募集されたゴルフ会員権の償還が来年ピークを迎えるが、それを前に、倒産手続きを大幅に簡略化した民事再生法が施行された。預託金償還問題に苦しむゴルフ場が一斉に申請に走るとの見方が強まっており、その数は400コースに上るとの予測さえ出ている。
「民事再生法は、ゴルフ場にとっていわば借金棒引き法です。預託金などの借金を大幅にカットした上、経営権は握り続けられるのだから、こんないい法律を使わない手はない」
あるゴルフ業界関係者は、4月1日の民事再生法(以下再生法と略)の施行を前にこう話した。 再生法は、和議法に代わる新しい再建型の倒産法制として、昨年12月の臨時国会で成立した。後述するように、和議法に比べると、再建手続きが簡略化され、会社の財産に対する競売や強制執行を中止できるなど、会社の資産保全の制度が充実している点が特徴。
また、経営破綻前でも、早期に適用申請できる点も有利だ。バブル以降のゴルフ場倒産で最も多く利用された法律は和議法だった。
しかし、和議の認定には、債券額ベースで75%の債権者の賛成が必要なことから、ゴルフ場の場合、債権者数が多く(18ホールで千数百〜約2千人の会員がいるのが普通)、それだけの賛成票を集めるのが困難なため、和議の申請に二の足を踏む経営者が多かった。これが、経営危機に瀕したゴルフ場の経営刷新の妨げになった一因ともいわれる。
例えば、1997年末に和議を申請したゴルフ場経営最大の日東興業の場合、「退会する会員の預託金は82%カットして残りを2001年から13年間で分割払いする」などの和議条件を会員側に提示。新聞・雑誌に意見広告を掲載したり、コースごとに説明会を開くなどして、和議への理解を求めて大々的に説得作戦を展開したが、結果的に、債権者集会での和議賛成票は債券額ベースで78%。認可に必要な75%をわずかに上回るギリギリの可決となった。
日東興業のケースは、預託金の大幅なカットを含む和議条件に75%の賛成を集めるのはかなりの困難を伴う、という教訓をゴルフ場経営者に残した。それだけに、債券額の過半数の賛成があれば、再建計画が可決となる再生法がゴルフ場関係者の目に「借金棒引き法」と映るのも、自然なことだ。
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