいいます。)ふつう脂質は水や血液には溶けませんが、脂質が血液に浮いているように見えないのは、このように脂質(積荷)と蛋白質(船)とが結合したLDLやHDLの形で血液にとけているからなのです。
 一般にコレステロールや中性脂肪(トリグリセリド)には悪いイメージをもたれがちですが、コレステロールは細胞を包んでいる細胞膜の成分でもあり、その他にある種のホルモンや、胆汁酸などの材料として、中性脂肪(トリグリセリド)は体内に貯蓄されたエネルギー源として重要な役割をはたしています。
 しかし、コレステロールが何らかの理由で血液中に異常に多くなると、動脈硬化など成人病の原因となります。同様に中性脂肪(トリグリセリド)が多くなると、皮下脂肪に蓄えられるため、肥満や脂肪肝になりやすくなります。
 

LDLコレステロールとHDLコレステロールってどうちがうの?
 LDLコレステロールやHDLコレステロールを構成している脂質の成分は前述したとおり、同じコレステロールなのですが、そのはたらきがまったく違います。LDLコレステロールは肝臓でつくられたコレステロールを体の各部に運搬し、HDLコレステロールは体の各部にたまったコレステロールを肝臓に戻すはたらきをしています。一般に、体にべたべたとコレステロールを運搬するLDLコレステロールを悪玉コレステロールといい、からだのすみずみを掃除するように肝臓へコレステロールを戻すHDLコレステロールを善玉コレステロールといいます。

HDLコレステロールを上げるには
 HDLコレステロールは、適量のアルコールや、女性ホルモン、食事や運動によって上昇します。大量のアルコールは肝動脈硬化の危険因子であり、長期飲酒では動脈硬化が促進されるので注意してください。女性ホルモンはHDLコレステロールを上げる作用があるのに対して、男性ホルモンはコレステロールを低下させるように作用します。ですからHDLコレステロールは女性が男性に比べて高値であり、女性が長寿である理由の一因ではないかと推測されています。
 

もし高脂血症と言われたら
 コレステロールやトリグリセリドが血液中に必要以上に多くなった状態を高脂血症といいます。
もし、高脂血症といわれたら、、、食事療法と運動療法が治療の基本となります。
まず、食事療法で脂質の制限をする場合には、肉類か卵類を制限してください。例えば食べる肉類の量をそれまでの半分にしてみたり、毎日卵を食べていた人なら週に2回くらいに減らしてください。卵はいろいろな食品にも含まれているので、それらの食品についても注意してください。
 飲酒する人で中性脂肪(トリグリセリド)が多い人はお酒の量を減らしてください。目安としては1日に日本酒ならば1合、ビールならば大ビン1本、ウィスキーはシングルなら3杯、ダブルなら1杯程度にしてください。また、糖質は間接的に中性脂肪(トリグリセリド)を増やしてしまう原因となります。甘いものなど糖分の摂取も控えるようにしてください。
運動療法では、無理せず続けることが大切です。1日の運動量の目安としては8000歩〜1万歩といわれていますが、お年寄りの方では始めは家の周りを少し散歩するようにして、無理のないように少しずつ歩数を増やすようにしてください。要は続けることが肝心です。

                                                        


腎検査         

キーワード:クレアチニン・尿素窒素(BUN)

血中クレアチニンは腎機能検査の指標
 
クレアチニンは筋肉中でつくられて、尿中に排泄されます。ですから腎機能が低下するとクレアチニンは血液中に停滞し、血中濃度が上がります。
ただし、クレアチニンは筋肉でつくられるため、血中濃度も筋肉量に比例します。筋肉量が多い男性では高値、女性では低値になるので、注意が必要です。

腎機能を反映する検査の一つとして尿素窒素(BUN)もあります。
 
尿素はたんぱく質が分解されてできる老廃物で、尿中へ排泄されます。この尿素の中に含まれている成分を尿素窒素(BUN)といいます。つまり、この尿素窒素(BUN)もクレアチニンと同じ様に腎機能が低下すると、尿中に排泄されなくなり、血液中の濃度が上がります。
また、尿素窒素(BUN)は小腸や大腸などの消化管に出血があった場合、血液とともに消化管にでた、たんぱく質が分解されて尿素に変えられるため、尿素窒素は上昇します。一方、肝臓に障害があると、尿素はつくられなくなり、尿素中の尿素窒素は低下します。
 



膵臓の検査         

  キーワード:アミラーゼ・リパーゼ・白血球

 アミラーゼやリパーゼは膵臓に存在して、消化や吸収を助けている酵素です。
 したがって、膵炎などで膵臓がダメージをうけるとこれらの酵素が血液中に出現します。また、炎症がおこると白血球数も上昇します。
 



甲状腺の検査

   キーワード:TSH・T3・T4・CK(CPK)

   TSHは血液中の甲状腺にはたらきかけて甲状腺ホルモンを調節しているホルモンです。
T3、T4が調節されている甲状腺ホルモンです。
甲状腺機能低下症ではTSHは上昇しますが、甲状腺ホルモンであるT3、T4は低下します。
またCK(CPK)という酵素は甲状腺機能低下症で上昇します。
 一方、甲状腺機能亢進症ではTSHは低下しますが、T3、T4は上昇します。CK(CPK)は甲状腺機能亢進症では低下します。