
第47回定例会 7月29日 東京国際フォーラム
演題:電子メールとセキュリティ――電子メールが危ない?
フリージャーナリスト 宮本喜一
電子メールが日頃のビジネス手段として手放せなくなった。ところが、その
利用を巡って、いろいろな問題点が露出してきた。メールの盗聴、不正利用、
ハッキングなど、企業防衛、自己防衛上、対策が必要になってきた。
いったい現状はどうなのか。中堅インターネット・プロバイダ勤務を経て、
現在フリージャーナリストとして電子メール関連の記事、単行本などを執筆中
の宮本喜一氏に聞いた。通常会員のほか賛助会員、非会員も参加し、活発な質
問、議論が展開された。
宮本氏からはまず、要するにあなたがメールを送信したり受信したりするパ
ソコンの先に何があるのか、どうなっているのかよく理解していないと困った
ことが起こる可能性がある、という指摘から始まった。
電子メールも所詮われわれの「道具」であり、便利な面がある反面使い方を
誤るととんでもないことが待っているのは他の道具となんら変わるところはな
い。しかし現状は、クルマの黎明期とよく似ており、メールの芳しくない面に
対して世の中全体の関心が薄いようだ。
これは単にメールを使う個人だけではなくネットワークを管理する立場の法
人や会社も同じことで、これが潜在的に大きな問題を抱えている。
宮本氏のプレゼンテーションの後のディスカッションで、ある女性の参加者
が「ある大手の社員が、やり取りしている会社のメールを上司が読んでいると
いう話を聞いた。しかも、この事実がわかって抗議しても、メールはビジネス
メールだから社員に断る必要もなく当然のことという話だった」という事例を
紹介してくれた。
この問題はメールについて立場の違いで解釈も異なっていることを示している。
メールは所詮は道具であるため、そのルールが確立していれば問題はないのだ
が、ひとりひとりが自分の都合のよい解釈をして使っているために、それが個
人のプライバシーや大袈裟に言えば基本的人権の問題にまで発展する危険性を
はらんでいる。現実にそういった問題は、すでに起こっている。
さらに困ったことに、問題が分かる場合はまだいいが、インターネットとい
う個人の目には触れることのない物理環境で電子メールがやり取りされるた
め、被害があっても分からないケースも多い。
会社内ではそれでもその中で完結している場合には閉じた場所であり、経営
者を含めて社内でのメールの環境とルール、そして社外とのメールの交換につ
いてのコンセンサスを作れば、それなりに機能する。
要は電子メールの「野放し」状態を解消してお互いに「安心して」「お互い
の個人としての尊厳を尊重して」使いこなさなければならない。
もう1つの大きな問題は、インターネットプロバイダーの質である。イン
ターネットプロバイダーは電気通信事業者であり、他人同士の通信を媒介して
いる。したがって、それぞれの情報を知る立場にある。そこで、その秘密を保
持できる質が保たれているかどうかが問題になる。
野放図に広がったインターネットプロバイダーはすでに国内で2500社以上に
も膨らんでいると見られ、NTTモノポリだった時代と比較して情報管理は極
めてルーズになっていると見られる。早急な行政の対処が必要だ。
(報告:荒井久)
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