眼の特性を加えた表色法(CIE表色法のあらまし)
さて、このCIE表色法は一般にあまり知られていないが、国際照明委員会(略称CIE)が制定したもっとも科学的な表色法である。あとで述べるマンセル表色系では物体色、それも反射色だけしか取り扱えないが、このCIE表色法では光源の色、反射色の色、フィルターのような透過する色などほとんどすべて色が表色の対象となり、個人の視覚上の特性に左右されることなく、側色から表色、さらに混色にわたって広い範囲で取り扱うことができる。

このCIE表色法の基本的な考え方の特徴は、さきにふれたように光としての色、物質としての色、これに加えて人間の眼の色の特性という、色を取り扱うときに必要不可欠となる三つの要素を総合して色を表示するところにある。

CIE表色法では、すでに述べたように物体の色は照明光源のスペクトル分布によって変化するので、まず標準の光が規定されている。37~39ページに示した標準の光A、B、C、Dなどがそれであり、測色や表色ではそのいずれかを使用する。

次に、物体の正確な色は分光比反射率曲線で示されるが、この分光比反射(または透過)率と、それを照明する光源、たとえば標準の光Aの比エネルギー分布とを各波長光ごとにかけ合わせると、A光源によって照明され、その物体から反射または透過して眼にはいる光のスペクトル分布が得られることになる。

図4-1は、CIE表色法の物体色の測色工程を示したもので、図中Aはその光源の色(タングステン=標準の光A相当)、Bは物体の色(この場合はCCフィルターの50M)、Cはその物体からくる光(透過光)を示したものである。したがって、眼にはCの光がはいることになる。

そして、次に人間の眼の色に対する特性であるが、図中DがそのCIE標準観測者(CIEで選んだ正常な色覚者)にとっての3種の原刺戟=スペクトル刺戟値(X、y、z)である。これは、わかりやすくいえば人間の眼の青紫、緑、赤に対する分光感度であり、図中のyは赤、は緑、は青紫に対する感度と考えればよい。

したがって、さきの人間の眼にはいる光のスペクトル分布(C)に、この三つの曲線をそれぞれかけ合わせると、人間の眼が感じた三つの色刺戟(E)が得られる。これが、その色の三刺戟値(X、Y、Z)と呼ばれるものだが、これはいったい何かといえば、 人間の眼が感じた”三原色量”つまりXは赤い光の量、Yは緑の光の量、Zは青紫の光の量に相当すると考えればわかりやすい。つまり、眼に感じられたBGR光量ということである。

XYZの値は、このように(1)光源の分光比エネルギー分布、(2)物体色の分光反射率(または透過率)、それに(3)眼の感度(スペクトル刺戟値)の三つのかけ合わせで得られるわけだが、(1)と(3)はすでに値がCIEで決められている。したがって、あらかじめ(1)(C光源の場合)と(3)とをかけ合わせておけば、あとはそれに(2)をかけ合わせれば三刺戟値が計算できることになる。表4-2は三刺戟値計算表(光源Cの場合)の一例である。計算しようとする物体の分光反射率または透過率がわかれば、この表の(5)に書き込み、あとは波長順に(2)、(3)、(4)をかけ合わせ、それぞれの列の数値をタシ算すれば(6)でX、(7)列Y、(8)でZの数値が得られる。

表4-3は、この計算表を使ったカラー写真のCCフィルターの20Yフィルターの計算例である。この計算では、20YのXYZはX=0.8244、Y=0.8816、Z=0.7252となる。

この計算表では、30コのカケ算を3回、31コのタシ算を3回やらねばならないので大変面倒だが、フィルターの分光透過率や反射率さえわかれば、われわれにもXYZが計算できるということである。


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