補色
余色、反対色ともいう。ある二つの色をまぜ合わせていくと、白、灰、黒などの無彩色になる一対の色が補色同士であり、一方を他方の補色と呼ぶ。

一般的な物体やフィルターなどでは、物体(およびフィルター)が吸収する光と反射または透過する光は、互いに補色関係にある(図3-8のA)。三原色では、光の三原色と色の三原色が補色関係にあり、BとY、GとM、RとCは補色同士であり、いずれも両者を混合すると無彩色になる。なぜならそれらを光として合成すると、同図Bのように、いずれもBGR光全部がそろって無色になるからであり、色材同士の組み合わせでは均等にBGR光が吸収されて暗い灰色か黒になる関係にあるからである。

また、カラー写真では、カラーネガとカラーポジの色が補色関係にある。したがって、理屈からいえばカラーネガとカラーポジ2枚の像を完全に合致させると、補色同士を合わせることになるから全面が無彩色になることになる。ただ、現在のフィルムはマスキングのために、ベースがオレンジ色をしているので必ずしも完全な補色ではないが、そのオレンジ色を差し引いたときには、ネガとポジはほぼ正しい補色関係にあるということができる。

ところで、カラー写真の色を補正するには、必ずといってよいほど補色を見いだす必要が生じる。たとえば、撮影したカラースライドが全体にある色にかたよったときは、再撮影でそれを補正するには、強く発色している色とは補色のフィルターを用いる必要があるからである。このことは、カラープリントの実際にあたっても同様である。

したがって、カラー写真の技術の分野では、補色は色彩学で用いられるような観念上のものではなく、色補正の実技に直接用いられるので、知識としても必要だが、現実的に補色を見いだす方法というものが必要になってくる。

そのよい方法は、別項で述べたCCフィルターを用いることである。あるいは、CCと同様な性質をもつCP(カラープリント用)フィルターでもよい。各YMCについて05、10、20、40を取りそろえ、これを組み合わせるとさまざまな色がつくれる。フィルターはその状態、つまりフィルターとしては透過色だが、白い紙の上に密着すれば反射色となる。種々の組み合わせができるので色の訓練にもよいが、補色の取り扱いも数値的にできるようになる。

CCフィルターで補色を見いだすには、組み合わせた2種の色が無彩色になる組み合わせ、たとえばY+(M+C=B)、M+(Y+C=G)、C+(Y+M=R)の関係が補色同士であり、一方が他方の補色である。数値で取り扱うならば、YMC全体の数値が等しくなる値から一方を差し引いた残りの組み合わせが、そのフィルターの補色である。

たとえば、20Yの補色は20M+20C=20Bであり、20Y+10Mの補色は10M+20Cである。同様に40M+20Cの補色は20C+40Yと簡単に補色が見いだせる。 おおまかに取り扱うには、以上の方法でよいだろう。しかし、実際に等しい数値のYMCフィルターを組み合わせてみると、必ずしも無彩色にはならず、いくらか赤味を帯びる。これはさきに述べたYMCフィルターの好ましくない吸収作用のせいである。

そのため、カラー撮影、カラープリントいずれの場合でも、たとえば20Yを加えるのは20Mと20Cを差し引くのと等しいと考えるのはあくまで理屈のうえであって、実際にはその色補正効果は違ってくることになる。

その一例を図3-8のCに示してある。図の曲線aはCCフィルターの20Yと20Mと20Cを組み合わせたときの分光透過率曲線であり、このように等しい数値のYMCフィルターの組み合わせでは、一般に長波長側の透過率が若干高く赤っぽくなるわけだが、20Cを30Cにすると点線bのように長波長側が下がり、眼で見てもかなり純正なグレーに近くなる。したがって、以上のように、厳密にいえば、数値的な取り扱いでは完全な補色にはならないが、一般的にはそれほどの厳密さは必要とされないと思う。しかし、等YMCの組み合わせは必ずしも無彩色ではないことを知っておきたい。
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