CIE表色法における物体色の色相、明度、彩度の表示
X=○○、y=××と表示されても、素人にはそれがどんな色かさっぱりわからないが、光源色の場合は図4-3からだいたいの見当はつく。中央の標準の光A、B、C、D近辺は白とされているが、白といってもかなり範囲が広く、かなり黄赤っぽい光(色温度2000度Kくらい)から相当青っぽい2万度Kくらいの光までが含まれている。 物体色の場合は、測定光によって色度座標が異なってくるので、写真用フィルターの場合も、標準光源別に色度が表示されている。図4-4は、主なコダックのフィルターの色度図(標準光源C)である。この場合は、C光源の位置(照明点=Illuminant"C")に近い位置にある色ほど無色に近く、そこから遠く離れて周辺のスペクトル軌跡、純紫軌跡に近いものほど、色が濃く鮮やかな色味をもつフィルターである。

図4-5は、図4-4の四角いカコミ部分の拡大図で、ここにはEK社のCCフィルターとLBフィルターの位置が示されており、色味の淡いフィルターはだいたいこの範囲内にある。

図4-6は代表的な標準色票の位置を示したもので、記号はのちに述べるHV/Cである。HV/C法では、色票と眼で比較してそのなかからもっとも近い色票を捜し出し、その色票に表示されたHV/C値が換算できるようになっている。

ところで、CIE法では色相、明度、彩度という言葉は使わないが、それに対応する表示がある。色相の表示には、光の波長が用いられる。これを主波長と呼ぶ。どのようにして見いだすかというと、色度図上でその色の色度点と照明点とを直線で結んで延長線を引いたとき、スペクトル軌跡と交わる位置の波長がその色の主波長である。たとえば、20YのCCフィルター主波長は571nm(c=C光源測定)といったように、色名のかわりに光の波長が用いられるわけである。しかし、マゼンタ系のフィルターのように、照明点とを結ぶ延長線が純紫軌跡線上にくるときは、反対方向に延長して交わるスペクトル軌跡の波長をとってあらわす。ただし、この場合の主波長は補色主波長として、波長の頭にマイナス(-)記号、または波長値のあとに補色(コンプレメンタリー)のイニシャルのCを付す。たとえば、マゼンタのCC40Mのフィルターの主波長は、550Cというように表示される。

CCフィルターの色度図をみてもわかるように、照明点とを結ぶ直線上にはだいたい同一の色相をもつ色が並ぶが、照明点(図ではC)に近い色ほど彩度が低く、照明点から離れる色ほど彩度が高い。

そこで、いわゆる色の鮮やかさ(彩度、飽和度、純度)は照明点からスペクトル軌跡曲線までの距離を100として、その色が照明点からどれくらいの位置にあるか、をパーセントであらわす。これは、刺戟純度と呼ばれる。いうまでもなく、パーセント数の多い色ほど鮮やかな色である。

つまり、色相は主波長、彩度は刺戟純度であらわされる。しかし、二次元の色度図では、明るさは表現できない。あらわせるのはあくまで色度、つまり色相と彩度だけである。そのため、明るさは別に表示される。つまり、yが比視感度値と一致するので、これとかけ合わせた値、つまりX、Y、ZのなかのYをもとにし、視感反射率(%)、あるいはフィルターの場合は視感透過率(%)として表示される。したがって、物体色の場合はxとy、それにYの三つの数値をもって色があらわされることになる。コダックやフジの写真用フィルターの正確な色の特性も、フィルターの分光透過率に加えて、このようなCIE表色系の主波長、刺戟純度、視感透過率によって表示されている。

なお、以上のx、y、Yなどの数値は、色の分光分布がわかっていれば計算によってはじきだすこともできるわけだが、自記分光光度計と側色計算機によれば、測定と同時に自動的に側色値を得ることができる。日本色彩研究所などに頼めば、そのような厳密な測色をやって貰える。また最近では、分光分布を測らずに、直接的にx、y、Yなどのデーターが得られる装置がある。光電色彩計と呼ばれるもので、これらはちょうどさきのスペクトル三刺戟値と同様な分光感度をもたせた三色測定装置であり、分光分布は測定できないが、x、y、Yなどの測定値が簡単に得られる。分光光度計と比べれば、はるかに安価とはいえ、高級濃度計と同様に高価なものではある。

ところで、色度図上の取り扱いとしては、たとえばある色の補色を見いだすには、補色主波長を見いだしたときと同様に、その色度点と照明点を結ぶ延長線を引き、反対側のスペクトル軌跡とぶつかる点の波長が、その色の補色に相当する色の主波長であり、ある2色を混合(加法混色)したときは、その混合色は2色の色度点を結んだ直線上にあるといったように、補色や混色の取り扱いもできる。

また、カラー写真においても、オリジナルの色と再現された色の相違なども、このようなCIE表色系によって取り扱われる。なお、図4-7のAはカラーテレビ、Bは今日の印刷用インキによって合成可能な色の範囲を、既略的に示されたものである。カラーテレビの色混合は加色法であり、その三原色点はスペクトル色軌跡にきわめて近く、その表現範囲はこの3点を結んだ三角形の広い範囲にある。また、カラーフィルムはYMC色素による減法混色であるが、スライドとして透過してみるときの色は加色法に近く、かなり広範囲の色再現が可能とされるが、印刷インキなどによる反射観賞ではBのようにかなり限定される。同じカラー写真でもスライドでは広いが、反射観賞によるカラープリントでは、かなり限定されるということである。
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