カラー写真の配色と色の調和
配色がどのように重要であるかは、料理一つを例にとってもよくわかるはずである。まぐろのような赤い刺し身には白い大根や緑の海草、洋食でも肉には緑のパセリやレタスが肉色を鮮やかに美味に見せる。

要は、色のとりあわせということになるが、カラー写真も、もちろん例外ではない。いったん四角い画面に切りとられる限り、そこには好むと好まざるとにかかわらず、何らかの色の組み合わせができあがる。たしかに、色の美しさということからすれば、カラー写真もおいしくみえる料理と同様、色のとりあわせが大切ではある。色のとりあわせしだいで、鮮やかに見えたり美しく感じられたりすることは、たしかだからである。しかし、”写真である”ということを忘れてはいけない。われわれが写そうとするものは、青、緑、赤、黄といった単なる色ではなく、それは人物の肌色であったり、レモンの色であり花の色といったように、ほとんどの色がものとしての意味をもっている。つまり、それぞれが物体の属性として、重要な意味をもっているということである。

もちろん、カラーフィルムであるからには、色を造型的に大胆にこころみるのも楽しい。しかし、その根底には色を写すのではなく、対象をしっかり写すという心がまえがないと、色はキレイだが、訴えてくる内容はさっぱりといった、単なる色の遊びに終わりやすい。つまり、カラーもモノクロ同様、まず何をいかに写すかという撮影意図を明確にし、その狙いにそって色がもつ性質や効果を、色彩構成に生かすということだと思う。

その意味では、”色にこだわらないで”ということがいえるわけで、配色を考えるときはあくまで主題がひきたつ配色を考えたい。色彩豊かな画面をつくりたいときは、アクセントになるような色、たとえば地味な衣裳にはちょっとした花を添えれば色はぐんとはえてくる。しかし、場合によっては、せっかく気をきかしたつもりの色が視線を乱し、目ざわりとなって主題をそこねることもある。肌を生かすには、肌が生きる色を配すといったように、あくまで主題を中心に考えたいものである。 配色のとりやすい方法としては色数をなるべく少なくし、画面全体の色を統一するのが無難とされる。配色による色の調和は、写真の場合は訴える内容に即して考えるべきだが、一般の色彩調和の通則も参考になる。

(1)同色および類似色の組み合わせ
主題の色が赤であれば、背景なども同色の赤系統の色だけで画面をまとめる。あるいは、類似色、つまり赤なら黄赤、赤紫といった主題の色と類似共通する色(色相環で近い位置にある色相)との組み合わせでは色彩効果はいくらか活発になる。とはいえ、同色、類似色だけの組み合わせでは、よくいえば上品で落ち着いた(色にもよるが)感じになるが、色彩効果が平板で色のコントラストが弱いだけに、明度または彩度の変化を大きくして、たとえば、主題が赤なら背景はそれより明度、彩度ともに低い暗色系を使えば主題の赤がひきたつといったように、明暗のコントラストを与えるようにするのが一般的には望ましいといえよう。

(2)異色の組み合わせ
たとえば、赤に対して黄、黄緑、青紫、青といったように、色環上でかなり離れた色同士の組み合わせでは、いうまでもなく色のコントラストは大きくなり、画面が与える色彩効果はかなり派手になる。しかし、この場合も明度、彩度によって効果は大きく異なる。一般的にいえば、周辺の色や背景の色は、主題の色より明度彩度を低くする方が無難といってよいと思う。

(3)反対色の組み合わせ
赤と青緑、緑と赤紫、黄と青紫といったように、色環上でちょうど反対側にあるいわゆる補色同士の組み合わせは、色のコントラストは最大となり、もっとも刺戟的な派手な色彩効果が得られる。このように、色相差が大きくなり、そして原色を使う場合ほど、色が互いに反発しあってどぎつい色彩効果をつくりやすく、下手をすると下品な効果になりやすい。また、このような派手な色の組み合わせでは色の対比作用の方が活発になるので、写真の内容が弱められることがあることも考えておかねばならないだろう。


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