中国の核・ミサイル・宇宙戦力  



まえがき    目次  


核ミサイル

茅原郁生 編著
A5判上製 512頁 定価4,515円
2002年7月刊


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執筆者一覧



茅原 郁生   (拓殖大学国際開発学部教授)
青木 節子   (慶応義塾大学総合政策学部助教授)
飯塚 央子   (武蔵野短期大学非常勤講師)
江畑 謙介   (軍事問題研究家)
大西 康雄   (日本貿易振興会 アジア経済研究所)
小川 伸一   (防衛研究所第1研究部主任研究官)
榊  純一   (石川島播磨重工業新機種プロジェクト部次長)
新治  毅   (元防衛大学校防衛学教授〔一等空佐〕)
鈴木 祐二   (拓殖大学海外事情研究所教授)
布部 剛   (石川島播磨重工業竃h衛システム事業部技術部課長)
稗田 浩雄   ((財)未来工学研究所技術・国際関係研究センター長)
間山 克彦   (防衛研究所第2研究部所員)
光盛 史郎   ((財)未来工学研究所技術・国際関係研究センター主任研究員)








まえがき


 中国は宇宙船「神舟3号」の打ち上げL回収に成功した。「神舟3号」は2002年3月25日、酒泉衛星打ち上げセンターから打ち上げられ、108回地球を周回し、2002年4月1日に内モンゴル自治区に帰還・回収された。「神舟3号」は緊急脱出装置をはじめ有人飛行を想定した実機モデルでの成功であり、次は有人宇宙船の打ち上げ、と見られている。
 経済の発展途上にある中国は、科学技術全般もなお発展の余地が大きい水準にとどまっているが、宇宙ロケットなどの限られた分野では世界一流のレベルにある。それは中国が宇宙開発だけでなく核・ミサイル戦力の強化に並々ならぬ努力を傾注してきた成果でもある。
 宇宙開発に向けた中国の力の入れようは、そのまま中国の核LミサイルL宇宙戦力強化の狙いにつながっている。中国はすでに核保有国であり、米国が進めようとしているミサイル防衛(MD)網構想に反発する一方で、自らは潜水艦からミサイル発射の実験をするなど自国の核 ・ミサイル戦力の強化を推進している。

  ◆中国は何故、核 LミサイルL宇宙戦力の開発・強化に熱心なのか?
  ◆大国指向を強める中国の核LミサイルL宇宙戦力の目的は何か?
  ◆その実態と水準はどうか? 将来の発展方向は?

 このような問題意識のもとに本書は中国の核・ミサイル・宇宙戦力の実態と発展動向をまとめている。冷戦後、国際秩序の柱が大量破壊兵器の拡散防止に置かれ、核兵器拡散防止条約(NPT)が無期延期されると共にその不平等性を是正するための包括的核実験禁止条約(CTBT)が1997年に締結された。しかし一方で、米国では議会がこの批准を拒否するなどCTBTの実効性、さらにはNPTの形骸化などが懸念されている。中国もまたNPTが規制している核兵器のタテの拡散(強化、精密化)を進めているのではないかという疑念が抱かれている。加えて中国の軍事力近代化の背景と意図が不透明であることから、これまでも「中国脅威論」が浮上してきた経緯がある。
 中国が核LミサイルL宇宙開発を推進しているのは米国主導の国際秩序への対抗措置であり、またミサイル輸出など「テロ疑惑国家」に対する関わりが事実であるとすれば、まさに中国は「厄介な隣人」ということになる。実際、2002年5月に高まったインド、パキスタンの軍事的危機は改めて核戦争生起の危機感を覚えさせた。これに関連し米上院で再びこれまで印パの核ミサイルの開発・強化を支援してきた中露両国への非難が浮上している。このように21世紀もまた核Lミサイルの脅威から逃れることはない。言うまでもなく中国の核LミサイルL宇宙戦力の問題は、アジア地域の安全保障の中で検討されるべきである。21世紀にはアジア地域の大国として日本と中国の関係が重要な課題となるが、それは両国の共存L共栄だけでなくアジア地域全体の平和と繁栄に繋がるものであるからである。

 日本は核LミサイルL宇宙戦力を重視する中国とどのように対面するのか?

