カラーフィルムの特性と色再現
色画像の良し悪しとはどういうことか

●感度と感度バランス

カラーフィルムには、青紫(B)、緑(G)、赤(R)に対して別々に感じる3つの感光乳剤層がある。リバーサルの場合には、撮影したときにこの三つの乳剤層が適度なバランスをもって感光しないと発色する三つの色ボジ像のでき方が違ってきて、たとえぱYM二つの色ボジは適度だがCポジが淡くなるといったように、仕上がるカラーポジのバランス、つまりカラーバランスが崩れてくる。

正常な調子のカラーポジ(カラースライド、カラープリントとも)は、画面内に写し込まれた黒から白の無彩色の段階(グレースケール)が、図1−4の1のようにYMCの色画像が3つともそろって発色している。いいかえれぱ、このようにYMCボジともに、写したグレースケールのすべての段階かフィルム上あるいはぺ−パー上に、適度な濃度とコントラストをもって発色したときに、対象物の色が正常に再現的に記録できる。そのため、グレースケールは、発色の良否をはかるものさしになるわけであり、複写のような場合にはしぱしぱこれを画面内に写し込んで、濃度、カラーバランス、コントラストなどの検討や判定に使われる。

すでに述ぺたように、物体の色は光源の色質によって変化するので、昼光用(デーライトタイプ)、電灯光用(タングステンタイプ)といった撮影光源の指定かあるわけだが、これはつまり指定の光源で正しい露出を与えれば、YMCボジが正しいバランスをもって発色するということである。カラーフィルムの三つの感光乳剤は、下方にある乳剤層ほと多くの乳剤層を透して感光することになるので、下にある層ほど感じにくくなり、そのため下層ほど高感度になっているわけだが、昼光用は昼光という光がBGR光をだいたい平均的に含む光であるので、フィルムの3つの感光層は三つともだいたい平均的な感度バランスをもっているとみてよい。また、電灯光用は電灯光自体がB光が少なくR光を多く含むので、フィルムはB光に対してはより強く、R光に対してはより弱く感じるように、3層の感度バランスが調整されていると考えれはわかりやすい。

各乳剤層の光のスペクトルに対する分光感度は製品によってそれぞれ異なるが、だいたい図1−5のように、基礎編で示したCIEの眼の刺戟値曲線とは違ってカーブの山が離れていて、すその方で互いにオーバーラップしているのが特徴で、これは色相の再現と無彩色の描写をよくするためだとされる。昼光用と電灯光用では、あきらかにカーブが異なるものもあるか、分光感度そのものはほとんど差のないものもあり、乳剤の厚さや発色色素(カプラー)との関係もあって、そのメカニズムはかなり複雑のようである。

コダクロームKMの分光感度をみるとEXより紫外部(400nm以下)の感度が抑えられており紫外線による影響が少ないとみてよいが、エクタクロームプロフェッショナルもこのコダクロームに近似したカーブに改善され、紫外線による影響が従来の製晶より少ないとされる。なお、このバランスは、撮影時のフィルター操作で変わってくる。たとえば、Yフィルターを使うと入射するB光が弱くなり、B感光層の感し方が弱くなるCMフィルターを使えば、C感光層の感じ方が弱くなる。Cフィルターを使えば、R光が抑えられる。

フィルターを使えぱカラーバランスが調整できるのは、このように三つの乳剤の感度バランスを変えることかできるからである。カラー用には種々のフィルターかあるが、光源の色温度によるカラーバランスの崩れを調節するのがLBフィルター、3つの乳剤を個々に調整するのがCCフィルターというわけである。


●濃い画像、淡い画像(露出の過不足)

リバーサルでは、指定の正しい光源で写しても露出が多いと画像全体が淡くなるのは、第一現像によってネガが過度に現像されすぎ、発色するカラーポジが図1−4の2のようになるからである。つまり、ハイライトの調子がすっとんでなくなり、シャドウも濃度不足になる。3は露出不足の場合であり、ハイライトも濃度過多になり、シャドウのトーンがまったくでなくなる。


