民事再生手続の申立と、債権者の会社更生手続の申立とが競合した場合、どちらの法律を適用して会社を再建するのが適正であるかの判断で、大阪高裁(武田和博裁判長)は昨年4月26日、法的整理に至る経緯や手続内容に検討を加えて上で、「更生手続が、債権者の一般の利益に適合するとはいえない」として、抗告人の「更生手続を適用すべし」とした主張を棄却する決定を2件下している。
この事件に巻き込まれたのは信和ゴルフ(株)及び同社の100%子会社5社(計=8コース経営)。抗告したのは、信和ゴルフの代理人を務めたこともある弁護士。
同弁護士は、大阪地裁から信和ゴルフ及び(株)パインレークゴルフクラブに再生手続開始決定が下りた後、債権者として同地裁に両社の更生手続開始をそれぞれ申し立てた。
しかし、”再生手続による再建の方が債権者の利益になる”旨の理由などから同地裁は、同弁護士の更生手続の申立を棄却する決定を相次いで下した。この2件の決定を不服として、同弁護士は高裁にそれぞれ抗告していた。
再生手続と更生手続に関する抗告事件の2件の決定(内容はほとんど同じ)によると、同弁護士は「経営交代、組織変更の必要性がある」、「担保権行使の制約等の必要性がある」、「(抽選償還は平等原則に違反する等で)再生計画認可に違法性がある」などと主張し、具体的な内容を交え詳細に問題点を指摘した。
裁判所は、その私的に逐一検討を加えた上で全てを退けた。
さらに、「更正法では、既に再生手続開始決定が進行している株式会社である再生債務者に対し、債権者から更生手続開始の申立が行われた場合、原則として、更生手続を優先する(同法24条1項1号)が、再生手続によることが債権者の一般の利益に適合する場合は、
更生手続申立を棄却することとして、更生手続優先主義を修正している(同法41条1項2号)」(2号全文=裁判所に破産手続、再生手続又は特別精算手続が係属し、その手続によることが債権者の一般の利益に適合するとき。)と指摘し、
「更生手続と再生手続のいずれかが債権者の一般の利益に適合するかについては、更生手続と再生手続の制度の相違や双方の手続の進歩状況等を踏まえた上で、債権者に対する弁済の時期や額のみならず、
事業継続による債権者の利益の有無、資本構成の変化等による債権者の企業経営参加の要否と可能正等を総合的に判断する必要がある」、「経営者の交代、株式の減資等の組織変更や担保権の行使の制約の必要性、あるいは優先債権の権利変更の必要性がある場合は、更生手続によるところが望ましい」との見解を示した。
その上で、信和ゴルフ等の担保設定状況、財産や債務の関係、経営陣の誠実性などに検証を加えて、「会員の大半が更生手続を求めていない」、「誠実に再生手続を遂行しようとしている」などから、「更生手続より再生手続による事が債権者の一般の利益に適合する」と判断し、同弁護士の主張を退けて抗告を棄却した。
この判決文にはないが、信和ゴルフ関連の再生計画は会員債権者に株式を提供するなどの条件が盛り込まれている。
いずれにしろ、ゴルフ場の法的整理で、更生手続と再生手続が競合するケースが過去に何件か出ているが、この決定文は、どちらの手続を適用するかについての一つの基準を示したことになる。
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