民事再生計画が地裁から認可決定を受けたことに、「債権者間に著しい格差があり、債権者の平等の原則(民事再生法155条1項)に違反する」として認可決定の取り消しを求めた抗告事件で、大阪高裁第11民事部(武田和博裁判長)が平成18年4月26日、抗告を棄却する決定を下したことが分かった。
訴えられたのは17年9月26日に大阪地裁から再生計画認可決定を受けた信和ゴルフ(株)で、訴えたのはRCCと同社の債権債務の調停で、同社側の代理人を務めた弁護士。
同社の再生計画案の会員に関する条件は、既報通り「一般債権者については95%をカットし、残り5%を10回(平成18年5月末日を第一回とし、毎年5月末日限り支払い)に分け弁済する。継続会員は70%カット後、残り30%を新預託金とし、10年据置後は抽選弁済となる」等となっていた。
同弁護士は、
@、RCC側の債権回収率は他の金融機関や別除権付き債権者の回収率を大きく上回っている。
A、継続会員が退会する場合、(預託金の返還に)抽選償還方式を採用し、落選者に1%の金利を
付するのは、(退会会員を含む)一般債権者との落差を拡大する。
B、抽選償還では、最も遅い償還は82年後になり155条3項(再生計画によって債務が負担され、
又は債務の期限が猶予される時は、特別の事情がある場合を除き、再生計画認可の決定の
確定から十年を超えない範囲で、その債務の期限を定めるものとする。)に違反する。
C、退会会員に対し、年会費支払いを条件にプレー権を認めているのは、継続会員と一般債権者を
区別する意味を喪失させる
・・・・などと主張した。
ちなみに、RCCの債権回収は再生法の申請前に、同社グループのハワイのゴルフ場等の資産を売却したなどで、詐害行為に当たる疑いがあるとも主張した。
この抗告に対して高裁は、@については詳細に論じているが、結論としてはRCCは「有利な取扱を受けているということは出来ない」とし、弁護士の主張を退けた。
また、A〜Cについては、「退会するか、継続するかを会員の選択に委ねている」、「償還期限が10年を超えることについては155条3項の”特別な事情がある場合”に当たる」、「長期に渡り償還が受けられないことは予想できない」、「債権の全額の償還を得られない退会会員に対し、プレー権を保証することは当然」などとして、抗告を棄却した。
決定文は、抽選償還等に直接的な判断を示さず、歯切れの悪い内容のため、認可決定が適法であるとの結論が、十分に伝わってこない。
但し、東京高裁(鬼頭季郎裁判長)が平成16年7月23日に「”抽選償還”は、早く弁済を受けられる会員と、遅く弁済を受ける会員との間に不平等がある」等として、民事再生計画認可決定を取り消した決定を下しているのに対し、大阪高裁は間接的に逆の「不平等ではない」と判断したことになり、注目される。
なお、抗告した弁護士は同社経営者のモラルハザードや、会計監査法人の監査を行っていないことなどを指摘し、適法性に欠くなどとも主張したが、大阪高裁はそれらの主張を全て退けた。
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