画面の全体色調
カラー写真も絵やデザインの場合と同様に、画面がつくる全体の色調によってわれわれの気分を変える。つまり、画面各部の色をまぜ合わせた平均的な色調が、何らかの気分をつくるということである。たとえば、電灯光照明では場合によってはカラーバランスの崩れとしてしかとらえられないこともあるが、それが生かされれば、濃い黄赤色の色調から黄昏の感じも出れば、落ち着いた暖かい雰囲気も出すことができよう。

したがって、CCフィルターやLBフィルターで画面全体の色調を強調したり演出するのも一つの方法である。もちろん、室内、戸外を問わず、背景を何にするか、青空をバックに、あるいは緑葉をバックにするか、あるいはどの程度に切りとるかによっても全体色調は変わる。そして、被写体となる人物をアップで写すなら、人物が着いている衣服の色が全体色調を大きく左右するのはいうまでもない。

カラー写真の全体色調は、いわゆる平凡にみえる写真ほど色の特性が少なく、グレーに近くなるといっても差し支えないと思う。というのは、実技編のカラープリントの項でもとりあげるように、プリントの色補正ではしばしばグレー(灰)が色補正の基準に用いられるように、グレーを基準にしてノーマルなプリントが得られるのは、応々にしてごく平凡な写真だからである。

いいかえれば、これといった写真の内容に特徴がない上に、全体色調の点でも特性がないがゆえに、平凡に感じられるといってもよいのかも知れないのである。 そのため、色の特性を生かすとすれば画面の全体色調は決して無視できない。一般的には、全体色調が赤、黄赤といった暖色系では、刺戟的で動的、陽気快活な雰囲気をつくる。とはいえ、明度や彩度により大きく効果は異なり、たとえば茶系統では地味な落ち着いた感じになろう。また、冷色系では明度が高いと、すかっとしたすがすがしい感じにもなれば、明度が低いときは陰うつな感じにもなろう。
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