第53回定例会
2月23日 :東京国際フオ−ラム
講講師:大山茂夫(元尚美学園短大教授)
社会の重要ポストには俗衆がすわり‐精神性の高い少数者は町に散在するというのが高度大衆社会のすがただ。だからこそ、ごく普
通の人が容易に使える社会ぺの表現手段をもち、そのコミュニケーションによって言論を形づくることがとても大切になる。メールマ
ガジンはそれに最適のメディアで、しかも情報社会の方向を示しているように思える。
メールマガジンは電子メールによる一種の同報通信だ。いちど登録したら意識しなくても手元に届く点で宅配紙に似ている。よく混
同されるが、Webサイト上で定期的に更新するWebマガジンはいわば店で読者を待つ雑誌。社会への浸透力に大きなちがいがある。
このメディアはとくに日本で発達した。通信料金が高くネットサーフィンに金がかかることもあるが、大川弘一、深水英一郎両氏が
1997年1月インターネット上に開いたメールマガジン配信機関「まぐまぐ」の功績が大きい。発行者がマガジンを1通のメールとし
て送ると、多数の読者へ無料配信してくれる。
そのメールマガジンも大半は購読無科。読者は「まぐまぐ」画画にメールアドレスを入力して登録(解除)ボタンをクリックするだけ
でいい。新着誌紹介のメールマガジンも配信されて、どんなマガジンが出たのかもわかる。
設立から約2年。1999年2月には個人誌中心に配信約7000誌。読者の総登録約1000万。
週3回刊の新着紹介マガジンが100万部。その広告収入は多額なものになった。この成功を見て他にも配信代行機関ができ、企業のメ
ールマガジン発行も盛んになったわけだ。
「まぐまぐ」の事業戦略がみごとに見抜いていたメールマガジンの特質を見よう。
1.無限コピ―と瞬時大量配信
紙の印刷・酉配送に相当する部分は安くなるが「まぐまぐ」が工業的発想で課金していたら小事業で終わったろう。「タダで簡単」だ
からこそ急激に大きく成長したのだ。インタ−ネットにはフリーウエアや検索エンジンなど無料の文化がある。情報モデルでは課金必
ずしも得策でないことを「まぐまぐ」は示している。
2.個人性と双方向性
メールマガジンは、マスでも個人メール的な親近感を帯ぴるふしぎな特性がある。だから企業メ−ルマガジンでも「私性」を加える
方が説得力をもつ。また個人発行者では情報の組織的確認はむずかしい。このため「情報利用は読者の責任」とするメールマガジンが
多い。双方向性があるので、メールマガジンを出した数分後に誤りを指摘するメールが来てすぐ訂正、という例もある。翌日まで訂正
できない新聞とは異なる点だ。つまり双方向コミュニケーションによって事実認識を形成していくプロセスを示すメディアだと言え
る。旧メディアと同じことせ要求するのは妥当でないだろう。
3.世界性とシステム化適性
「まぐまぐ」経由のメールマガジンは、発行者も読者も世界中にいる。日本語の壁さえ破れば相手は世界だ。地域の広がりだけでな
くWebや新聞、雑誌、映画、店舗、イベントを紹介し批評するといった次元溝造の広がりも持てる。組み合わせやすく即時性あるメ
ールマガジンは、システム化に向くメディアだといえる。
4.ネットワ一ク化と高度化
現在、プレスリリースのネットワークはあるが、メールマガジンの本格ネットワーク化は今後の課題だ。また今はテキスト中心でモ
バイルへの進出も進んでいる。社会の受信水準さえ高くなれば、技術的には画像・音声・動画も伝えられる。今は地味だが強い潜在力
をもつメールマガジンへの注目をお勧めしておきたい。
(報告:大山)