熟読していた漫画の手を止め、その時が来たのを知る。 ― M だ ― 僕の体は一時の快楽から一転し、重苦しい不安感につつまれる。 机の上のケイタイはMからの着信音を告げながら、僕の気持ち とは裏腹に規則正しく震えつづける。 ― 居留守を使おう ― そう決めた。 ケイタイの横にあるノートは ほぼ白紙。 わずか登場人物の名が 三つばかり。 セリフも ト書きも プロットも 無い。 タバコに火をつける。 ― 長いな ― 半分まで吸い終わった所で やっと 電話が切れた。 今ごろは留守番電話サービスセンターの 機械的な女性の声を 奴は耳にしているに違いない さてと、 今から徹夜で何とか形だけでも仕上げよう と タバコをもみ消した所で、今の状態とよく似ている 非常に 非常に よくない イメージを お も い だ し た。 ―これじゃ8月31日の高校生と同じだ― 人は何度同じ過ちを繰り返せば良いのだろう。 思えば 高校時代の3年間は 宿題との闘いに明け暮れた3年間だった。 長期休みの宿題。テストごとの提出物。等 数え上げたらきりがない。 でも、闘いばかりの3年間じゃなかったな。 何かにつけて、友人の家夜中まで騒いだり、 文化祭のたび、クラスの誰かに恋したり、.... なんて考えると、憩いのオアシスも 結構あったなんて思うっていうかありまくった様に感じる。 オアシスに居座っているうちに 闘いは激化していくんだな〜 と そこまで考えた時、 甘美な思い出を引き裂くかのように ケイタイの着信音が.....
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