日本経済は回復したというものの、大手企業中心の好景気で、業種や企業規模にも片寄りがある。多くの中小企業に支えられているゴルフ産業界には経済回復の実感が伝わってこない。
確かに昨年は、ゴルフ場の入場者増が期待されたが、雨などの天候要因もあり伸び悩み、全国ゴルフ場の年間入場者数を推計すると、前年対比で1%台の減少となりそうだ。
しかも、ゴルフ場業界の状況をみると二極化が進んでいるといえる。大都市圏の近郊のゴルフ場はゴルファーが戻っており、それもコースの評価が高く堅実な経営をしているゴルフ場が健闘している一方、大都市圏から遠くバブル時に大都市圏のゴルファーを見込んで雨後の竹の子のようにゴルフ場が誕生した地域のゴルフ場は、苦戦を強いられているといわれている。
さらにいえば、経済の成長は業種に片寄りがあるように、北海道の夕張市が破綻するなど、地方経済にも片寄りがある。加えてフリーターやニートが定着するなどで、所得格差が拡大している。
このためゴルフ場企業は、どの所得層をターゲットにするか、また地域密着型とするか大都市依存型にするかの選択をより明確にする必要があろう。
地域密着型であれば、力強く地域の企業や団体に営業をかけ、運営もパターン化せずに地域のニーズに合った態勢をとるなど臨機応変に行わなければならない。
一方、大都市依存型では、メンバー制を重視することも必要だが、大都市から遠方に立地する場合は、ゴルフ場のネームバリューのアップに努めなければならない。コースレート日本一を目指している鹿島CC(茨城)はそれを狙っている。
ここに来てコース改造を行うゴルフ場は多くなっているが、それらゴルフ場もコースの評価を高めてリピーターの確保や会員の満足度アップを狙っている。ゴルフ場は創造的な企画を立てて、ゴルファーにアピールする必要があるといえる。
そのような企画を立てる上で、忘れてならないのが団塊の世代を含むシニアゴルファーの活性化だ。ゴルフ団体はジュニアについては力を入れている。シニア対策についても、ゴルフ場利用税の減免運動では70歳以上の利用者を非課税にする成果を上げるなどそれなりの活動をしてきた。
しかし、これから約800万人の団塊の世代(昭和22〜24年生まれ)が順次リタイヤする。利用税そのものの撤廃が厳しいのであれば、70歳以上非課税のハードルを60歳以上にする運動も必要になろう。
さらに、地域連盟が主催する倶楽部対抗が人気で、未加盟倶楽部は会員の強い要望を受けて、地区連盟に加盟することが多いという。この要望はいわばゴルファーのニーズ。
倶楽部対抗もシニアの倶楽部対抗競技を設立するなどで、シニアのニーズを吸収できるはずだ。東北連盟は、女子倶楽部対抗を聞いているが、将来に備えシニアの女子倶楽部対抗の設立を考えなければならない時期だ。
また、ゴルフ振興やゴルフ場経営の安定化は、各都道府県や市町村のゴルフ団体にとっても当然のごとく重要課題だ。栃木県のゴルフ団体は昨年、70歳以上の非課税利用者の手続きを簡略化するため「非課税利用者カード」を発行するようになった。
山梨県支配人会は、フリーペーパーを発行し東京西部からの集客に努めている。集客ではないが、八王子市の4ゴルフ場が結束し固定資産税の減額に成功し、群馬県支配人会はクレジットカードの手数料値下げに成功している。
個々のゴルフ場が自己のゴルフ場経営に専念するだけでなく、栃木県や八王子市などのように地域のゴルフ場が、さらにはゴルフ場全体が連携して集客や経営改善に取り組むことが、ゴルフ界を活性化させる。
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