明暗順応
人間の眼は、光の明るさに対して自動的な調節作用をもち、明るい場所では眼の絞り(虹彩)が小さくなり、暗い状態では大きくなる。要するに自動絞りである。しかし、絞りだけで調節できる範囲はそれほど広くはない。眼の絞りで調節できる範囲はしれたもので、せいぜい16倍くらいとされる。しかし、われわれは強烈な太陽光のもとでも、薄暗いロウソクの光のもとでもものを見ることができる。

眼の特性の第一は、このように光の明るさに対して驚異的なラチチュードをもっていることであるが、その理由は眼のフィルムである。”網膜”の感度が非常に幅広い範囲で自動調節されるところにある。つまり、強烈な太陽光のもとでは絞りが小さくなるとともに網膜の感度は低くなり、薄暗いロウソクのもとでは絞りが大きく開くと同時に網膜感度が著しく上昇する。つまり、フィルムでいえばASA1よりも低い感度から、ASA400のフィルムを1600、3200と超増感をしたときのその広い範囲を、網膜は自動調節できる機能をもっているということである。このような眼の順応作用を明暗順応といい、明るい方の順応を明順応、暗い方の順応は暗順応と呼ばれている。

たとえば、真昼間に暗い映画館や暗室に入ると最初は何も見えないが、眼が慣れてくると徐々に暗いところが見えてくるようになる。これが暗順応で、暗順応では眼が慣れるまでにはかなり時間がかかる。そのため昼間、不完全な暗室に飛び込んで真っ暗だからと安心して現像をはじめると、終わりごろには馬鹿に明るいことに気づき、フィルムやペーパーをかぶらせてしまうことも多い。

一方、その反対に暗い暗室や映画館から、明るい戸外に出たときにおこる順応は素早い。これは明順応と呼ばれる。数秒のうちに眼が慣れてくる。このような順応性をもっていることは、逆にいえば眼では光の正確な明るさを判定することはきわめてむずかしいということである。そのため、正確な露出が必要になるカラー写真では、適正露出を見いだすには光の強弱を電気的に測定する電気露出計が、ぜひとも必要になってくるということにほかならない。
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