民事再生中のサザンクロスカントリークラブが、名義書換を再開した。すでに可決・決定した再生計画に基づく、商法の匿名組合を用いたスキームの本格始動だ。成田ハイツリーに続いて、国内では2例目になる。中間法人を活用した間接株主制が注目を集めている中で、自主再建の手法としてはもっと注目されて然るべきであろう。
一方で、スポンサー型の再建では外資の独壇場が続いている。ローンスター、ゴールドマン・サックスが、早くも国内最大手に踊り出ており、好むと好まざるとにかかわらず、業界の命運を大きく握る存在あることは確か。それに対抗するのなら、会員のよる自主再建以外にはないこともまた確かである。
平成15年1月に民事再生法を申請し、8月に開始決定の出たサザンクロスカントリークラブ(静岡県・経営会社=(株)サザンクロス)は、12月2日から名義変更を開始した。これは匿名組合への移行を受けてのもの。
和議手続きの中では、後述するゴルフ倶楽部成田ハイツリー(千葉県・経営会社=(株)成田ハイツリー)の例があるが、民事再生手続きでは初めてのケースとなった。匿名組合とは、商法535条に定められた出資形態。
出資者が組合員となり事業者に資金を提供する、というもの。出資者は利益の分配を約束されるが、損害を被るリスクもある。
一見、株主会員制と似ているが、株主となった場合には、出資にあたり個別の契約は結ばないため、商法の帳簿閲覧権などの権利以上のものは与えられない。しかしながら匿名組合の場合、出資者である組合員の権限を自由に決められるのが大きな特徴だ。
実際に全国初の匿名組合となったGC成田ハイツリーでは、会員1人あたり250万円の出資を募り、25億円を集めてゴルフ場施設の所有権を取得するとともに、経営判断への関与など組合員に大きな権限を与えている。
さらに株主会員制には証券取引法上、監査法人の必要や、管轄財務局への有価証券報告書の提出が義務づけられ、また資本金を集める(株主を公募する)にあたり税法上の問題もあるが、これらもクリアできるという利点がある。
やはり会員から約30億円の出資金を募り、外資のローンスターから会員たちがコースを買い取った清川カントリークラブ(神奈川県)では、清川クラブという中間法人を採用したが、権利関係においては匿名組合は同等以上のものが保証されている、といっていい。
ちなみに今回、名義変更を再開したサザンクロスの場合、可決された民事再生計画では、債権の90%カットで、残り10%を5年後に一括弁済するというもの。
また継続会員については、預託金75%カットで、残る25%を匿名組合出資金に振り替え、会員に新たな出資を求めないケースは今回が初めてのもの。
当然のことながら出資金は預託金のようには返還されることはないが、最高額面が600万円と比較的低額であったことと、収益が上がれば出資者(会員)にも配当があり、ゴルフ場会社が解散した場合には一般債権者として配当(債務超過の場合は出資分の範囲以内で清算)を受けられるため、多くの会員の同意が得られやすかったようだ。
会員主導による再建であり、また経営の透明性も高く、さらに成田ハイツリーの成功例があるためか、名変再開後の市場の反応も上々のようだ。
会員の意見集約、法的立場の明確さを保障するものとして昨年は中間法人が注目を集めたが、今後、商法の規定にある匿名組合についても、採用するコースが増えることも十分に考えられそうだ。
中間法人を活用した間接株主制にせよ、匿名組合にせよ、いずれもゴルフ場再建と新しいクラブを創り出そうという、高い会員意識の表れであることは間違いなさそうだ。
▽ 外資が席捲する業界に日本型自主再建のモデルケースか?
さて民事再生手続き中の日本ゴルフ振興(株)に対し、大口債権者であるローンスター・グループは11月21日、会社更生法の適用を申請。これにより民事再生は中止、会社更生に移行した。日本ゴルフ振興は、グループを含め国内28コースを展開する大手。
RCC(整理回収機構)主導で2月に民事再生法を申請したものの、債権者との交渉が暗礁に乗り上げ、10月には再生計画案の提出期限延長を申請し、裁判所もこれを認めた矢先のことであった。
そこには民事再生手続き中にRCCから徐々に債権を買い取り、約44%の債権を取得するまでになったローンスター・グループの存在がある。というのも会社側が債権者の説得にあたっていた再生計画案は、全国を3つに分ける分社化案。
具体的には九州・沖縄地区を福岡シティ銀行と地元企業に、四国地区を愛媛銀行と地元企業に、そして残る地区についてはローンスターがスポンサーになるという内容。
しかし大口債権者であるローンスターは、「スケールメリットがない」と一歩も譲らず、あくまで1社のスポンサーであることにこだわり、会社更生法申請に踏み切った。
複数のスポンサーによりニューマネーの投入を期待していた会社側は、「スケールメリットはあくまでもローンスターにとってのメリット」と裁判所に主張してきたが、これに対しローンスターは「民事再生の大前提は一体再建」と主張。
分社による再建は、地元金融機関などの一部債権者に配慮したもので会員のためにならないとし、過半数の債権者の同意書も裁判所に提出して対抗してきた。
裁判所はローンスター側の主張を認めた形で、会社更生法申請を受理、同法に基づく保全管理命令を出し、民事再生は中止となった。
さて好むと好まざるとにかかわらず、昨年から外資系が一気に本格稼動を始めた。実際、ローンスターは系列のPGM(パシフィック・ゴルフ・マネジメント)を通じ、現時点で34コース、ここに日本ゴルフ振興も含め内定段階のものも含めると78コースに。
ゴールドマンサックス・グループも系列の運営会社アコ―ディアゴルフを通じ、旧日東興業系列など32コースを展開している。それに内定しているスポーツ振興、緑営グループを加えれば79コースとなる。
もはや外資の動向こそが、21世紀の日本のゴルフ界の命運を握る状況である。それだけにサザンクロスの例は、日本型再建のヒントを示唆しているのではなかろうか。
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