労働者の新しい総合誌『飛礫(つぶて)』



 従来どおりではなにごともできない歴史の転換点にあって、わたしたちは労働者解放・人間解放を求めて、労働者の新しい総合誌『飛礫(つぶて)』を発行いたします。

 新雑誌は、何よりも労働者と低迷する労働運動の再生に役立ちたい。「連合」や民社党はもちろん社会党の大多数までが独占資本と国家に包摂され、侵略と戦争を民衆の側から担う組織として決定的な一歩を踏み出した今、これを否定する新たな労働運動の建設は緊急性をおびてきています。しかし、それは状況の危機意識だけでできるものではありません。労働者と民衆の、そして労働運動それ自身の歴史的な存在のあり様を根底から問い直すこと、いままで自ら立ち、立とうとしていた原点・原則の根底的問い直しこそ求められているのだと考えます。


 わたしたちの現実は、いうまでもなく重苦しくはありますが、未来を予兆する世界の激動と連結しているように思うのです。「連合」に抗した独立労組や長期争議のなかに新たな運動の芽を求める労働者、賃金・労働条件ばかりか労働の質やあり様を問う闘い、差別と民族排外主義の克服(否定)を労働者自らの階級的団結の課題とする取り組み、そして被差別民衆や日本内外の諸民族の解放闘争との連帯、わたしたち日本人にしみついた奴隷根性との訣別と真の民主主義の獲得に一歩を踏み出した反天皇制運動の開始と反「日の丸・君が代」闘争の前進、日本軍の海外派兵と戦争国家を阻止する新たな反戦闘争の開始、市場を媒介しない農民との直接的な結合の模索、核開発や自然破壊を許さない持続的な闘いなど、小さくても新たな歴史主体、変革主体としての登場がそれを示してはいないでしょうか。「平和と自由」という名による新たな戦争と反動の時代にあって、変革と解放の歴史主体としてわたしたちはあるのだと思います。


 新雑誌は、このような労働者や民衆の苦闘と模索を仲間に向けて発信し、それを交流し共有しあっていくことを目的にしたいと考えています。読者の皆さん自身が発信者であり作り手で、編集部はその媒介になれればと願っています。もちろん、知識人の協力が不可欠であるのはいうまでもありません。労働・政治・経済・教育・社会・文化・思想などあらゆる分野を網羅し、総合的に関連づけあい、全体性を追及し、労働者と民衆の団結、人間解放の精神があふれた総合誌を目指していきたいと決意しています。

 しかしながら、この試みは、ずぶの素人集団の初めての試みです。大きな不安をもちながらも、何としてもやりぬく決意だけでスタートします。みなさんの熱いご支援を切にお願いして、新雑誌のごあいさつといたします。購読や執筆、財政的なご支援などもよろしくお願いいたします。


1993年12月15日 有限会社 つぶて書房


有限会社 つぶて書房