54回定例会 4月27日:有楽町マリオン14階 朝日新聞談話室
 

キヤプテンインタ一フェ一スとマルチメディア

〜PCイン夕一フエースの問題状況〜
  報告者:金淳寛太郎(フリ一ジャ一ナリスト)

■「PC再考」分科会で分かったこと

3回の「PC再考」分科会で専門家の話から分かったことは、
(1)メーカーrPC専門家はPCは「汎用型」中心であるべき、という考え方を変えることはないこと、
(2)ただし、PCがネットワーク化、「家電型」化へ向かう動向の中にしネットワーク専用や
   移動体・携帯用端末など、「特化型」の方向があること、‘
(3)しかし、「特化型」の一種として考えられる「素人型」への指向は、一部にあるものの、
   まだ十分の認知がないこと(分科会の議論は、素人用端未が欲しいという提案に始まっている)、
(4)なぜ、玄人がPCの使い勝手に無関心なのか、その背景として、
 ・PCが完成された技術ではなく、常に発展途上にある特殊な商品であること‐
 ・すなわち、PCは先端技術による速度と容量の競争にさらされていて、使い勝手より新奇性を追う
  宿命にあること、などである。
(4)の問題については、分科会の結論部分の討論で、通信技術家から提出された問題視角が惨考になった。
  メディアの社会的利用・普及にあたって考慮すぺきは、いかに大衆に受け入れられやすくするかであり、
  そのためにはここで、「先端技術」と「利用技術」の使い分けについて考える必要があるのではないか
  という提案である。消費者主権を言っても、マニアックな商品であるPCでは、メーカー、販売者、消費者が、
  それぞれに「先端技術」(高性能)と「利用技術」(使い勝手)の選択について、しっかりした問題意識
  を持って切嵯琢磨しないと問題は解決しないのではないか。それだけに、潜在化しているPC見直しの視点を
  明確にすることが要請されている。

■キヤプテンのイン夕ーフエース問題の教訓

  この3月でキャブテン共同センターは営業を終了し、ビデオテックス網は今年いっぱいで幕を下ろすことになっている。
 この「失敗のメディア・キャプテンが、マルチメディア時代の端末の「利用技術」(使い勝手)に大きな教訓を残したことを
 忘れたくない。
  アナログ・マルチメディアであるキャプテンは、テレビ受信機と電話の組み合わせによる、家庭向け画像通信の
 双方向サービスとして始まった。アナログ回線で、メディアや端末を選ばない、端末―センター、センター―センターの
 通信が可能なのでマルチメディアと言ってみたが、家庭にとっては、いろいろな情報サービスのセンターと個別に双方
 向の通信ができる、しかも大変経済的なサ−ビスのはずであった。端末やサービスごとに自由な形でビデオテッタス綱
 を利用する技術でありながら、ハードが先行して、ソフトやサービスと端末の組み合わせに失敗し、せっかくの、端末、
 アプリを選ばないマルチメディアとして経済的で優秀な機磯を使いこなせなかった。
  サービスに合わせた使いやすい端未の開発など、インターフェース開発にユーザーの知恵を生かす視点が欠如したこと
 が、その最大の原因だったと考えられる。なんでも出来る端未は、何もできないに等しかった。キャプテンの営業でいつも
 問題になったのは、「何をするか」説明できない端末販売だった。 (PCについても何か似ているのでは?)
  これと対照的なのがフランスのビデオテックス「ミニテル」(日本のキャプテンにあたる)の、電話帳に代わる番号案内
 サーピスを中心にした戦略の成功だ。現在も600万人が、電話や予約購入に日常的に利用している。ミニテルは、
 おじいさんでも家庭の主婦でも使いこなせる、史上初の大衆化したニューメディアだとされている。あまりに生活に入りす
 ぎて、現在は、インターネットの普及を妨げることが問題になっているという。しかし、PCの高速化はビジネスには
 不可欠だとしても、家庭の生活はミニテルのスピードでいいのかもしれない。もちろん、ミニテル利用者の大半は、
 ミニテルのゲートウエイサービスを通してし、インターネットも利用しているらしい。
  ミニテルを成功とみるか失敗とみるか、むずかしいが、ミニテル利用者の94%が「満足」という調査があり、
 630万台、1500万人の「便利」が実現していて、ミニテルの「スピードは遅いが信頼性が高い」便利なサービスと
 インターネットの「高速だが信頼性に欠ける」使いにくいサービスとの比較に事実上、どう決着がつくかはこれからの問題で
 ある。しかし、これは、われわれの問題意識である、メディアにおける「先端技術」か「利用技術」かの問題の典型でもある
 ことが、お分かりいただけると思う。

■マルチメディアヘの課題

  メディアの大衆化の要件を無視したキャプテンの失敗は、得られるサービスの中身と、端末やシステムの使い勝手(苦労)
 との見合いでメディアは選ばれる、という真理を示している。橋本大也氏(アクセス向上委員会主宰)は、「劣悪な
 インターフェース」という金澤の批判に答えて、「PCは進化を続ける不完全な商品」であり、子供の柔軟な適応力が最大の
 解決であり、PCのユーザピリティ改善のインセンティブの工夫が不可欠として、「ノンPC市場」というPCが姿を隠す
 ネットワータ化されたコンピューターのあり方、たとえぱ家電市場の可能性を指摘している。
  この「ノンPC市場」こそ、私見ではキラーコンテンツがその死命を制する世界である(ミニテルの番号案内サービス!)
 PCが「何でもできる端末」から「何かをする端末」へ変身する世界だ。
  この、サービスと端末の関係に改めてユーザーの視点が問われPCの先端技術(進化)と利用技術(ユーザビリティ)
 のバランスが大衆によって問われることになる。リナックスブームで息を吹き返したトロンの坂村健氏は「早いマシンは
 もういらない」(自分のやることにみあった速度と経済性を主体的に選択すべき)という。マイクロソフトのマシンスピード
 にあわせた「ドッグイヤー」から自立するユーザーの視点で、PCを見直すべき時ではないか。

(報告:金澤)
 
 


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