千葉県のゴルフ場経営交代を巡り、旧オーナー側が理事計12名に送付した文書が現オーナー側の名誉等を既存したか否かで争っていた事件で、東京地裁民事第4部(槐智子裁判官)は今年1月24日に名誉毀損等にあたるとして、旧オーナー側に損害賠償を命じる判決を下していることが分かった。
訴えていたのは、債権等をまとめて同ゴルフ場の経営権を取得した現オーナーと同ゴルフ場経営会社で、訴えられたのは旧オーナーと旧オーナーが経営する会社。
判決文によると、旧オーナー側はゴルフ場の経営交代後に発足した理事会の新理事に、”旧会員有志一同”の差出人で、ファックスや郵送で「旧経営人と訴訟問題が山積し、ゴルフ場存続の危機」などと記した平成17年1月31日付けの文書を送付した。
その文書には、「現オーナーは再生法(平成13年2月に民事再生手続き開始申立、13年7月再生手続き廃止)を潰して破産(13年7月破産宣告、同年12月破産廃止)に追い込み、巧妙にゴルフ場の搾取に成功した」、「ゴルフ場存続の危機に追い込まれているにもかかわらず、理事会発足に名を借りて金策を目論んでいる」などと記載されていた。
このため、現オーナー側は「虚偽の事実を記載した文書で名誉を毀損し、(現オーナーの)会社の業務を妨害した」、等と主張して計4000万円の損害賠償を求めた。
一方、旧オーナー側は経営交代に至る経緯を述べると共に、「経営基盤が万全のものではないことは(ゴルフ週刊誌の記事に)記載されている」、「理事12名だけで、不特定多数に送付していないので、理事以外の第三者に伝播しない」(=公然性がなく名誉を毀損しない)などと主張した。
裁判所は、ゴルフ場資産や債権の登記関係等の事実を確認した上で、文書の記載が真実か否かを検証。旧オーナー側が主張する”搾取”については、
@旧オーナー側は「経営権を譲渡していない」と主張するだけで経営権を搾取(詐欺)されたという
主張はなく、具体的内容が不明、
A現オーナーがゴルフ場会社の株式の75%を取得し、経営権の主導権を獲得している、
・・・・などとして、「搾取の記載は真実と認められない」と認定。”存続の危機”についても「全証拠でも存続の危機は認めるに足らない」と認定した。
また同様に、旧オーナーが主張する”公然性がない”については、「ファクシミリ、郵送で勤務先等に送付されており、伝播の可能性があるので、公然性がある」と認定している。
さらに、「”旧会員有志一同”は存在せず旧オーナーが単独で送付しており、(現オーナー側に)不利益を与えることを目的としたもの」と付け加え、名誉毀損等があったと判断して、旧オーナーに損害賠償を命じた。
但し、文書の配布は一部理事に限られていたため、損害賠償金額は計200万円とした。
ゴルフ場業界では経営権を巡って訴訟になった事例はまれにあるが、それが名誉毀損にまで発展した事例は珍しい。
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