色覚、眼の色に対する感じ方
人間の眼が、どのようなしくみで色を感じるかという色覚説は、ヤング・ヘルムホルツの三原色説(1802年ごろ)がもっともよく知られている。そして、その三原色説をもとに、クラーク・マクスウェルの青(青紫)と緑と赤の3枚のフィルターを利用したカラー写真の実験(1860年代)によって、3色だけで色再現が可能になることが実証され、これが今日のカラー写真やカラーテレビ、カラー印刷など、あらゆる色再現の基本原理として応用されているわけである。

ヤングの色覚説はおおざっぱにいえば、人間の眼には青紫(B)、緑(G)、赤(R)に対して感じる三つの光受容体があり、その感じ方の割合により多様な色を感じるというものだが、さきに述べた眼の網膜の視細胞2種(円錐体と桿状体)のなかの、色を感じる働きをする円錐体にそのBGRに相当する三つの種類があるとすれば、理解するうえにまことに好都合である。従来は、その有無が解剖学的に論議されてきたようであるが、ごく最近になって円錐体にはやはり青紫、緑、赤に主として感じる3種の感光色素が発見された(マックニコル=1964年ごろ)とされる。とすれば、われわれの眼もカラーフィルムと同様に三つの光を別々に感受し、その感じ方の割合で多様な色に見えるということになる。しかし、視覚過程はかなり複雑のようである。

他の有力な色覚説としてはエクアルド・ヘリングの四原色説(1870年ごろ)がある。ヘリングによれば、青、緑、黄、赤の4種の光受容体が働き、かつ、青←→黄、赤←→緑、そして黒←→白という3対が、どちらかにスイッチがはいったり切れたりする(オン・オフ)作用があるという反対色説を提唱した。しかし、今日では光受容器としてはヤング・ヘルムホルツの三原色説に一致し、視神経から視覚中枢に伝達される過程では2色のオン・オフに記号化されるというヘリング説に一致するという見解が強力のようであるが、まだまだ明確な答えがでていないというのが現状のようである。

したがって、眼がどのように色を感じるかということを、正確に説明することはできないわけだが、別項に述べたCIE表色法の色の計算に用いられる3スペクトル刺戟値分布(図5ー8)が、眼の分光感度をあらわしていると考えればよいだろう。つまり、これは眼の円錐体の分光感度そのものではないが、わかりやすくいえば、この三つの曲線のうちxが赤、yが緑、zが赤に対するわれわれの眼の分光感度だと思えばわかりやすいであろう。

また、図5ー9は比視感度曲線であるが、誤解を恐れずにいうならば、aは円錐体全体、bは桿状体の分光感度をあらわしており、明るいところでは円錐体の働きにより、黄緑辺がもっとも明るく感じられるが、暗いところでは主として桿状体が働き、bのように全体が短波長側に移行する。そのため、暗所では赤系統よりも、青紫系統の方がより明るく見えるということができよう。
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