2002年のゴルフ場の破綻件数と負債金額は過去最高の水準に達した。バブル期に会員募集したゴルフ場が相次いで預託金の返還請求期限を迎えているほか、ゴルフ場本体の収益も悪化しているためだ。2002年のゴルフ場業界を振り返るとともに、2003年を展望した。
平成14年12月16日。北海道の旭川メモリアルカントリークラブ(旭川市)が旭川地方裁判所に民事再生法の適用を申し立てた。58億円の負債総額はゴルフ場の破綻規模としては小さいが、業界内には波紋が広がりつつある。
というのは、同社は2年前、会員から集めた預託金の返還が困難となり、返還の5年延長などを理事会が決議。一部会員が返還訴訟を起こし、札幌高裁は8月に理事会に決議を認める異例の判決を下した経緯がある。
全国で相次いでいる預託金返還訴訟の大半は訴えられた会社が敗訴してきた。それだけに旭川メモリアルは注目されたが、同社は売上減少が著しく裁判継続を断念した。このケースが象徴するように、預託金など巨額負債を抱えるゴルフ場経営会社の多くは本業の収益も低迷。会員から返還請求を受けると訴訟を恐れて法的整理に踏み切らずを得なくなる。
帝国データバンクによると2002年に破綻したゴルフ場会社は12月27日までに100社を超え、平成13年(53件)から倍増。負債総額は初めて2兆円を突破した。スポーツ振興やエスティティ開発など複数のこーすを保有する大手の破綻が目立った。
破綻ゴルフ場の再建役として存在感を高めているのが外資。4922億円の負債を抱えて破綻したエスティティのスポンサーには国内外10社が手を挙げたが、第二次選考に残った数社のうち3社はスポンサーに決まった米ローンスターを含む外資系だった。
地産のスポンサーもゴールドマン・サックス、ローンスター、スターウッドの3社に絞られた。 外資が触手を伸ばすのは、法的手続きで債務の大半がカットされれば少ない投資で大きな見返りがあると見るからだ。
日東興業がゴールドマン・サックスとまとめた再生計画案は、預託金など約5000億円の一般債権額の97・5%前後をカットする内容。2・5%に相当する100億円強に担保付き債権の買収額を加えた数百億円で30コースが手にはいる。
こうした外資系流の支援に対し、預託金の大幅カットを余儀なくされる会員から「ハゲタカファンドを儲けさせるだけ」との批判も出ているが、現時点で外資に対抗できる資金を用意できる国内の企業はほとんど無い。
ミサワリゾート・UFJ銀行、野村証券グループは15年、ゴルフ場を買収するファンドを設立するが、投資規模は約50億円。「(不動産などに)国内で1兆円を追加投資する用意がある」(ロースター)とする外資とは比べようもない。
外資系ファンドの多くは買収したゴルフ場を欧米流の経営で建て直し、数年後には第三者に売却するか株式を上場する考え。ただ中には、ゴルフ場を長期保有しようという動きもある。
高級クラブ運営のCCAインターナショナル(本社・香港)は日本のゴルフ場を買収し、数十年間運営する方針。ディエター・クロスターマン会長は「リーズナブルな値段でゴルフ場を買うチャンスが来た」とみて、英国の著名コース「ブロケット・ホール」などで培った運営ノウハウで収益を高める計画だ。
2003年は3月末までゴルフ場の倒産が相次ぎそうだ。最大の理由は4月に施行予定の改正会社更生法。民事再生法のように手続きが簡素化されれば、債権者が更生手続きに踏み切る公算が大きい。経営者がクビにならないで済む再生法による「駆け込み破綻」が相次ぐ可能性がある。業界関係者の間には「エスティティほど超大型の倒産はないが、負債1000億円以上の破綻は続く」との見方が強い。 |