 日本としては中国との協調を追求すべきであるが、その基盤となる両国の信頼醸成がまず重要である。そのためには日中間の相互理解の深化が求められ、それには政治面・経済面の幅広い現状認識から社会L文化的な根底に関わる深い理解が必要である。同時に、厳しい国際関係の現実から安全保障の視点を抜きにした中国理解もありえない。とりわけ「中国脅威論」に直結する核・ミサイル戦力から宇宙開発までの中国の軍事能力の解明の必要性は高まっており、このテーマは決して一部の専門的な問題として限定されるべきではない。  

 本書は、中国の軍事能力、特にその核Lミサイルから宇宙戦力までの実態の解明を狙いとしている。この分野は、中国にとって機密度の最も高い分野であるだけに公刊資料も少なく、どれだけ実態に迫り得るかという不安が残る。しかし、たとえ厚いベールに包まれ、不透明であるとしてもその実態に迫り、日中両国間の信頼醸成のために、それらの問題の不透明性や疑念を少しでも排除することが重要である。

 その輪郭を描き出す困難な作業としては、中国の核LミサイルL宇宙戦力に関連する国際政治L軍事研究者から開発現場の技術者までの専門家がそれぞれの知識とこれまでの研究成果を持ち寄って、総合的な検討をくり返す方法をとった。そして、アジア地域の安全保障環境に大きな影響を及ぼす中国の核LミサイルL宇宙戦力の客観的な状況を把握し、それに関連する国際法規や軍備管理から検討を加えて、わが国の対応のあり方を考察している。
 本書を通じて主張したい趣旨と狙いは一貫しており、それは2年間に及ぶ18回の研究会を通じて相互に意見交換を重ね、大筋においてメンバーの合意が得られたものである。同時に13名のメンバーのそれぞれの専門分野ごとの主張もまた尊重されている。本書の記述の中で若干のニュアンスの違いや立論の構成上で重複した記述が見られることはあらかじめご了解いただき、全体として本書の主張をご理解いただければ幸いである。
 なお、本書の主テーマは、中国の核LミサイルL宇宙戦力の三分野にわたっているが、これらは相互に関連しあった一体的なものであり、論立てには若干の無理がある。各専門家の執筆による「章」立てを、読み易さの便宜上、第T部から第W部に区分したものであって、むしろ各章のテーマに盛られた内容を中心にお読みいただく方がいいいかもしれない。
 最後になったが、本書は、笹川平和財団L笹川日中友好基金の出版助成を受けて刊行されたものであり、関係各位のご理解とご尽力に感謝の意を表したい。

平成14年6月23日
茅原郁生

    




主要目次






序 章 何故、今、中国の核・ミサイル・宇宙戦力なのか

第T部 中国の核・ミサイル・宇宙戦力をめぐる戦略環境
  第1章 軍事における革命の進展と中国の対応
  第2章 中国の国家像と国防近代化政策
  第3章 中国の国防科学技術生産の基盤

第U部 中国の核戦力と国際核管理への対応
  第4章 中国の核開発と国際戦略の変遷
  第5章 中国の核戦力の現状と将来
  第6章 中国の核戦略と核ミサイル部隊
  第7章 中国の核軍備管理・軍縮政策

第V部 中国のミサイル戦力とその管理
  第8章 中国のミサイル戦力の現況と展望
  第9章 TMD構想と中国の対応
  第10章 MTCRと米中関係

第W部 中国の宇宙戦力とその国際的問題
  第11章 中国の宇宙開発戦略の現状と開発体制
    第12章 中国のロケットを中心とした宇宙技術水準と将来展望
  第13章 中国のエアロ・スペース・ パワーの現況と趨勢
  第14章 宇宙開発の国際法的な枠組み

終 章 核・ミサイル・宇宙開発をめぐる新しい戦略環境とわが国の対応

資料編









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(株)蒼蒼社 編集部