第45回定例会 2月25日 プレスセンターホール
                         

演題:出版を考える

評論家(日本エディタ−スク−ル常任理事)小林 一博 大妻女子大短期大学部教授  金平 聖之助                     

日本出版業界の問題(小林)

1.はじめに  出版活動に3つの原罪−時間の消費、森林資源の消耗、ひとを惑わす。だからこそ 出版問題の本質を考え、新しい時代を提案すべきだ。  出版問題は、出版の自由、読者のアクセス権、少部数(少数意見)が守られている  か、創造的か、の4視点。 2.出版事情  書籍、雑誌の発行部数(97年)669809万冊、実売26374万円。 はじめ  て前年比減。98年も低落つづく。  書籍は返本が平均38%と多く、運送コストがかさむ。    コミック(本、誌)が売り上げの22%、冊数の37%を占め、一般誌のペ−ジも  増加。コミック手法はテレビ、ゲ−ムにインパクト。 3.流通  書店は26224店(94年)。80年代後半〜90年代に中小1000店が休廃   業に追い込まれて減少したが、大型化で売場面積は増加。  コンビニが47278店に達し、雑誌販売の3分の1を担うまでになり、編集も   無視できなくなってきた。 4.インタ−ネット  版元−取次−書店−読者の在来ル−トにインタ−ネットが介在、ジャスト・イン・  タイムで返品解消も可能に。インタ−ネットによる市場開拓、パソコン編集のコス  ト低下で特定分野にスモ−ル・ビジネスが勢いづく。 5.図書館  公私立あわせて2363館、資料費349億円。貸出主義でベストセラ−中 心の多  冊購入のあおりで専門書が圧迫されている。  *

アメリカ出版ビジネスの地穀変動(金平)

1.市場  一般書の売り上げの伸びは2年連続の低下。今世紀はじめに再販を廃止した 米国で  は返品より値引きが主流だ。 2.大型店  90年代に入って、B&Nなど4大チェ−ン書店がス−パ−ストアを全国に展開、   全書店売り上げの約43%を占める。少なくとも1万平方フィ−ト(約280坪) 以上の売場で推奨価格を大きく下回る値引き販売が売り物。 3.新しい主役  専業書店の主役は非伝統的書店に移っている。ベストセラ−や実用書を扱うウエ ハウス・クラブや量販チェ−ン、最近ではペット、園芸、スポ−ツといった特定分 野の商品を扱うスペシャリティ・ショップなどだ。 4.サイト書店  インタ−ネット利用のオンライン、あるいはサイト書店が97年半ばで500余り に上り、大手チェ−ン書店のB&Nも進出。シェアはまだ1%強にすぎないが、 4、5年後には5%になるとみられる。アマゾンコムは絶版本をふくむ250万点 を扱い、売り上げ11400万ドルの27%は海外からの注文。  しかし読者の77%は書店での購入を選好するとの調査結果もある。 質疑・意見交換   ス−パ−ストアと図書館   サイト書店の配送コスト   値引きとサポ−ト情報   一般書店と異なるベストセラ−    紀伊国屋書店の場合   取次依存からの自立 小林氏から著書2点の贈呈をうけ、1部参加者は後日、両氏から情報、資料提 供をいただきました。


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