「韓国記者賞」受賞の労作   待望の日本語完訳七月刊行

日本図書館協会選定図書
 

 

 「東学農民革命100年」

       革命の野火、その黄土の道の歴史を尋ねて


 金恩正、文Q敏、金元容・著
 (「全北日報」東学農民革命特別取材チーム)

 信長正義・訳  朴孟洙・監修

 

 

 定価 5,040円(本体4,800円+税)
 体裁 A5判 上製 600ページ
 ISBN978-4-8462-0325-2

 【 内 容 】
 
初めに
 第一章  総論
 第二章  歴史的背景
 第三章  革命前史
 第四章  沙鉢通文と古阜農民蜂起
 第五章  第一次農民革命
 第六章  全州和約
 第七章  執綱所
 第八章  第二次農民革命の背景
 第九章 第二次農民革命
 第十章  農民軍の敗退
 第十一章 地方別の展開様相
 第十二章 東学農民革命の人物
 第十三章 発掘資料─『石南歴事』
 第十四章 再びはじまる革命─東学農民革命の現場紀行
 東学農民革命略年表
 日本語版の出版に寄せて 朴孟洙
 訳者あとがき 信長正義

 

 推薦のことば

 趙 景 達さん (千葉大学文学部教授)


 110年以上も前、朝鮮では一大民衆反乱があった。日清戦争の導火線ともなった甲午農民戦争である。この民衆の戦いは、必ずしも民主主義を希求したものではないが、現代韓国民主主義の原点であるといえる。民主主義とは民衆が主体化することなしには、実現不能なものであり、韓国の民主主義はまさに甲午農民戦争を始発とする主体化した民衆の膨大な血の代償のうえに成立したものである。それゆえ韓国では、この戦いは一般に「東学農民革命」といわれる。
 本書は、歴史研究者とジャーナリストの合作になる詳細な甲午農民戦争史であると同時に、他の追随を許さないルポルタージュである。本書が民主主義の形骸化に苦しんでいる日本に紹介されたことは、まことに意義深い。日本と朝鮮の近代史は真逆に位置するが、それは民衆運動においても同じである。朝鮮の民衆運動は日本よりはるかに犠牲を強いられている。それに思いを致すことは、単なる回顧趣味を越え、現在の停滞した状況に警句を発することにもなる。本書が多くの方たちに読まれることを願ってやまない。
 

 
 姜在彦氏 (大阪国際理解教育研究センター理事、大阪済州島研究会顧問)


 
一九世紀の東アジアは、ウェスタン・インパクトによる大変動期であった。そのなかで中国の太平天国革命(一八五一〜六四)と朝鮮の東学農民革命(一八九四〜五)は、東アジアの大変動を象徴する二大農民戦争というにふさわしい。
 太平天国革命が「上帝教」という異端的な宗教結社と結合したように、東学農民革命も封建的な身分制を否定する人民平等の「人乃天」(すべての人は天である)の「東学」の宗教結社と結合していたことも、よく似ている。
 日清戦争は、東学農民革命を圧殺するため出動した日清両軍の武力衝突であり、東学農民軍にとって外来侵略者による反革命的な内政干渉であった。
 東学農民革命の発祥地は、朝鮮第一の穀倉地帯である全羅北道であった。本書はその百周年を記念して全羅北道の首府全州の学者と新聞記者との共同作業による力作である。
 文献と紀行とによる本書の翻訳には、達意の語学力ばかりでなく、ハングル表記の地名や人名を漢字に直すなど、並大抵ではなかったはずである。訳者の労を多としたい。
 

 
 中塚明さん (奈良女子大学名誉教授)
 
  
『東学農民革命一〇〇年』は、近代韓国において草の根から起こった歴史上もっとも深みのある、しかももっとも規模の大きい民衆革命として評価されている一八九四年の東学農民革命を主題に、その百周年になる一九九四年まで、韓国の国内外でなしとげられたあらゆる研究成果を網羅し、もっとも専門的でありながらも、もっとも大衆的な本です。この本は、二年間にわたって歴史の研究者と新聞記者がいっしょになって東学農民革命が起こった北朝鮮地域を除く韓国の全地域を歩いて調査し、新聞『全北日報』に連載された記事をまとめて本にしたものです。ただ研究者が机の上で理論研究のために書いた本ではありません。日本をはじめとする外国の侵略と弾圧でゆがめられた近代韓国の歴史を、自分たちの主体的な歴史としてとりもどすための闘いの一環として書かれた本です。韓国のマスコミ界でも高く評価され一九九四年に『韓国記者賞』を受賞しています。この本は近代韓国の民衆運動史を正しく理解する基礎になる歴史書であるとともに、現代韓国の人たちが何をめざして今を生きようとしているかを私たちに教えています。日本の読者に広く迎えられることを心より期待します。
 

有限会社 つぶて書房