・血液を固まりにくくし,血栓(血の固まり)ができるのを予防します。
・ワーファリンが効きすぎると血がとまりにくくなり,効かない場合は,血栓ができやすくなります。
・ワーファリンは他の薬と異なり,飲む量には個人差があります。
次の3つが考えられています。
1.
血管壁の性状変化(動脈硬化)
2.
血液成分の変化(凝固異常)
3.
血流の変化(a.心房細動,b.人工弁置換)
a.心房細動は,心房の刺激が小刻みにたくさん起こり,ふるえるような状態になり,
心臓収縮の補助ポンプとしての役割がはたせない状態になります。このような場合は,
心房に血液が滞留(血流の変化が起こる)して血栓ができやすくなります。
特に,弁膜症,脳梗塞の既往,高血圧,高齢者の人は発生率が高いといわれています。
b.人工弁は異物であり,本来人が持っている弁とでは,血液の流れが異なります。
血流がよどむ所に血小板がくっつきやすくなり,血栓ができやすくなります。
動脈硬化は何らかの原因で,傷ついた血管や血流が変わったところに血小板がくっつきます。
→凝固因子からフィブリンというものがつくられ,血小板どうしを強く固める働きをします。
→LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が付着,浸潤し,動脈硬化が進展します。
→さらに血流が変わったところで赤血球が固まり,血栓が作られます。
→脳や心臓・手足に十分な栄養や酸素が運べなくなります。また,血栓が血管からはがれて,血流にのって全身にまわり,どこかの血管でつまってしまう可能性があります。
脳(脳梗塞)
心臓(心筋梗塞)
手足(閉塞性動脈硬化症)
・ワーファリンは凝固因子の生成を抑制します
・アスピリンは血小板どうしの結合を抑制します
血液が固まるには「凝固因子」というものがないと固まりません。
肝臓の中で,ビタミンKは酵素Aによって,還元型ビタミンKとなり凝固因子の合成を手助けします。
一度合成に使われた還元型ビタミンKは酵素Bにより,元のビタミンKにもどされ再利用されます。
ワーファリンはこの酵素A,Bを阻害して凝固因子の合成に必要な還元型ビタミンKと元のビタミンKの両方を減らすため,
凝固因子ができなくなり,血が固まらなくなるのです。
1.
納豆・青汁・クロレラは絶対に食べないこと
これらには,「ビタミンK」が多量に含まれています。また。納豆は腸内でビタミンKを産生します。
このビタミンKがワーファリンの効果をなくします。
そのほか,モロヘイヤ,アロエ,スピルナなどの健康食品はビタミンKが多く含まれていますので,控えましょう。
2.
緑黄色野菜は「ビタミンK」を含んでいますが,極端に多量に食べなければ問題ありませんし,これらを摂取しないと栄養学的によくありません。
・
ビタミンKはビタミンK1,ビタミンK2やフィトナジオン,メナテトレンなどと書かれている場合があります。
・
ビタミンKとK(カリウム)とは違います。間違えないようにしましょう。
3.
その他の注意としては,食事を一定に保って偏食,暴飲,暴食を避けてください。
ワーファリンは飲み忘れを防ぐために毎日決まった時間に服用することをおすすめします。
ワーファリンは凝固能(血液の固まりぐあい)を調整するもので,たくさん飲んでいるからといって,
病気が重いということではありません。
人によって血液の固まりにくさが違うために,ワーファリンの量が違います。先生から言われた通りの量を飲んで下さい。
血液の固まりぐあいを調べるのが「PT-INR」や「TB」という検査ですので,必ず,定期検査を受けて下さい。
PT-INR=プロトロンビン時間国際標準比率/TB=トロンボテスト
もし,飲み忘れた場合には,気付いたらすぐに1回の量を飲んで下さい。
次の日まで気が付かなかった場合には,飲み忘れた分は一緒に飲まず,その日の量を飲むだけで結構です。
絶対に飲み忘れた分をまとめては飲まないで下さい。
1.
心房細動で服用が必要な場合は,長期間飲まなければなりません。
2.
弁置換後では,機械弁の場合は一生,生体弁の場合は3〜6ヶ月間です。
3.
その他の場合も疾患や状態によっても,かわってきますので一概には言えません。
通常の量(ビール大びん1本,ウイスキー水割り2杯,酒1.5合)であれば毎日飲んでもほとんど問題ではありません。
しかし,二日酔いなど体調を崩すようなことはしないでください。
また,アルコールを飲んでからワーファリンを飲む場合は,6〜7時間以上はあけて下さい。
ワーファリンには直接関係ないといわれていますが,血管障害や血栓などの発症の原因となるのでやめましょう。
漢方製剤とワーファリンが問題となったという報告は具体的にはありませんが,血液凝固系(血液を固める),
線溶系(血液を溶かす)などに影響するという報告もあります。
主治医に相談して下さい。
この薬は強い光を長い間あてると,ききめが弱くなります。
フタつきの缶などに入れて湿気の多い場所に保管することを避けましょう。
また,子供の手の届かないところにおきましょう。
ワーファリンを服用している方に,カードや手帳等を用意してあります。他の病医院,歯科,薬局にかかる時は,
必ず先生方にご提示下さい。
1.
他の薬を飲んだり,今一緒に飲んでいる薬をやめるとき
2.
手術や歯を抜くなど出血する可能性のある歯科治療を受けるとき
3.
かぜ薬など,薬局(薬店)で薬を買うとき
4.
妊娠を希望される場合や妊娠に気付いたとき
1.
出血をしないように気をつけましょう。
2.
けがをする恐れのある仕事や運動には気をつけましょう。
3.
打撲や打ち身などしやすい運動にも気をつけましょう。
4.
歯ブラシは柔らかめのものを使い,あまり強くみがきすぎないようにしましょう。
5.
ヒゲをそるときは電気カミソリをおすすめします。
6.
オートバイなど転倒する危険性がある乗り物に乗ったときは気をつけましょう
通常より時間がかかります。あわてずに,5〜10分間しっかりとタオルなどで押さえて下さい。
鼻血や歯ぐきなどから出血が続く場合や,ぶつけてもいないのに,内出血が起こったり,血尿や血便が起こった場合は,
すぐに主治医に相談して下さい。
**参考文献**
「ワーファリンを服用される患者さんへ」監修:東京女子医科大学内科学
上塚芳郎先生
「ワーファリン教室」監修:独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター
臨床研究部 是恒 之宏先生
心臓血管外科 磯部 文隆先生
薬剤科 齊藤 誠先生