ゴルフ場の営業を受託した会社に預託金の返還を求めた事件で東京地裁民事第33部(飯野里朗裁判官)は、会員が”営業受託会社が委託会社から債務を引き受けた”と誤認する要素はなかった・・・・として会員の訴えを退ける判決を1月30日に下した。
訴えていたのは旧・サンフィールドGC(現・エースGC藤岡コース、18H、群馬県)の会員で、訴えられたのは同GCの当時の経営会社・日野企画(株)から営業委託を受けた(株)シズエイインターナショナル(以下・シズエイ、代理人=弁護士法人・かすが総合の亀井美智子弁護士他)。
判決文によると、会員は平成元年11月に同GCに入会。預託金1120万円の据置期間満了後に預託金の返還を求めたが、日野企画が応じなかったため簡裁での調停を申立て、分割で返還する旨の調停が12年に成立した。
しかし、その調停が履行されなかったため、強制執行等によって預託金の一部は回収した。平成14年には、ローンスター系から同GCの競売の申立てがあり、15年1月には日野企画とシズエイとの間で土地賃貸借契約を交わし、同年3月1日からシズエイがゴルフ場名を変更せずに業務を行ってきた。
その日野企画は15年5月12日に破産宣告を受け、破産管財人は同年11月に同GCを(株)エースゴルフに売却。その際、管財人は書面で「シズエイは同GCから撤退」との内容の書面を会員に送付した。
会員(預託金額面1120万円)は、預託金の一部1000万円を回収するために、「シズエイが当時、営業による収入の一切を管理し取得しており、経営主体がシズエイに変更されたことを示す外形を意図的に作り上げ、債務もシズエイが承継したとの誤信を生じさせた」ので、会社法22条1項(譲渡会社の商号を使用した譲受会社の責任等、旧・商法26条1項)の類推適用で、シズエイにも弁済義務があるなどと主張して、平成17年に訴訟を起こした。
これに対して、シズエイは「日野企画と連盟でシズエイが営業委託を受けたこと、経営会社は日野企画で変更がないこと、会員と日野企画との会員契約関係も変更がないことを平成15年2月17日に会員に通知している」、
「22条1項は営業譲渡を受けた会社に適用される条項で(シズエイ)はゴルフ場の敷地及び建物等の営業財産を譲り受けていない・・・・などと反論し、返還義務はないと主張した。
東京地裁は、22条1項の類推適用が認められる基準を、
@ 営業財産の譲渡が伴うか、
A 営業受託者が債務を引き受けることが考えれるか、
B 債務が承継されないことについて、どのような対応をとったか、
・・・・と示し、その上で、シズエイ側の主張等を踏まえ、”財産譲渡はない”、”シズエイが債務を引き受けることは考えられない”、”(会員は、2月17日の通知を受け取っていないとしているが)証拠等により受け取っているとするのが相当”として、会員の主張を退けた。
ちなみに会員は、商法26条1項を類推適用して、新会社に「預託金の返還義務がある」とした平成16年2月20日の最高裁の判決を主張の根拠にしたが(関連記事)、東京地裁は「この判例は、営業譲渡を受けた会社に返還義務があるとしたもので、事案を異にしている」として、会員の主張を退けた。
会社法(商法)の類推適用については、多くの裁判でゴルフ場会社側が敗訴している。今回のように会社側が勝訴した事例は、C・シェイクスピア・サッポロGコース(18H、北海道、会社側代理人=亀井弁護士)など数少ない。
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預託金関連の判例その他(参照記事)
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