●カラーバランスの崩れ

撮影光源の色温度が適切でない場合や、また厳密にはカラーフィルムによって、また現像処埋によって、またシャッタースピードによっても、カラーバランスは崩れる。図1-4の4は、YMCの順序で濃度が低い場合である。たとえぱ、昼光用フィルムを電灯光で写したような場合は、このようになって全体が黄赤っぽくなるわけである。カラーバランスが崩れる場合には、LBフィルターあるいはCCフィルターで補正すればよいわけだが、同図5のように3つの感光乳剤のコントラストか崩れると、ハイライトの色はそう悪くはないか、ハーフトーンからシャドウにかけて黄赤方向にバランスが崩れることになる。また6のようになると、ノーマルな色はハーフトーンの一部でしか得られず、ハイライトでは青っぽくシャドウでは黄赤っぽくといったように、カラーバランスの崩れ方がハイライトとシャドウで違ってくる。


5とか6は、フィルム自体に欠陥がある場合、保存や現像処理がよくない場合にも生じるが、このようにコントラストが崩れるときは、もはやフィルターを使っても補正できない。つまり、ハイライトを補正するフィルターを使うとシャドウが、シャドウを補正するとハイライトがさらに大きくカラーバランスが崩れることになるからで、これらはどうにもならない。ただ、画面をハーフトーンを主体に構成すれば、こうした欠点は目立たなくなる。いいかえれは、ハイエストライトからディープシャドウまで、フルトーンをだすということはカラーの場合もむずかしくなるということである。


●ネガ・ポジの場合

ネガカラーの場合、フィルムは写したグレースケールとは、明暗関係が逆のカラーネガができる。リバーサルの場合と同様、発色するYMC三つのネガは濃度およぴコントラストがそろったネガに仕上がることが望まれるわけだが、図1−6の1のように多少のバラツキが生じても、プリントでYMCポジか正しいパランスをとるように補正すればよい。もし、ノーマルなネガをプリントしてそれが正常に発色するとき、1のようなネガを固一条件でプリントするとYネガは濃いからYポジは淡くなり、Cネガは淡いからCボジは濃く仕上がる。そこで、フィルターを使ってY濃度をあけ、C濃度を下げれば、2のようにYMCボジのバランスをそろえることができる。

ネガ・ボジの場合は、色温度のラチチュードも露出のラチチュードも広いのはこうしたプリント時の補正がかなり自由になるからだが、いいかえれはそのためにプリント技術の良否ということが、非常に重要なポイントになる。結果はプリントしだいということだが、しかし、3のように大きくネガのバランスが崩れると、ある部分についての補正はできても、ネガのトーンのない部分は焼き出すことはできないから、ノーマルなプリントにはならない。6の場合では、ハーフトーンの一部がノーマルにでたとしても、ハイライトは全体にシアンのカブリが生じ、黒は黒にならず、シャドウは全体に青紫色にくすんだプリントにしかならない。

だから、ネがのバランスの崩れは、補正ができるといっても限度があるわけであって、調子のよいプリントをつくるにはできるだけ濃度もカラーバランスもよいネガをつくることが大切になってくる。また、4から5のように、ネガのコントラストに狂いがあり、MCのネガはノーマルだが、Yネガはコントラストが低く軟調な場合は、ハーフトーンをノーマルに補正すると、ハイライトは責色っぼくなり、シャドウが青紫っぽくなるといったように、ハイライトとシャドウで色の崩れ方が違ってきて、この場合もやはりノーマルなプリントにはならない。以上のように、カラー写真の色画像の良し悪しをみるときは、全体の濃さ、全体のカラーバランスだけでなく、ハイライト、ハーフトーン、シャドウにわたって各部の調子をこのようなみかたでよく観察してみるのがよい。


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